地域包括ケア病棟で退院支援の力量発揮を!!

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地域包括ケアシステムの要
地域包括ケア病棟

地域包括ケアシステムについては、すでにご承知でしょう。団塊の世代(1947~1949年生まれ)の全員が75歳以上となる2025年には、国民の3人に1人が65歳以上、75歳以上は5人に1人と、人類がこれまで経験したことのない超高齢社会になると推測されています。

このような社会にあって、仮に重度な要介護状態になっても、できる限り多くの人が、人生の幕を下ろすときまで住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるようにと、国主導で整備が進められているのが地域包括ケアシステムです。

このケアシステムは、住まい・医療・介護・生活支援が一体的に提供されることを目的としているのですが、その一翼を担っているのが「地域包括ケア病棟」です。

人によっては「一翼」どころか「主翼」との声もあるほど、地域包括ケア病棟に寄せられる期待は日に日に高まってきているようです。

そこで、この地域包括ケアシステム構想の成功の鍵を握るとまで言われている、地域包括ケア病棟で働く看護師に求められる役割、とりわけ退院支援や退院調整の面での働きについて、ざっくりとまとめてみたいと思います。

2018年度診療報酬改定で
診療実績評価を加え質の向上を

地域包括ケア病棟は2014年度診療報酬改定で創設されましたが、創設はされたものの、その普及は全国的に伸び悩んでいました。そこで、2018年度の診療報酬改定において入院料の再編や統合が行われ、地域包括ケア病棟の評価はかなり上昇しました。

この評価が追い風となったのでしょうか。地域包括ケア病棟算定病院は、その後全国的に右肩上がりに増え続け、2019年11月の時点で2,532病院・88,913床に達しているようです。

ただ、これは当然のことでしょうが、評価が上がったぶんだけ地域包括ケア病棟の入院料および入院管理料の算定基準は厳しくなっています。具体的には、地域包括ケア病棟に課せられた役割に関する要件を診療実績により評価するかたちで、改定前以上に高い点数設定になっているのです。

これにより、入院中に患者に提供されるケアの質に、より一層の向上が期待されているということでしょう。例えば200床未満の病院に設置された地域包括ケア病棟における診療実績要件は、2020年度診療報酬改定により、以下の4点をすべてクリアすると1日当たり2,738点が算定され、改定前の一番高い基準より1日180点の増収になるといった具合です(入院料1の場合)。

  1. 自宅等から入棟した患者の割合が10%以上から15%以上に、
  2. 自宅等からの緊急入院が3カ月で3人以上から6人以上に、
  3. 在宅医療の提供
  4. 看取りに対する指針の策定

届出基準の「在宅復帰率72.5%以上」が課題に

ちなみに上記診療実績以外の、届出に必要な主な要件には以下のようなものがあります。

  1. 看護職員配置基準は13対1以上で7割が看護師
  2. 重症患者割合は、現行の重症度、医療・看護必要度Ⅰが10%以上
  3. 病棟または病室を有する病棟に常勤の理学療法士又は作業療法士を1名以上配置
  4. 在宅復帰率72.5%以上

このうち「4」の在宅復帰率については、2014年度の当病棟創設時は70%でしたが、2022年度の診療報酬改定により72.5%に厳格化されています。

この72.5%という要件はなかなか厳しく、この要件がネックとなり、届出基準を満たせない施設が多いことが課題となっているようです。

入院早期から充実した退院支援を行い
在宅への復帰を円滑に

地域包括ケア病棟は、医療や介護が必要な状態になっても住み慣れた地域で生活することを望む患者への支援を目的とし、主に以下の3つの役割を兼ね備える病棟です。

  1. 急性期治療を経過した患者の受け入れ
  2. 在宅等で療養している患者の緊急時の受け入れ(いわゆる「レスパイト入院」*)
  3. 在宅への復帰支援

地域包括ケア病棟の入院期間は、病棟または病室に入院した日から起算して60日を限度とすると決められています。

この間に円滑な退院にもっていけるように、急性期治療を終えた後に一般病棟からリハビリテーションなどを目的に転棟してくる患者や、在宅療養中に在宅では対処できないトラブルが発生し、その治療のために一時的に入院してくる患者に対しても、転棟・入院後の早い時期からの充実した退院支援が不可欠となります。

もちろん退院支援だけやっていればいいというわけではありません。リハビリテーションなども併行して行うことが求められますから、理学療法士などのリハビリテーション専門職との密な連携が必要となるでしょう。

同時に、退院して在宅に復帰した後の患者が自分らしい生活を維持していくうえで必要とされる支援についても、訪問診療や訪問看護などの担当者との連携をより一層強化する必要があります。そのため、ときに在宅部門を整備し直す取り組みなどが必要になることもあるようです。

いずれにしても、地域包括ケアシステムの要となる地域包括ケア病棟が円滑に稼働していくためには、退院支援を担当する看護師の力量が大きく問われることになりそうです。

なお、*「レスパイト入院」についてはこちらの記事を参考にしてください。

在宅で家族の介護を続けている介護者に一時休息してもらおうと、介護保険はショートステイというサービスを設けている。ただし医療的管理が必要な患者はショートステイの対象外となる。そんなときに医療保険で利用できる「レスパイト入院」について書いてみた。