2月1日は「フレイルの日」 予防策の強化を

運動

記念日を制定して
フレイル予防の重要性をアピール

かつては「もう歳だから」と諦めていたような加齢により体力や気力が低下した状態を、日本老年医学会が「フレイル」と呼ぶことを提唱し、要支援・要介護状態にならないためにはフレイル予防が重要であることを広くアピールしたのは、2014年のことでした。

あれからそろそろ10年――。この間、国をはじめ多くの組織や団体、学会がフレイルという問題を我が事として受け止め、さまざまな取組みを始めています。看護領域においても、一つの大きな意識改革があったように思います。

高齢者に多いフレイルの主因の一つとされる「サルコペニア」と呼ばれる状態は、入院中につくられているケースが多いことが指摘されています。

このサルコペニア予防の観点から、「とりあえず安静・禁食」という医師の指示を看護の視点から見直す動きが出てきたことは先に紹介したとおりです。
⇒ 医原性のサルコペニアは看護で防ぐ

国レベルでのフレイル対策としては、2020年4月から、75歳以上の後期高齢者を対象にフレイルの予防・重症化予防の観点から健康状態や生活習慣、認知機能などをチェックする「フレイル健診」がスタートしています。

これに先立ち、フレイル予防の大切さを、高齢者だけでなくあらゆる世代の人々に認識してもらおうと、2020年から2月1日を「フレイルの日」と制定し、各地でフレイル予防のさまざまな記念イベントが行われています。

健康長寿社会の実現に
フレイル対策の推進を

「フレイルの日」は、スマートウエルネスコミュニティ協議会*が日本老年医学会、日本老年学会、日本サルコペニア・フレイル学会と連携して制定を決定したもの。日本には数多くの記念日があり、特別の由来があるもの以外は、多くが語呂合わせで決められていて、「フレイルの日」も、ふ(2)、れ(0)、い(1)の語呂合わせで決めたそうです。

*スマートウエルネスコミュニティ協議会は、大学などの研究機関や教育機関、民間企業、および政府・自治体など、いわゆる産学官の約100団体が一体となり、健康で長生きできる社会の実現を目指し、国民の自立的な健康づくりを推進する活動を行っている。

要支援・要介護に進む流れに
フレイル対策でブレーキを

ご承知のように「フレイル」とは、「要介護になる手前の虚弱状態」を言います。具体的には、加齢に伴い次のようなかたちで心身が老い、衰えてきた状態を指しています。

  • 足腰を中心に筋力が低下しはじめ歩くのが困難になる(身体的要因)
  • 自宅に閉じこもりがちになる(社会的要因)
  • 精神的にも憂うつになっている(精神的要因)

このような状態が進むと、日常生活の自立が容易ではなく他人の手助けが必要になるという、いわゆる要支援、要介護状態に陥りがちです。しかし、早い段階から適切なかかわりがなされていれば、要支援・要介護状態に進む流れにブレーキをかけることができ、その人なりの自立した生活を続けられることがわかっています。

そこで、高齢者のフレイル状態にできるだけ早期に気づき、直ちに対応して、自立した生活が可能な高齢者を増やしていこうと、これまでもさまざまな取組みが行われてきました。

フレイルに対する関心が高まり、フレイルリスクが高くなる50歳以上のシニア世代の人だけでなく、その子どもや孫の世代にまでフレイル予防の取組みを広めることができれば、健康寿命を延ばすことにつながり、真に健康な長寿社会にしていけるのではないか――。そういった思いが結集されて、「フレイルの日」制定となったようです。

入院前の支援に活用したい
「後期高齢者の質問票」

フレイル状態かどうかをチェックする方法は、これまでもさまざま開発され、自治体レベルでの高齢者を対象とした健診などで活用されてきました。国がスタートさせた75歳以上を対象とする「フレイル健診」では、新たに作成された「後期高齢者の質問票」*¹が導入されています。

この質問票には、現在の心身の健康状態、運動や食習慣、もの忘れの有無、社会参加状態など、以下に示す15項目の質問があげられています。

これらの質問に「はい」「いいえ」など予め用意された回答から選択してもらい、その回答状況から身体的、精神的、社会的側面から健康状態を評価し、筋肉トレーニングやバランスのよい食事、無理のない社会参加といった支援につないでいくことになります。

  1. あなたの現在の健康状態はいかがですか
  2. 毎日の生活に満足していますか
  3. 1日3食きちんと食べていますか
  4. 半年前に比べて固いもの(さきいか、たくあんなど)が食べにくくなりましたか
  5. お茶や汁物などでむせることがありますか
  6. この6か月間で2~3㎏の体重減少がありましたか
  7. 以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思いますか
  8. この1年間に転んだことがありますか
  9. ウォーキングなどの運動を週に1回以上していますか
  10. 周りの人から「いつも同じことを聞く」などの物忘れがあると言われていますか
  11. 今日が何月何日かわからないときがありますか
  12. あなたはたばこを吸いますか
  13. 週に1回以上は外出していますか
  14. ふだんから家族や友人と付き合いがありますか
  15. 体調が悪いときに相談できる人が身近にいますか

厚生労働省はこの質問票を、健診場面だけでなく、地域包括ケアにおける地域サロンなどの通いの場や、かかりつけ医や医療機関受診の際などにも活用できるよう、質問方法のポイントや回答に応じた対応例を示すなど、質問票を用いた支援方法を具体的に例示しています。

看護で言えば、入退院支援の一環として行われている外来での入院前支援における健康状態のアセスメントに活用してみるというのもいいのではないでしょうか。

わずか5つの質問で
フレイルの判定が可能に

フレイルの判定については、大阪大学の研究チームが2022年10月、5つの簡便な質問に答えてもらうだけでフレイルとプレフレイル(フレイルの前段階)が判定できるスケールを開発し、公表したものもあります。

5つの質問とは、年齢と4つの自覚症状(夜間頻尿・腰痛・下肢の冷え・体のだるさ)です。高齢者などにかかる負担を極力減らしたこのスケールの詳細はこちら*²をチェックしてみてください。

参考資料*¹:厚生労働省「後期高齢者の質問票の解説と留意事項

参考資料*²:大阪大学「わずか5つの質問で簡便にフレイルを判定可能に