公務員看護師は一般の看護師と何が違うのか

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給与面で魅かれがちな
公務員看護師だが

2020年2月初旬から始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応により、コロナの患者を受け入れてきた医療機関を中心に、大幅な収入減などのため深刻な経営難に陥っていることを嘆く声が方々から聞こえてきます。

国としても、診療報酬を大幅にアップするなど財政面からさまざまな支援策を打ち出してはきたものの、なかなかコロナ以前のレベルまでには回復できていないようで、その影響はさまざまな形で、医療機関で働く多くのスタッフたちに及んでいます。

ボーナスカットに始まり、「ボーナスが出ない」ことを嘆き、看護師等多くの医療スタッフが退職を願い出ている大学病院の話が、テレビのワイドショーなどでもセンセーショナルに報じられたリしてもしました。

そんな状況のなか、看護師さんの間で、「公務員看護師だったら、給料やボーナスをカットされる心配はないよね」といった話が、ひそかに交わされているとの情報が入りました。

「公務員看護師」とは、これまであまり聞くことがなかった言葉です。ちょっと興味がわき、では具体的にどこが職場になるのか、公務員には転勤があるとよく聞くが、看護職の場合はどうなのか、等々――。

公務員看護師ではない、民間の医療機関等で働いている看護師さんとの違いを調べてみましたので、転職をすすめるわけではありませんが、概要をお伝えしたいと思います。

公務員看護師には
国家と地方の公務員がいる

「公務員看護師」とはその名のとおり、公的機関で働く看護師のことを言います。

公的機関のうち、官公庁等の国が運営する機関や組織等で働く看護師は「国家公務員」です。これに対し、同じ公的機関でも保健所や保健センター、都道府県立病院等の、都道府県や市区町村等の自治体が運営する機関・組織で働く看護師は「地方公務員」となります。

なお、「公務員」ではないものの、公務員同様に公共、つまり社会全体の利益のために働いていることから、公務員とほぼ同等に扱われる「準公務員」と呼ばれる立場の人もいます。

看護師で言えば、独立行政法人や国公立の大学病院、国立病院機構の病院、国立がん研究センターのような高度専門医療研究センターで働く看護師は、準公務員扱いとなります。加えて、郵政公社(郵便局等)系列の逓信病院のように、もともと国の運営だったものから民営に移行した組織で働く看護師も、準公務員となります。

国家公務員の看護師と地方公務員、準公務員の看護師は、基本的な看護の仕事内容に変わりはありませんが、所属する機関・組織により多少変わってくることもあります。

国家公務員看護師には
転勤の可能性がある

看護師に限ったことではありませんが、同じ公務員と言えども、国家公務員と地方公務員とでは2つ大きな違いがあります。「転勤の有無」と「給与額の差」です。

このうち転勤の可能性があるのは、全国を管轄している国家公務員です。地方公務員の場合は、所属する地方の行政機関が勤務範囲となりますから、転勤は原則としてないと考えていいようです。

なお、転勤について言えば、国家公務員ではなく民間の医療機関に勤務している看護師でも、全国展開の系列病院があるような医療機関や組織では、遠隔地への転勤辞令が出される可能性があることは承知しておくべきでしょう。

公務員看護師の給与は高いが
失業保険を受け取れない

気になるのはやはり給与でしょうか。民間の病院に働く看護師よりも公務員看護師の給与水準は高いと言われていますが、国家公務員も地方公務員も、各団体で運用される「俸給表」に基づいて定められます。

この俸給表には、役職を表す「級」と、勤続年数や功績を反映させた「号」があり、基本的に毎年4号ずつ昇給していく仕組みになっているようです。一般的に国家公務員の方が昇給率が高く、簡単に言えば「高給」のようです。

ただし、看護師に限らず公務員には、途中で辞職する可能性が考慮されていないため雇用保険に加入することができません。そのため、自分の都合で公務員を辞することになっても「失業保険」を受けることも、また再就職する際の「再就職手当」なども受けることはできません。

したがって、ずっと公務員看護師を続ける自信があれば高給は魅力でしょう。ただし、万が一公務員を辞めた後の一定期間休暇などをとるとしたら、その間雇用保険が使えないのはかなりのダメージではないでしょうか。

このダメージ対策としてある公務員看護師の方が、民間の「就業不能保険」に加入していると、こっそり打ち明けてくれたことがあります。

新型コロナウイルスの脅威は、「感染して働けなくなり収入が途絶える」不安を抱かせる。2人の子どものシングルマザーである友人から、「就業不能保険に加入すべきか否か」の相談を受け、「働けなくなったとき」の公的保障制度と「就業不能保険」について調べてみた。

公務員看護師には
公務員試験は免除される

国家公務員にしても地方公務員にしても、公務員看護師になるには、まずは看護師の国家試験に合格して、看護師の資格を取得する必要があります。そのうえで、他の職種には「公務員試験を受験して合格する」というなかなか厄介な段階をクリアすることが求められます。

ところが、幸いと言いましょうか、公務員看護師の場合は、この段階、つまり公務員試験は免除され、看護師の有資格者であれば、国や地方の医療機関等の求人に応募できます。選考試験を経て採用されれば、国家公務員の看護師、あるいは地方公務員の看護師としてキャリアをスタートすることができるのです。

公務員看護師の求人募集は、自分が希望する職場の求人情報をインターネットで検索してみるのが一番手っ取り早く、確実です。また紹介料なども発生しませんから安上がりです。求人に応募する際には、募集要項の確認をしてみてください。

看護師としての実務経験の有無や経験年数を定めるところが多いようですから、自分が希望する公的機関の受験資格を満たしているかどうか、きちんと確認することをお忘れなく。

厚生労働省看護系技官の
応募資格と職務内容

公務員看護師の求人募集は、実際どのような形で出されるのでしょうか。一例として、厚生労働省の「看護系技官の採用情報」を厚生労働省のWebサイトでチェックしたところ、2024(令和6)年4月1日採用の募集は、2023(令和5)年11月20日が応募締め切りとなっています。

しかしそこには、参考情報として、以下のような応募資格、職務内容などが列記してあります。参考までに一部紹介しておきましょう。

■応募資格
次の⑴から⑸までの全てに該当する者

  1. 日本国籍を有する者
  2. 看護師免許を取得している者であり、かつ保健師免許又は助産師免許を取得又は取得見込みの者
  3. 看護系大学を卒業している者又は看護系大学院修了(見込みを含む)者
  4. 看護に関する業務(修士課程の期間を含む)経験を採用時点で7年以上有する者
  5. 看護行政の業務に理解を示し、意欲のある者

■職務内容
厚生労働省本省の看護系技官として「保健師助産師看護師法」「地域保健法」「介護保険法」「母子保健法」「社会福祉士及び介護福祉士法」などの法律に基づいて、看護行政等の業務に従事します。
なお、採用後の人事においては、本省の他、地方厚生局等に配属となることもあります。

参考資料*¹:厚生労働省 看護系技官採用情報