ACPの愛称決まる 名付け親は現役看護師




意思決定

アドバンス・ケア・プランニング
看護師の認知度は19.2%

1人でも多くの人が、その人らしいかたちで納得して最期を迎えるためには、「アドバンス・ケア・プランニング」(ACP)が大きな意味をもつと考えられています。
看護としてのアドバンス・ケア・プランニング

ただ、このACP、つまり人生の最終段階である終末期における医療・ケアについて、本人が意思表示できない場合を想定し、本人が家族や医療・介護関係者と前もって話し合っておくプロセスについては、看護師さんの間でも残念ながら認知度はまだそれほど高くありません。

実際、厚生労働省が2018(平成30)年3月に公表した「人生の最終段階における医療に関する意識調査」の結果を見てみると、回答した看護師1620人のうち、ACPについて「よく知っている」と答えた看護師は19.2%にとどまっています。

一方、「知らない」と回答した看護師の割合42.5%と、「聞いたことはあるがよく知らない」と答えた36.6%を合計すると、ほぼ8割(79.1%)にものぼります。

この調査に回答した医師や介護職員、さらには一般国民でもほぼ同様の結果が出ており、認知度を上げる取り組みの必要性を示す結果となっています。

なお、ACPに関する参考書としては、西川満則著『本人の意思を尊重する意思決定支援: 事例で学ぶアドバンス・ケア・プランニング』(南山堂)があります。

ACPの愛称は「人生会議」、
11月30日を「人生会議の日」に

ACPが、期待している割には医療・介護関係者はもちろん一般国民にもあまり普及していない現状に厚生労働省は、よりなじみやすい名称にして認知度を高めようと、広く一般からACPの「愛称」を募集してきました。
そして、集まった1073件の中から選ばれたのが、「人生会議」です。

この愛称「人生会議」は、2018年11月30日に公表されています。
その際、厚生労働省は愛称に併せて、「いいみとり」「いいみとられ」の語呂にちなみ、毎年11月30日を「人生会議の日」と定めることも発表しています。

愛称に選ばれた「人生会議」案を応募したのは、聖隷浜松病院の集中治療室に勤務する現役看護師の須藤麻友さんです。
須藤看護師は「人生会議」という愛称に込めた思いをこんなふうに語っています。

私がこの愛称を応募するきっかけになったのは、医療従事者として大切なのは「患者さんが満足のいく治療や最期を迎えられたかどうか」だと日頃から思っていたからです。
私が勤めている集中治療室には、重症心疾患の他に、不慮の事故などで急に重篤な状態に陥り、終末期を迎えることとなる患者さんや意識がなくなってしまった患者さんがいらっしゃいます。患者さんやその家族は動揺し、現状をしっかり受け入れられない状況下で治療方針の決断を迫られたり、患者さん自身はすでに意思表示が出来ず、家族だけで方針を決定することもあります。
そんな現場のスタッフは、日頃から「本当に患者さん自身はこれでよかったのだろうか」とジレンマを抱えることがあると思います。そこで感じるのは、患者さんともっと終末期についての希望を話しておけたらこんな気持ちにはならなかったのではないか、ということです。
アドバスケアプランニングはその問題を解決してくれると感じています。

引用元:聖隷浜松病院 病院ブログ

最期の日々を「自分らしく」
そのためにACPの取り組みを

おそらくは、すべてとまでは言わないまでも相当多くの看護師さんが、須藤看護師と同じ気持ちで日々患者に向き合っているのではないかと拝察しますが、いかがでしょうか。

実際、先の意識調査では、ACPの概念を改めて説明したうえで、死期が迫ったときに受ける医療・ケアについて事前に話し合っておくことへの賛否を尋ねる質問に、看護師の76.5%が「賛成」と回答しています(「わからない」と回答したのは21.0%、「反対」は0.6%)。

また、患者本人の意向を尊重した人生の最終段階について考える際に重要と思われることを複数回答で聞いたところ、看護師で最も多かったのは「自分らしくいられること」(76.7%)で、僅差で「家族等の負担にならないこと」(76.6%)が挙がっていました。

この他にも「身体やこころの苦痛なく過ごせること」(76.2%)や「家族等との十分な時間を過ごせること」(63.5%)、「人間としての尊厳を保てること」(58.8%)、「経済的な負担が少ないこと」(58.1%)などが半数以上の回答を集めています。

ACPのきっかけとなる出来事は
「家族等の病気や死」がトップ

本調査では、どのような出来事が、家族や医療・介護関係者と医療・ケアについて話し合うきっかけとなると考えるか、という問いかけもしています。

これに最も多かった回答は「ご家族等の病気や死」で、一般国民では61.2%、看護師75.3%、次いで「自分の病気」が多く、一般国民では52.8%、看護師58.3%でした。

心身ともに元気で生活できているときは、自分の死について考えたり、家族などと話し合ったりすることは、「縁起でもない」と避けがちで、ズルズルと先延ばしになることが多いように思います。

ところが自分や家族の体調が思わしくなかったり、実際に慢性疾患やがんの診断を受ける、あるいは入院するといった事態に直面すると、もしものときのことがふと頭をよぎるということもしばしば起こりうるのではないでしょうか。

そんなときに、おそらくそばにいるであろう看護師さんのちょっとした働きかけにより、事前指示書を作成するとかACPの話し合いがもてるようになれば、自らが望む最期を迎えられる人がもっと増えてくるのではないでしょうか。

その場合の、意思決定支援の参考資料としては、日本医師会や日本緩和医療学会などがガイドラインを作成しています。先の調査では、厚生労働省が作成した『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』の利用者が最も多くなっています。
このガイドラインや患者向け手引きについては、回を改めて書く予定です。

なお、アドバンス・ケア・プランニングを広く普及させたいとの思いから、一般向けに、さまざまな角度から詳しく紹介するブログを書いています。
アクセスしていただき患者支援の際に活用していただけたら嬉しいです。
元気なうちから「いのちの終活」