退院支援に役立てたい障害者総合支援法-1

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退院支援や退院調整で
知らないと困る「障害者総合支援法」

担当看護師として退院支援や退院調整を進めていく、あるいは病棟で退院後の生活について患者指導を行っていくうえで知っておきたい社会保障関連の法律や制度は数多くあります。入院中の患者が公的な制度やサービスを上手に利用して、退院後もその人らしい生活を続けていくことができるように支援するには、いずれもフルに活用したい情報です。

数あるなかでとりわけニーズが高いのは、介護保険法に基づく介護保険制度でしょうか。同時に、退院支援や退院調整を担当している看護師さんが、「退院時カンファレンスや介護サービス事業所などとの連携をスムーズかつ効果的に行ううえでやっぱりこれも知っておかないと……」と、よく話してくれるのが「障害者総合支援法」です。

サービス利用の仕組みが利用者主体に

わが国の障害者福祉サービスを利用する仕組みは、これまで続いていた「措置制度(行政側がサービスの必要性、サービスの内容などを判断する)」から利用する側を主体とした「支援費制度」へと、2005年に切り替わっています。

このとき制定されたのが「障害者自立支援法」ですが、この法律を大幅に改定し、2013年4月に新たに制定されたのが「障害者総合支援法」です。その後、段階的に法改正が行われてきたこともあり、「確か学生時代にも学んでいるはずなのに……」などと困惑を隠せない方も少なくないようです。

そこで今回と次回の2回に分けて、現行の障害者総合支援法について、今回は障害と難病をもつ成人を対象にしたサービスを中心に、次回はそれらサービスの利用方法について、ポイントを整理してみたいと思います。

障害者総合支援法の対象に
「難病のある18歳以上の人」も

まずはその名称ですが、障害者総合支援法の正式名称は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」です。

この名称が示すように、ノーマライゼーションの理念そのままに、障害の有る無しに関係なくすべての人が住み慣れた地域で自分らしい生活を営んでいけるように、その人の必要に応じて日常生活や社会生活を総合的に支援することを目的とした法律です。

障害者総合支援法の対象者

この法律では、第四条において支援の対象となる「障害者」「障害児」を以下のように定義。そのうえで、対象に該当する障害のある子どもから成人は、必要と認められた費用の給付や補助具類の貸与などの支援を受けることができるとしています。

  • 身体障害者(身体障害者福祉法第四条で規定)のうち18歳以上の人
  • 知的障害者(知的障害者福祉法でいう)のうち18歳以上の人
  • 精神障害者(精神保健および精神障害者福祉に関する法律第五条に規定)のうち18歳以上の人(発達障害のある人を含む)
  • 難病(治療方法が確立していない疾患その他の特殊の疾患で政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度)のある18歳以上の人
  • 障害児(児童福祉法第四条第二項に規定)

対象となる難病は338疾患(2021年11月現在)

さまざまある障害者福祉サービスの対象に「難病のある人」が初めて加えられたのは、この法律が制定された2013年4月です。これにより難病のある人で、障害の程度などが法律で定める条件を満たす人は、身体障害者手帳の有無にかかわらず、必要な公的支援を受けられるようになりました。

障害者総合支援法の対象となる難病には、2021年11月1日からは新たに5疾病が加わり、トータル338疾患が指定されています*¹。

このなかには、患者数の多い潰瘍性大腸炎やクローン病、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、パーキンソン病、もやもや病、重症筋無力症などが含まれています。

一方で、原発性免疫不全症候群や網膜色素変性症、多発性嚢胞腎、下垂体前葉機能低下症、後縦靭帯骨化症のような患者数がきわめて少ない難病も対象疾患となっています。

障害者総合支援法による
「自立支援給付」

障害者総合支援法において対象者が利用できるサービスは、「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2本立てになっています*²。

このうち前者の「自立支援給付」とは、対象者が自立した生活を送るために福祉サービスを利用する際にかかる費用の一部を行政が負担するもので、利用者に個別に給付されます。

