「ラテックスアレルギー」なら果物にも注意を

医療用手袋

ラテックスアレルギーにも
アナフィラキシーのリスク

「ラテックスアレルギー」は、看護師さんをはじめとする医療従事者にとっては「職業病」の一つです。1割前後の方が悩まされていると聞きますが、あなたは大丈夫でしょうか。

ラテックスアレルギーとは、「ラテックス」と呼ばれる天然ゴムに含まれるたんぱく質がアレルゲン(抗原)となり、皮膚に接触することにより発赤、掻痒感(そうようかん)、蕁麻疹(じんましん)などの皮膚症状を引き起こすものです。

加えて、このラテックスアレルギーには、卵や牛乳などのアレルギー同様、喘息発作や「アナフィラキシーショック」に発展するリスクがあります。このうちアナフィラキシーショックでは、血圧が低下して呼吸困難や意識レベルが低下した状態に陥り、最悪のケースでは死に至る可能性もありますから、非常に危険です。

ラテックス・フルーツ症候群の発症リスクも

また、ラテックスアレルギーの方の3~5割には、果物を摂取した際に「ラテックス・フルーツ症候群」を発症するリスクがあることもわかっています。

医療現場では、手袋やカテーテル(チューブ)類、絆創膏など、ラテックス(天然ゴム)製の医療用具を使う頻度が高いだけに、各医療機関で、また個人レベルでも細心の注意が必要です。同様に日常生活でも、炊事用手袋、乳児用おしゃぶり、玩具、スポーツ用具(ゴーグル、靴など)、またコンドームでもラテックスアレルギーを発症するリスクがあります。

今回は、その安全対策のポイントをまとめておきたいと思います。

医療従事者はラテックスアレルギーの
ハイリスクグループです

日本ラテックスアレルギー研究会は、ラテックスアレルギーを発症するリスクが高まる要因として、次の2点をあげています。

  1. 天然ゴム製のゴム手袋を常時着用しているなど、皮膚や粘膜とラテックスタンパク質(ラテックスに含まれるたんぱく質)とが接触する機会が非常に多い
  2. 慢性的な肌荒れなどにより皮膚のバリア機能(外部からの異物の侵入や刺激を防いだり、皮膚から水分の蒸発を防ぐなどして皮膚を保護している)が低下している

そのうえで、以下をラテックスアレルギーのハイリスクグループとしています

  1. 医療従事者、特に手指のアトピー性皮膚炎や接触性皮膚炎がある方
  2. 手術など、ゴム製医療用具・機器を使う医療処置を繰り返し受けている方
  3. 食物アレルギー、特にアボカド、バナナ、キウイなどにアレルギーがある方
  4. 天然ゴム製品の製造業に従事している方

アレルギー専門医による確定診断を

具体的には、天然ゴム製のゴム手袋やチューブ類、あるいは絆創膏などを使用した際に、多少でも手が赤くなったり、かゆくなるなどの皮膚症状を経験したことがあれば、ラテックスアレルギーの可能性が疑われます。

また、頻回な手洗いによる手荒れが原因で手指のバリア機能が低下している方も、ラテックスアレルギーの発症リスクが高いと考えられています。

このような疑いのある方は、直ちに天然ゴム製の製品に触れることを避けるとともに、最寄りのアレルギー専門医を受診して、自分がラテックスアレルギーかどうか、改めて診断を受けることをお勧めします。

ラテックスアレルギーの検査としては、血液検査や皮膚テストが行われます。いずれも医療保険が適用になります。ただ、アレルギー症状がない状態で受診した場合は適用外で、自費扱いとなることをご承知おきください。

なお、最寄りのアレルギー専門医は、日本アレルギー学会のホームページにある一覧から検索することができます。

ゴム製品を使う前に
ラテックスフリーの確認を

医療従事者のラテックスアレルギーに対する安全対策については、日本ラテックスアレルギー研究会が発行している『ラテックスアレルギー安全対策ガイドライン 2018』に詳しく紹介されています。

アレルギー疾患の治療の基本は、アレルゲンを回避することです。ラテックスアレルギーと診断された方に対してガイドラインは、手袋やチューブ類などのゴム製品を使用する際には、その製品がラテックスフリー、つまり天然ゴムが含まれていないことを確認してから使用することを求めています。

わが国では天然ゴム製の手袋などの医療用具については、「医薬品等安全性情報 No.153」(1999年)により、製品の説明書やパッケージに、「天然ゴムが使用されていること」、および「アレルギー症状が生じやすいこと」を表示することが義務づけられています。

ゴム製品を使用する際は、まずはこの表示をチェックすること。この表示がないゴム製品については、販売店や事業者に直接問い合わせ、ラテックスフリーの合成ゴム製品であることを確認してから使用する必要があります。

ラテックスアレルギーなら
バナナ、アボカド、キウイは避ける

ラテックスアレルギーと診断された方がもう一点認識しておきたいのは、ラテックス・フルーツ症候群の発症リスクがあるため、食事、特に摂取する果物やその加工品への配慮が欠かせないことです。

ラテックス・フルーツ症候群とは、新鮮な果物やその加工品を食べたときに、口の中の違和感やピリピリ感、全身の蕁麻疹、場合によってはアナフラキシーショックなどのアレルギー症状が現れるものです。

数ある果物のなかでも、栗、バナナ、アボカド、キウイの4品目は発症リスクが高く、アレルギー症状が重症化しがちであることがわかっています。これらの果物には特に注意が必要で、その加工食品(缶詰類、ゼリー・ケーキ類など)も避けた方が無難です。

薬剤同様に、ゴム製品のアレルギーチェックも

なお、医療機関には、自分がラテックスアレルギーであることを知らずに受診してくる患者が少なからずいるものです。

特に初診の患者については、薬剤アレルギーの有無を確認するようにゴム製品についても、使用して手が赤くなったりかゆみが出たりしたことがないかどうか質問して、ラテックスアレルギーの有無を確認することをお忘れなく。

なお、アレルギーの検査法や治療についてはこちらも参考にしていただけると思います。チェックしてみてください。

鼻水などの鼻アレルギー症状を花粉症のためと思い込んでいたら、実は原因は花粉ではなかったといったことは珍しくない。アレルギー症状を自覚したら、まずは原因のアレルゲンを特定する必要がある。39種類のアレルゲンを一度に調べられる「View39」検査を紹介する。

参考資料*¹:日本ラテックスアレルギー研究会ホームページ「ラテックスアレルギー」

参考資料*²:日本アレルギー学会専門医・指導医一覧

参考資料*³:日本ラテックスアレルギー研究会編『ラテックスアレルギー安全対策ガイドライン2018』(協和企画)