WHO、新型ウイルス肺炎の緊急事態宣言見送り




ウイルス

新型コロナウイルス関連肺炎
現時点では緊急事態にあたらない

中国武漢市で発生し感染が拡大している新型コロナウイルス関連肺炎について、2日連続で協議を重ねていたWHO(世界保健機関)の緊急委員会は、日本時間の1月24日未明、
「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と認定するには「現時点では時期尚早である」
として、緊急事態宣言を見送る声明を発表しました*¹。

一方で、新型コロナウイルスの感染源や感染経路、潜伏期間、感染力(どのくらい感染が広がりやすいか)、重症化率(感染し発症するとどのくらい重症になりやすいか)など、まだ多くのことがわかっていないことに言及。

約10日後、または事務局長が必要と判断した場合にはそれ以前に、緊急委員会を再度開催して協議する予定であるとしています。

加えて、中国政府や国際社会に対しては、感染源や感染経路の特定など実態の解明に向け、WHOへのさらなる協力を求めるとともに、検疫の強化など感染拡大防止策を一層強化し、警戒を怠らないよう呼びかけています。

その後WHOは、感染状況が深刻化していることを受け、1月31日未明(日本時間)に「公衆衛生上の緊急事態」に相当すると宣言しています。

人から人への感染はあるが
中国国内の濃厚接触者に限られる

WHOによる公衆衛生上の緊急事態宣言は、感染症などが「他国にまで拡大する危険性がある」「国際的に協調した対応が求められる」などの条件を満たしたときに出されます。

緊急事態宣言はこれまでに5度出されています。
直近では、2019年7月にアフリカ中部のコンゴ民主共和国で1年以上にわたり流行が続き、死者が2000人を超えたエボラウイルスによるエボラ出血熱に対して出されています。

今回、各国の感染症専門家や保健当局の担当者が参加して、スイスのジュネーブで開かれたWHOの緊急会合では、中国側が提供した最新の疫学データや感染拡大阻止のために取り組んでいる対策に関する報告を基に、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言するかどうかの協議が行われました。

緊急委員会を終えて記者会見したWHOのテドロス事務局長は、協議では「人から人への感染が発生しており、感染拡大の深刻さから判断して宣言を出すべきだ」という見方と、「まだ症例数が限られている」とする見方とで意見が割れたことを公表しています。

そのうえで、現時点では国際的なレベルでの緊急事態にはなっていないと判断し、緊急事態宣言を見送る最終決断を下した理由を、次のように語っています。

「中国で確認されている新型ウイルスの人から人への感染は、主に患者の家族や治療に当たる医療従事者にとどまっている。同時に、感染者が確認されている中国以外の国や地域では、人から人への感染が1例も出ていない」と――。

40歳代以上で基礎疾患を持つ人が
感染により重症化しやすい

中国の衛生当局は、1月25日の時点で、新型コロナウイルスによる肺炎患者は国内だけで1200人を超え、41人が死亡していると発表しています。

23日時点の当局の報告では、死亡例は17人でした。
2日で24人が亡くなっていることになり、その脅威に驚かされます。

23日に報告のあった死亡例17人の年齢は48歳から89歳で、その内訳は40歳代1人、50歳代1人、60歳代5人、70歳代2人、80歳代8人となっています。

持病があったり、低栄養状態で免疫力が低下しがちな高齢者が感染を受けるとより発症しやすく、またいったん発症すると重症化しやすいことは、いずれの感染症でも言えることです。

今回の中国におけるケースでも、実際に、死亡した人のおよそ60%が、糖尿病や循環器疾患、免疫抑制剤使用中など、基礎疾患を持っていたことが報告されています。

武漢市中心に街を封鎖し
新型ウイルスの感染拡大を阻止

新型ウイルスの感染は、日本、台湾、香港、韓国、ベトナム、タイ、シンガポールなどアジア諸国だけでなく、遠く離れたアメリカやフランスなども含む13の国と地域(1月26日時点)において、武漢市への渡航歴のある人や武漢からの旅行者の感染が確認されたことが報告されるなど、世界各地へと拡大しています。

中国政府は感染拡大を食い止めるために、23日から武漢市や黄岡市(こうこうし)などの空港や鉄道などの公共交通を遮断するとともに、主要な幹線道路も交通規制して街全体を封鎖し、ウイルス自体、および感染者の封じ込めを行っています。

WHOが現時点での緊急事態宣言を見送った背景には、このような感染拡大防止に向けた中国政府の尽力を評価したことによるとも言われています。

しかし、春節連休に入る前に武漢市を離れ海外へ出発した市民はおよそ300万人いるとの試算もあり、封じ込め作戦の効果はいまだ未知数と考えられています。

武漢市やその周辺都市からの旅行客を迎える側としては、入国時の検疫のみならず入国後の健康管理体制もいっそう強化、徹底する必要がありそうです。

国内で2人目の感染者確認
院内感染対策指針を万が一の備えに

そこで日本国内の状況ですが、厚生労働省は24日、日本に旅行で訪れた武漢市在住40歳代の男性が、新型コロナウイルスによる肺炎を発症したのを確認したと発表しています。
国内で感染が確認されたのは、神奈川県在住の中国人男性に続き2例目になります。

新たに感染が確認された患者は、入国から3日目の22日に発熱や喉の痛みが続くことを主訴に東京都内の医療機関を受診し、肺炎の診断を受けて入院。国立感染症研究所に提出していた検体で、24日に新型コロナウイルスによる感染が確認されています。
男性の状態は、現在安定しているそうです。

その後、2月10日の時点で、国内での流行は認められないものの、横浜港に停泊中のクルーズ船内において新型コロナウイルスの集団感染が発生し、船内に3000人を超える乗客、乗員が隔離状態に置かれる事態となっています。
詳細は、ことらの記事を読んでみてください。

新型コロナウイルスによる死者が SARSを超えて908人に 中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる…

中国で確認されている人から人への感染は、患者の世話をした家族や医療従事者が濃厚接触*により感染を受けたケースがほとんどとされています。
しかし、少数ながら感染者が目の前でくしゃみや咳をしたウイルスの曝露により感染を受け、発症したとするケースも報告されているとのこと。

患者はもちろんのこと感染の疑いがある人には「咳エチケット」としてマスクの正しい着用を求め飛沫感染の防止を図るとともに、手洗いや手指消毒を徹底して、接触感染からも身を守るよう指導することをお忘れなく。

*濃厚接触者の定義が4月21日変更されている。 COVID-19の確定患者が発症した2日前から接触した者のうち、①その患者と同居、あるいは15分以上の接触(車内、航空機等内を含む)があった者、⓶適切な感染防護なしに患者を診察、看護もしくは介護した者、③患者の気道分泌物もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者、④手で触れる、または対面で会話することが可能な距離(目安として1m以内)で、必要な感染予防策なしで患者と15分以上の接触があった者、のことをいう。

なお、日本感染症疫学センターと国立医療研究センター国際感染症センターがまとめた新型コロナウイルス関連肺炎に対する院内感染対策の指針をこちらの記事にまとめてあります。
万が一に備えて是非一度目を通しておいてください。

中国武漢市で多発している肺炎が新型のコロナウイルスに関連した肺炎であることがWHOで確認された。その数日後、日本で初めての感染者が確認された。死者も出ているだけに、パンデミックを恐れる声もあるが、感染力は低いとのこと。その院内感染対策指針を紹介する。

参考資料*¹:厚生労働省「中華人民共和国湖北省武漢市における新型コロナウイルス関連肺炎に関する世界保健機関(WHO)の緊急委員会の結果について」