これには「障害福祉サービス(「介護給付」と「訓練等給付」がある)」「自立支援医療」「補装具」の3つの給付があります。

「給付」と「支給」の違いに注意!!
給付=支給と捉えがちです。しかし「支給」は本人からの申請の有る無しにかかわらず支払われるのに対し、「給付」は本人からの申請があってはじめて支払われるものです。
したがって、給付を受けるためには申請書を提出する必要がある旨を患者サイドに忘れずに伝え、そのための支援が求められます。

障害福祉サービスとしての「介護給付」

介護給付は、障害があることにより必要となる介護・介助サービスにかかる費用の一部が給付されるサービスのことです。

居宅介護、短期入所(ショートステイ)、療養介護(医療的ケアと介護を常に必要とする方対象)、生活介護(日常的な介護や見守りを必要としている方対象)、施設入所支援(施設内での夜間の介護・介助・みまもり支援が必要な方対象)など、全部で9サービスが給付の対象となります。

障害福祉サービスとしての「訓練等給付」

訓練等給付は、就労に向けた訓練や福祉的な就労、安定した就労を支援するサービス、あるいはグループホームなど費用の一部を給付するサービスのことです。

自立訓練(機能訓練と生活訓練がある)、就労移行訓練(一般企業での就労や起業を希望する方対象)、就労継続支援(一般企業での就労は難しいが、福祉的支援を受けながら働く方対象)、共同生活援助(グループホームなどで共同生活を営む方対象)の4サービスが給付対象となります。

自立支援医療の給付サービス

自立支援医療の給付とは、心身の障害の状態に対応した医療に対して、医療費の自己負担額を軽減する公費負担制度により給付するサービスのことです。

育成医療(身体障害児が対象)、更生医療(身体障害者が対象)、精神通院医療(てんかんを含む精神疾患の方を対象)の3種類の給付があります。
いずれの場合も、給付を受けるには、市区町村等で自立支援医療費支給の認定(支給認定)を受ける必要があります。

補装具費の給付サービス

日常生活を円滑に送るために、身体の欠損や障害を負った身体機能を補完あるいは代替する車いす装具、義肢や補聴器、視覚障害者のための白い杖(白杖:はくじょう)などの購入あるいは修理にかかる費用の、原則1割が給付の対象となります。

障害者総合支援法による
「地域生活支援事業」

障害や難病を抱えていても自立した日常生活または社会生活を営むことができるように、都道府県や住民により身近な市区町村が、地域の特性や障害者や難病患者本人の状況・病状に見合うかたちで、さまざまなサービスや事業を行うのが「地域生活支援事業」です。
そこには地域性が大きく反映されます。

サービスや事業の具体的な内容は都道府県や市区町村に委ねられていますが、たとえば住民により身近な市区町村が行うものとされている主な事業には、次のようなものがあります。

  • 相談支援事業(対象者の福祉に関するさまざまな問題について、本人や家族からの相談に応じ、必要な情報の提供、障害福祉サービスの利用に関するアドバイスを行う)
  • 移動支援事業(外出時の付き添いを行う)
  • 日常生活用具の給付または貸与事業(福祉用具が中心)
  • 意思疎通支援事業(手話通訳や要約筆記を派遣する)
  • 成年後見人支援事業(判断力が十分ではない人の権利擁護のために、成年後見制度の適正な利用に必要な支援を行う)

障害者総合支援法の利用方法と給付に伴う利用者負担についてはこちらにまとめてあります。

障害者総合支援法の対象者に一部の難病患者が含まれて以来、退院支援担当者にはこの制度がより身近なものになっているのではないだろうか。給付サービスは申請しないと受けられない。その手続きの流れと利用者にかかる負担額について概要をまとめた。

参考資料*¹:障害者総合支援法の対象となる難病
参考資料*²:障害福祉サービスの利用について