糖尿病療養指導士の講習会はeラーニングで

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糖尿病治療における
生活指導のエキスパート

日本人の6人に1人は糖尿病が強く疑われる「糖尿病有病者」もしくは糖尿病の可能性を否定できない、いわゆる「糖尿病予備群」で、日々の食事や運動面においてセルフコントロール(自己管理)が必要な状態にあると言われています。

具体的な数で言えば、厚生労働省が毎年実施している「国民健康・栄養調査」の2016年報告書では、いずれも推定で約1,000万人とされ、トータルすると2,000万人になります。

このような方たちに糖尿病治療としての生活指導を行い、セルフコントロールをサポートする役割を担っているのが、「糖尿病療養指導士(CDEJ)」と呼ばれるエキスパートです。

日本糖尿病療養指導士と地域糖尿病療養指導士

この糖尿病療養指導士の資格には、2つの認定制度があります。1つは「日本糖尿病療養指導士」、もう1つは「地域糖尿病療養指導士」です。

前者については、全国的に認定者のレベルが一定に保持されている点が評価されています。
その点後者は、地域によって認定者のレベルはさまざまです。しかし、地域糖尿病療養指導士には、地域事情を反映した指導が行える点が、高く評価されているようです。

このところは新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、毎年実施されている認定試験関連の講習会等のスケジュールや開催方法に多少の変更がみられます。そういった点も含め、今回は糖尿病療養指導士について書いてみたいと思います。

日本糖尿病療養指導士認定には
糖尿病療養指導自験10例が必要

日本糖尿病療養指導士(Certified Diabetes Educators in Japan;略称「CDEJ」)」の資格認定は、 日本糖尿病療養指導士認定機構が行っています。この認定機構は、日本糖尿病学会、日本糖尿病教育・看護学会、日本病態栄養学会の3学会が母体となり2000年に設立されていて、今年は設立から、ちょうど20年に当ります。

この間、全国で約2万人の日本糖尿病療養指導士*が誕生し、糖尿病医療のあらゆる場面で、また糖尿病診療科以外の領域においても、糖尿病患者の療養生活面での指導を中心に素晴らしいリーダーシップを発揮しています。

*2022年8月現在、日本糖尿病療養指導士の数は18,591名で、その45%(8,252名)が看護師・准看護師、次いで管理栄養士・栄養士(28%)、薬剤師(15%)、理学療法士(9%)等、となっている。

認定試験の受験に必要な4要件

日本糖尿病療養指導士の資格を取得するには、年1回(3月上旬)行われる認定試験を受験し、合格しなければなりません。

マークシート方式の筆記試験と受験申請時に提出する糖尿病療養指導自験例の記録10例の評価によって合否を判定するこの認定試験を受験するには、下記の4要件をすべて満たす必要があります*¹。

  1. 看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士のいずれかの資格を有する
  2. 定められた医療施設*において、過去10年以内に継続して2年以上(通算1,000時間以上)の糖尿病患者の療養指導を行っていること
    *「定められた医療施設」とは、糖尿病患者の外来診療および教育・食事指導が行われ、「日本糖尿病学会専門医もしくは常勤の同学会員医師が、糖尿病療養指導にあたり受験者を指導している」施設を指す。
  3. 「2」の期間中に、自分が携わった糖尿病療養指導の自験例が10例以上あること
  4. 日本糖尿病療養指導士認定機構が毎年6~7月中旬頃(2020年度は10月1日~11月25日)に開催する受験者用講習会*を受講し、受講修了証を取得している
    *受験者用講習会の受講申し込み要領は、毎年5月頃に日本糖尿病療養指導士認定機構のWebサイトにて公表される。講習会は2018年からeラーニングで行われている。受験料は33,000円

各地域運営の認定機構による
地域糖尿病療養指導士・支援士

一方の地域糖尿病療養指導士(Local Certified Diabetes Educators ;略称「LCDE」)は、各地域で設立・運営されている糖尿病療養指導士認定機構が認定しています。

その1つ、東京糖尿病療養指導士認定機構は2017年3月から、東京地域に特化した新しい資格として「東京糖尿病療養指導士(東京CDE)」と「東京糖尿病療養支援士(東京CDS;Certified Diabetes Supporter)」の認定を始めています*²。

東京糖尿病療養指導士は、主として医療現場において糖尿病患者の指導に当たります。一方の東京糖尿病療養支援士は、主に保健や福祉、介護の現場で、糖尿病予備軍や一般人を対象に、糖尿病に関する知識の啓発や予防活動を担当します。

地域認定機関による認定試験受験資格

東京糖尿病療養指導士認定試験の受験資格としては、以下の3点があげられています。

  1. 受験時に東京都に勤務(あるいは居住)していること
    この条件に該当しない人で、以下の場合は相談可。
    ⑴ 勤務・居住地域に糖尿病療養指導士、糖尿病療養支援士認定制度がない
    ⑵ 地域の資格条件が合わない
    ⑶ 東京都内に転勤予定、あるいは勤務先が頻回に変わる
    ⑷ 住居が東京都に近接し、東京都内が活動拠点になっている
  2. 受験時に下記に該当する資格を有している
    看護師、保健師、助産師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、診療放射線技師、准看護師、健康運動指導士、他
  3. 受験者用講習会を受講していること

東京都糖尿病療養支援士認定試験の受験資格要件は、上記の「1」と「3」は同じです。
要件が異なるのは、「2」の資格要件で、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)、歯科衛生士、栄養士、臨床心理士、臨床工学技士、登録販売者*、養護教諭、自治体職員(保健・健康増進担当)、医療事務、医薬情報担当者(MR)他と、幅広くなっています。

*登録販売者とは、2009年の改正薬事法により新設された公的資格。薬局などで医薬品(第二類医薬品と第三類医薬品のみ)を販売できる専門職。

認定試験受験用講習会は
eラーニングで

「3」の受験者用講習会は、今年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響を考慮し、3密を避けるために、日本糖尿病療養指導士の講習会同様eラーニングのみで行われます。

eラーニングとは、インターネットを利用して行う学習のことです。
日本糖尿病療養指導士認定機構のeラーニング講習会では、パソコンを使い、あらかじめ収録された講義を各自が好きな時間に、好きな場所で受講(視聴)できるようになっています。

すべての講義を視聴し終えると表示されるアンケートに、受講期間終了までに回答することで認定試験受験資格の1つである「受講修了」が認められます。

その際、パソコン画面での視聴が前提となっており、モバイル(タブレット端末やスマートフォン)は推奨環境外の扱いとなるため受講できませんから注意が必要です。

自分のパソコン環境で視聴可能かどうかのチェックや操作方法などの確認は、eラーニング講習会の申し込みをする際に、認定機構のWebサイトにある「受験者用eラーニング型講習会 デモ画面にログイン」のバナーをクリックして確認しておくことをお忘れなく。

なお、地域糖尿病療養指導士・支援士の受験用講習会も、ほぼ同様です。詳細は、各認定機構のWebサイトをチェックしてみてください

参考資料*¹:日本糖尿病療養指導士認定機構

参考資料*²:東京糖尿病療養指導士認定機構