パルスオキシメータプローブによる熱傷に注意を




パルスオキシメーター

パルスオキシメータプローブ
装着部位の熱傷事例

新型コロナウイルスの感染患者が増加するのに伴い、「パルスオキシメータ」およびその「プローブ」と呼ばれるセンサーの使用ニーズが急速に高まっています。

ご承知のようにパルスオキシメータプローブは、パルスオキシメータ本体と接続して、経皮的に動脈血酸素飽和度(SpO₂)と脈拍数を連続してモニタリングし、患者の呼吸状態を把握するうえで欠かせない装置です。

このプローブを長時間にわたり装着したままにし、定められた時間内で装着部位の変更をしなかったために、装着部位に熱傷が生じてしまった――。

このような「ヒヤリ・ハット」事例が、直近*で7件(1歳未満2件、1~3歳4件、80歳代1件)報告されているとして、日本医療機能評価機構が、改めて注意を呼びかけています*¹。
*2015年1月1日から2020年2月29日の間

日本医療機能評価機構の
ヒヤリ・ハット事例報告から

日本医療機能評価機構では、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故に至る前に防いだものの「ヒヤリとした、ハッとした」事例)の報告を受け*、その内容や背景を詳細に分析し、同様の事故等の発生予防、再発防止に向けた提言を定期的に行っています。
*国立病院や特定機能病院等には報告を義務づけている

さらに、報告のあったヒヤリ・ハット事例のなかから、医療安全対策上特に広く共有すべき事例を毎月ピックアップし、その分析結果を「医療安全情報」として公表することにより、医療現場に特段の注意喚起を行っています。

「パルスオキシメータプローブによる熱傷」は、2020年4月15日発行の「医療安全情報 No.161」でも取り上げられています。

そこでは以下の2事例が紹介されています。

事例1 新生児(日齢1)のSpO₂が安静時に低下したためモニター監視をしていた。22時にパルスオキシメータプローブが外れたため装着し直した。
3時間ごとに装着部位を変更することになっていたが、看護師は多忙のため忘れていた。
翌日9時30分にプローブを外したところ、皮膚の異常を発見した。
皮膚科医師が診察し、「低温熱傷」と診断した。

事例2 患者(80歳代)は寝たきりで、終日パルスオキシメータプローブを装着していた。添付文書には8時間ごとに装着部位の変更や皮膚の観察を行うことと記載されていたが、入浴や清拭時にのみ行い、各勤務帯では実施していなかった。
清拭時にプローブを外すと、熱傷をきたしていた。

(引用元:医療安全情報 No.161 「パルスオキシメータプローブによる熱傷」*¹)

ヒヤリ・ハット事故発生後の取組み

上記事例が発生した2つの医療機関では、それぞれ事例発生後に、以下2点を中心とする取組みを実施していることが報告されています。

  • パルスオキシメータプローブの添付文書にて、プローブ装着時の注意事項を再確認し、記載されている時間を目安に装着部位の変更を行う
  • パルスオキシメータプローブの装着部位を変更した際には、それまで装着していた部位の皮膚の状態や血行状態を観察のうえ、必要な対応を実施し、それらを記録する

プローブ装着時の発光部位では
温度上昇による低温熱傷が

現時点でパルスオキシメータやパルスオキシメータプローブは複数社から販売されています。
それら製品の取扱説明書や添付文書を改めて確認してみると、装着部位に関しては、概ね以下のような注意事項が明記されています。

  • パルスオキシメータプローブを装着をした状態では、プローブ先端の発光部位(装着部位)は、温度が2~3℃程度上昇する。
    その熱により、装着部位に低温熱傷などの皮膚障害を生じさせることがある。
    これらを防ぐため、装着中は一定時間*ごとに装着部位を変える必要がある
  • 高熱状態の患者や末梢循環不全のある患者、意識のない患者、皮膚の弱い患者、新生児、低出生体重児などにパルスオキシメータプローブを装着する際は、皮膚障害を生じる可能性が高まるため、より頻繁に装着部位を変更する
  • プローブの装着部位を変更する際には、装着していた部位の皮膚に異常がないこと、指先にうっ血が起きていないことをチェックし、異常を認めた場合は、直ちに皮膚科医の診察を要請するなど、必要な処置を行う
*装着部位を変える時間間隔として、
・リユーザブルプローブ(再使用可能なプローブ)は、通常約4時間ごとだが、プローブによっては30分程度のものもあるため、添付文書で確認する
・連続使用できるディスポオキシプローブ(使い捨てプローブ)でも8時間を超えて同一部位に装着しない

新型コロナの軽症患者と
パルスオキシメータプローブ

ご承知のように、新型コロナウイルス感染症で「軽症」と診断された患者、およびPCR検査で陽性であっても症状が現れていない無症候性感染者らの療養場所については、都道府県が借り上げたホテルなどの宿泊施設の利用を基本としています。

ただし、子育てなど家庭の事情で自宅療養を選択せざるを得ない軽症者も少なからずいます。
このようなケースについては、患者と家族をしっかりフォローする体制を用意することを条件に、自宅での療養を容認することになっています。

しかし、新型コロナウイルス感染症は、初期症状が通常の風邪程度の症状であっても、急性増悪する可能性があることがわかっています。

そこで、宿泊施設や自宅で療養する感染者については、急性増悪のサインである呼吸器症状の変化、とりわけSpO₂の低下を早期に発見して適切な対応がとれるよう、パルスオキシメータを活用することが奨励されています。

こうしたこともあって、看護師さんがパルスオキシメータプローブを取り扱う機会はこれまで以上に増えているといっていいでしょう。
その際は、プローブ装着に熱傷リスクがあることを念頭に対応していただけたらと考え、本事故事例を紹介してみました。

引用・参考資料*¹:医療安全情報 No.161 「パルスオキシメータプローブによる熱傷」