AYA世代がん患者のサバイバーシップ支援

学生

AYA世代のがん罹患実態が
初めて明らかに

国立がん研究センターは2018年5月30日、小児と成人のはざまにある若い世代、いわゆる「AYA(アヤ)世代」のがん罹患率と種類別罹患率を初めて公表しました。

ちなみに「AYA世代」が、思春期(Adolescent)と若年成人期(Young Adult)を指すことはご承知のことと思います。

年齢で言えば、一般的に、小児期(0歳から14歳)を除く40歳未満、つまり15歳から39歳がAYA世代に該当します。

統計によれば、1年間にがんと診断されるAYA世代は、推計で約21,400人(15歳から19歳で約900人、20歳代で約4,200人、30歳代で約16,300人)となっています。

AYA世代のがんは
希少がんが多いのが特徴

これをがんの種類で多い順に見ると、以下のようになっています。

  • 15~19歳では白血病、胚細胞腫瘍・性腺腫瘍、リンパ腫、脳腫瘍
  • 20歳代では胚細胞腫瘍・性腺腫瘍、甲状腺がん、白血病、リンパ腫
  • 30歳代では女性乳がん、子宮頸がん、胚細胞腫瘍・性腺腫瘍、甲状腺がん

一見して、発生頻度の少ない、いわゆる「希少(きしょう)がん」が目立ちます。

また、多くの診療科にまたがる多種多様ながん腫であることも、AYA世代のがんの特徴としてみてとることができます。

希少がんということは、医療機関としても医療者としても経験数が少なく、診断や治療上、またケアに関しても、何かと課題が多いのではないかと推察されます。

実は、この「AYA世代のがん」を改めて意識したのは、がん領域の認定看護師さんとお茶をご一緒しながら、近況報告をし合うなかで話題にのぼったことがきっかけでした。

その時彼女が口にしたこんな言葉が、私にはとても印象深く残っています。

「子どもでもないし大人でもない年代のがん患者さんのケアは一筋縄ではいかないのよね。がんの種類が患者さんによってさまざまなうえに、進学や就職、その先の結婚にまで影響するような話が絡んでくるわけだから……」

AYA世代がん患者ケアの難しさ

彼女が指摘するように、AYA世代のがん患者はサバイバーシップに関連したさまざまなニーズを数多く抱えています。

しかもそのニーズは、患者一人ひとりが罹患しているがんの種類やライフステージ、自立の度合い、家族環境などにより大きく異なっていて、個別性が高いのが特徴で、この点に、AYA世代のがん患者をケアするうえでの難しさがあるようです。

なお、ここで言う「サバイバーシップ」については、わが国ではまだ定説がないのが現状ですが、一般的には、「がんを経験している人が直面する課題を乗り越えて、がんと上手に共存しながら生活していくこと」と理解されているように思います。

この「サバイバーシップ」については、がん看護専門看護師の近藤まゆみさんの著書『臨床・がんサバイバーシップ―“生きぬく力”を高めるかかわり 』が参考になります。

AYA世代がん患者
サポートに待望のガイドライン

実際のところ、AYA世代のがん患者については、全国に一定の割合で存在はしているものの、他の世代に比べて患者数が少なく、そのため治療実態の把握が遅れがちで、患者サポートも不十分であることが、かねてから問題視されていました。

こうした事態を国も深刻に受け止めていて、「第3期がん対策推進基本計画」において、AYA世代のがん患者が抱える多様なニーズに応じた情報提供や相談支援・就労支援体制の充実が求められることを、初めて明記していたところです。

そんななか7月には、AYA世代がん患者の治療や支援にあたる医療従事者を対象に、がんと世代の特徴を踏まえた望ましい対応方法をまとめたガイドライン、『医療従事者が知っておきたい AYA世代がんサポートガイド』(金原出版)が刊行されています。

がん治療が重要なライフイベントと
重なることを配慮した支援を

ガイドラインを執筆したのは、平成27~29年度にAYA世代の総合的ながん治療や支援のあり方について研究を行った厚生労働省研究班のメンバーやがんサバイバー(がん経験者)です。

