子宮頸がん検診は30歳から
HPV検査単独法の導入を推奨
国立がん研究センターは7月29日(2020年)、子宮頸がん検診のガイドライン(正式名称「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン」)*¹を改定し、更新版としてプレスリリースしました。
これまでの2009年版公開後に発表された新たな研究成果等を科学的に検証した結果を踏まえ、わが国で推奨する子宮頸がん検診ガイドラインとして提言をまとめたもので、更新版ガイドラインが新たに推奨しているのは、以下の3点です。
⑴ 検診対象年齢を30~60歳とする
⑵ 検診間隔を5年に1回とする
⑶ 検体採取法として、従来推奨している細胞診に加え、原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を調べる検査を単独に行う方法を新たに推奨する
このうち「3」のHPV検査単独法の導入に際しては、検査で陽性となった人を追跡してその効果を把握できる仕組みを構築する必要があると指摘しています。
子宮頸がんの前がん状態は20代後半から
がんについては、若い頃にはなりにくいと考え、とかく検診を疎かにしがちです。確かにがんの多くはシニア世代に発病しやすいのですが、そうではないがんもあります。
子宮頸がんはその1つ。30歳代後半から40歳代でかかる可能性が最も高いものの、その前がん状態は20歳代後半から30歳代前半の間に始まると考えられています。しかも、年々若年化が進んでいると指摘されています。
他人事と思わずに、自分がなるかもしれないという可能性を考えて子宮頸がん検診に臨む際の参考にしていただけるよう、更新ガイドラインのポイントをまとめてみました。
子宮頸部の分泌物をぬぐい取り
HPV感染の有無を調べる
子宮頸がんが発生する原因は、性交渉によるヒトパピローマと呼ばれるウイルス、いわゆる「HPV」感染と考えられています。
HPVはごくありふれたウイルスで、多くの女性が生涯に1度は感染すると言われています。ただ、感染しても90%以上の人が、一過性の感染ですみ、自然免疫により、通常は感染から2年以内に治癒していることが多いと報告されています。
しかし、ごく一部の人では感染が続き(持続感染)、数年から数十年をかけて前がん病変と呼ばれる異常が起き、さらにその一部の細胞ががん化することがあります。これが子宮頸がんです。
細胞診単独なら2年に1回、HPV単独なら5年に1回
更新ガイドラインが単独検査法として新たに推奨するHPV検査は、子宮頸部(子宮の入り口部分)の分泌物を、先端にブラシの付いた専用の器具でぬぐい取り(医師が行う)、ウイルスが検出されるかどうかを調べます。
従来から推奨されている細胞を採取して顕微鏡で異常を見つける「細胞診」検査と比べても、がんの予防効果はさほど変わらないうえに、検査間隔を、細胞診単独検査法の2年に1回から5年に1回へと延長できるとしています。
ただしガイドラインは、HPV検査単独法では、切除を要する異常やがんに進まない「偽陽性」が、従来の細胞診単独法より大幅に増えることを指摘しています。
そのため、「陽性者」と「偽陽性者」について、治療を要する状態に至るかどうかを長期間にわたり追跡する仕組みを、国内で統一して構築する必要があり、適切に追跡できなければ従来の検査法の効果を下回るおそれがあるとしています。
市区町村が実施する
がん検診の公費負担制度
子宮頸がんなどのがん検診について、厚生労働省では、検診の効果について評価を行い、科学的根拠に基づいて効果があると判断される検診が市区町村の事業として行われるよう
「がん予防重点健康教育及び検診実施のための指針」を提示しています。
この指針では、健康増進法に基づき市区町村が主体となって実施すべきがん検診として5つあげているのですが、その1つに「子宮頸がん検診」があります。
この場合のがん検診は、ほとんどの市区町村が費用の多くを公費で負担し、個人は一部の自己負担で検診を受けることができるようになっています。
自己負担額は、居住する市区町村によって異なります。具体的な金額がどのくらいになるのかは、各自治体のWebサイト*²や広報誌に記載があるはずですから、チェックしてみてください。あるいは、各自治体のがん検診担当窓口*²に電話で問い合わせてみてください。
職場や健康保険組合が実施するがん検診も
また、勤務先や加入している健康保険組合等でも、子宮頸がん検診を含むがん検診を毎年実施するところが多くなっています。
この場合も、費用の一部を企業や健康保険組合が負担するシステムをとっているケースが多いようですから、ご自分の所属先について確認してみるといいでしょう。
HPVワクチンを接種して
子宮頸がんを予防する
子宮頸がんには、原因ウイルスであるHPVの感染を防ぐワクチン、「HPVワクチン」があります。わが国では2010年から、HPVの感染機会となる性交渉を経験する前の段階、つまりHPVに感染していないと想定される12~16歳(小学6年~高校1年相当)の女子を主な対象に、半年に計3回の定期接種を受けられるようになっています。
このワクチン接種は、国や市区町村の公費助成(無料)により受けられますから、この年代の多くの女性が接種を受けています。
一方で、HPVワクチン接種後に関節や筋肉の痛み、ワクチン接種部位のかゆみや出血、疲労感、頭痛といった体調不良を訴える報告が相次いだことから、当初70%あった接種率が一時一桁代まで落ち込むといった事態が発生しました。
こうした事態に厚生労働省が、HPVワクチン接種に正しい理解を求めようとリーフレットを作成してWebサイトで公開*³したこと等が功を奏し、接種率は持ち直しつつあるようです。
推奨年齢を過ぎていてもHPVワクチン接種を
なお、未婚、既婚に関係なく、これまでHIVワクチンを接種したことはないが、すでに性交渉の経験があるという方のなかに、子宮頸がん予防のためにHPVワクチンを接種したいという方もいるのではないでしょうか。
このような場合は、「キャッチアップ接種」、つまり遅れを取り戻す「追いかけ接種」のかたちで、仮に一度HPVに感染していても、2度目の感染を防ぐためのワクチン接種が、15~45歳の女性を対象に実施されています。
この、HIVワクチンのキャッチアップ接種を検討している方は、産婦人科や小児科外来、場合によっては内科外来などでも相談してみてください。
参考資料*¹:「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン」更新版公開
参考資料*²:各自治体Webサイト&がん検診担当窓口電話番号