結核は過去の病気ではないと認識し対策の徹底を




ワクチン接種

海外からの持ち込み阻止に向け
結核の水際対策を強化

さまざまな国から大勢の外国人を迎える東京オリンピック・パラリンピックの開催まで1年を切り、国全体が一気にオリンピックモードに突入しています。
そんななか大きな課題となっているのが、風疹や結核などの感染症対策です。

政府は8月1日、その第1弾として、大会で多くの人と接する業務に就く大会関係者に、風疹や麻疹(はしか)の予防接種を徹底することを柱とした2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた感染症対策を決定、公表しています。

予防接種の徹底には、国内外の選手や観客が集まる会場周辺で集団感染が発生するのを防ぐ狙いがあります。加えてこの対策には、エボラ出血熱など海外で流行している感染症の持ち込みを防ぐ水際対策や、この時期発生しやすい食中毒の防止強化策も盛り込まれています。

入国時の水際対策として検疫所が特に力を入れている疾患の一つに結核があります。
結核については、国内における感染症としてはすでに過去のものとして受け止められがち。
ところが、数としては海外から持ち込まれるケースが多いものの、実は国内にもまだその脅威が残っていることをご存知でしょうか。
今回はその辺の話を紹介し、予防の徹底にお役に立てたらと思います。

コンゴ民主共和国の一部でエボラ出血熱患者が増え続け、隣国に広がるリスクがあるとしてWHOが緊急事態を宣言。これを受け厚労省は出国者に注意喚起するとともに検疫体制を強化。折しもエボラ出血熱など1類感染症の原因ウイルス保有を決定している。

新規結核患者のほぼ1割を
外国人が占め、年々増加傾向に

厚生労働省は、結核登録者情報調査年報集計結果を毎年発表しています。
これによると、2017年の1年間に日本において新たに結核患者として登録された、いわゆる新規登録結核患者(以下、新規結核患者)の数は、前の年より836人減少はしているものの実に1万6789人にのぼっています。

10万人当りの患者数を示す罹患率は13.3で、前年より0.6(4.3%)減少しています。
減ってはいるものの、罹患率が10を切る結核低蔓延国の欧米諸国に比べると高い水準が続いていおり、日本は依然として結核中蔓延国に位置づけられています。

この新規結核患者について注目すべきは、外国人患者が前年より192人増えて1530人となり、新規結核患者全体の1割近く(9.1%)を占めている点です。
しかも年々増加傾向にあり、10年前からほぼ倍増しているのが気にかかります。
ちなみにその年齢を見ると、20~39歳に集中しているのが特徴的です。

結核高蔓延国で感染し
来日後に発病している

外国人の新規結核患者の多くは、中国やベトナム、タイ、フィリピン、インドネシアといった近隣アジア諸国の結核高蔓延国(WHOが指定)に居住歴(過去3年以内)、あるいは滞在歴(6カ月以上)があることが明らかになっています。

このことと、結核は感染してもすぐには発病しないことを考え合わせると、新規結核外国人患者には、母国、あるいは滞在国で結核に感染し、来日後に発症するといったケースが多いことがうかがえます。

あるいは、結核という感染症は、仮に感染を受けていても免疫機能が正常に機能し、体力にも著しい低下がみられなければ、結核菌を体内に封じ込めるため、感染者の約8~9割は発病しないことがわかっています。

しかしアジア諸国からの留学生はこのところ目立って急増しています。
彼らは、昼間は日本語学校で学び、夜は飲食店やコンビニエなどで遅くまでアルバイトをするという生活で、睡眠不足のうえに疲労が蓄積し、結果、免疫機能が低下した状態に陥りがちです。そうしたことが、結核の発症につながっているものと推測されます。

今年(2019年)4月には、外国人労働者の新しい在留資格「特定技能」が新設され、国内に居住する外国人のいっそうの増加が見込まれます。
入国時の結核感染の有無のチェックを徹底して、来日後に結核を発症する新規外国人結核患者の増加に、なんとしてもストップをかけたいものです。

NEWS 在留外国人の入国前結核検査を義務化
政府は、結核の患者数が多いアジア6カ国(フィリピン、中国、ベトナム、ネパール、インドネシア、ミャンマー)から来日する長期滞在予定(3か月以上)の外国人に、日本政府が指定する現地医療機関での入国前検査を義務付ける方針を固め、2019年内にも施行する旨を発表している。

看護職の新規結核患者が
前年に比べ増加している

もう1点、2017年の新規結核患者のなかに看護師・保健師が216人もいることが大変気になります。前年の191人から25人増えて新規患者の1.3%を占め、年齢階級別では30~39歳の層が最も多くなっています。

同じ医療職でも、医師の新規結核患者は38人で、30~59歳の層に集中しています。
また、理学療法士や作業療法士、および結核菌を取り扱う臨床検査技師など、看護師・保健師・医師以外で医療機関に勤務するスタッフの新規結核患者は280人で、年齢層では看護師同様30~39歳の割合が最も高くなっています。

どの医療機関にも結核患者が受診する

結核は、日常診療ではほぼ忘れられた存在になりつつあります。
そのため結核に関する十分な知識のないまま医療機関に勤務するスタッフが少なからずいるのが実情だと言っていいでしょう。

しかし結核を発病している患者は、咳や痰、微熱などが長く続くこと、あるいは体重減少や食欲不振を訴えて医療機関を受診します。
これらの症状は決して特異なものではありませんから、どの医療機関にも結核患者が受診する可能性があると考えるべきでしょう。

結核に感染しても発病しないために
日々免疫力を高める努力を

ご承知のように結核は、結核を発病して排菌している(喀痰検査において結核菌が検出される)患者が咳やくしゃみをしたときに、結核菌を含んだ飛沫(しぶき)が周囲に飛び散り、その周りの水分が蒸発して飛沫核と呼ばれる状態になって空気中に漂っているところを、たまたまその空気を吸い込むことによって感染します。

運悪く結核菌を肺の奥まで吸い込んでしまっても、その結核菌が肺胞に定着した状態で落ち着いていれば、症状が出ることはなく、人への感染性、つまりうつすこともありません。
そのまま一生発病しない人も少なくないようです。

ところが、免疫力や体力が低下して結核菌を封じ込めなくなると、肺の中で結核菌が増殖して活発に活動するようになり、そこで炎症を引き起こします。
こうなると、咳や痰、微熱といった症状が現れるようになります。結核の発病です。

しかし、感染して発病するのは全体の1割から2割ですから、日頃から個人でできる予防策として免疫力を高めておくことをおすすめします。
なお、結核の院内感染対策の詳細は、厚生労働省の研究班がまとめたガイドライン(コチラ)が参考になります。
また、外国人患者の受け入れについてはこちらの記事が参考になると思います。

訪日外国人は増加傾向にある。併行して医療機関を訪れる外国人旅行者も大幅増となるとの見通しのもとに公表された「外国人患者受入れのための医療機関向けマニュアル」を参考に、社会問題化している医療費トラブルの防止や感染症対策、宗教上の問題を中心にまとめた。