この研究班には、日頃がん看護に取り組んでおられる看護師さんにはおなじみの、国立がん研究センターがんサバイバーシップ支援部長の高橋都医師、あるいは慢性疾患を持つ子どもの成人への移行の問題,とりわけAYA世代のがん患者・サバイバーに注目して研究を続けておられる丸光惠・甲南女子大学大学院教授なども参加しておられます。

ガイドラインの内容は、研究成果を大きく反映したものになっています。

身体的にも精神的にも、また社会人としても成長段階にある世代ならではのニーズがあることを踏まえ、がん治療が就学、就労、恋愛、結婚など、重要なライフイベントに及ぼす影響がわかりやすく解説されています。

そのうえで、がんの発病や治療に伴いさまざまなライフプランの変更を余儀なくされることによって起きてくるであろう心理・社会的課題に対する支援のあり方が、わかりやすく紹介されています。

この世代のがん患者の多くには、治療が生殖機能、つまり妊娠する力を意味する「妊孕性(にんようせい)」に及ぼす影響について、また自分のがんの遺伝性について知りたいという、この世代だからこその情報ニーズがあるのも特徴の一つでしょう。

これらニーズへの対応について紹介されている部分には、他の関連書では得難い貴重な情報が多く、AYA世代のがん患者を支える看護師さんの日々の看護に大いに役立つはずです。

がん治療の進歩により若年世代がん患者の長期生存が期待できるようになったが、治療に伴う妊孕性に障害が及ぶリスクは避けられない。「がん治療も将来子どもも」との彼らの切なる願いをかなえようと、妊孕性温存の治療費を助成する制度が全国で始まっている話を。

AYAがん領域における
医療と支援向上のための研究会発足

ところで、先の研究班は、研究事業の成果を踏まえ、政府に対して以下のような「AYA世代のがん対策に関する政策提言」を行っています。

●AYAのニーズを医療従事者が十分認識することが支援への第一歩であり、そのための医療者教育が重要である
●AYAのニーズは、既存の制度・リソースの活用により支援できるものが少なくない。医療機関における相談窓口を明確にするとともに、既存の制度に関する周知徹底が必要である
●AYAの支援には専門的対応が求められる。各種ニーズに対応可能な「AYA支援チーム」や「AYA病棟」等の環境を有する「AYA診療拠点」を指定し、AYAの診療・支援の充実を図るとともに、「AYA診療拠点」を中心に、地域における医療者教育・人材育成、治療およびケア、長期フォローアップの連携体制を整備する
●「AYA診療拠点」の整備にあたり、単一施設で全ニーズに対応することは困難と予想されることを考慮し、医療機関・専門領域の壁を超えた弾力的な医療連携を通じて、既存のリソースを有効に活用していくことが期待される

引用元:「AYA世代のがん対策に関する政策提言」

これらの課題にある支援人材の育成などを率先して行い、AYAがん領域における医療と支援のいっそうの向上を図ろうと、研究班メンバーを中心に、一般社団法人「AYAがんの医療と支援のあり方研究会(略称:AYA研)」が2018年4月に発足。シンポジウムや研修会などを随時開催しています。

AYA世代のがん看護に関心のある方は参加してみてはいかがでしょうか。詳細は研究会のWebページ(コチラ)でご覧になれます。

AYA研は、「AYAweek2022」のイベントを3月5~13日の9日間、オンラインを中心に全国各地で開催する。サブテーマとして「つながる」「楽しむ」「学ぶ」を設定し、学会や患者団体、大学、製薬会社などがセミナーや交流会などのイベントを繰り広げる予定。詳しくはAYA研公式ホームページへ。

なお、がん患者に限らず、AYA世代の子どもたちの性の悩みや不安に正しい情報を提供することで答えようと「#つながるBOOK」が性教育を行っている専門家らにより作成され、ネット上で公開されています。詳しくはこちらを。

コロナ禍による休校は高校生の性にさまざまな悩みや不安をもたらしている。その実態調査を行った研究グループが、性に関して正しい知識を持つことで不要な心配や悩みから解放してあげたいと、高校生の性教育ハンドブック「#つながるBOOK」を作成した。その紹介を。