がんサバイバー支援施設を訪問看護師らが開設




がんサロン

がんサロンの拡大版
「マギーズ東京」が豊洲にオープン

この1010日(2016年)、東京・豊洲に、がんサロンの拡大版といえる「マギーズ東京」がオープンし、その記念式典が開かれました。

厚生労働大臣も臨席されたこの模様はマスメディアが大々的に報じましたから、「マギーズ」と聞いて、「ああ、あの施設ね」と思い浮かべた看護師さんも多いのではないでしょうか。
とりわけ病棟や外来で、あるいは在宅ケアの現場でがんサバイバー、つまりがん患者とその家族・友人たちに日々かかわっておられる看護師のあなたなら、一度ならず耳にしたことのある名前ではないでしょうか。

「マギーズ東京」は、ホスピスの誕生地であるイギリスで2008年に、一人のがんサバイバーの発案により誕生したがんサバイバーの支援施設、「マギーズキャンサーケアリングセンター(通称、マギーセンター)」をモデルにした施設です。

長年にわたり訪問看護師として精力的活な活動を続けている秋山正子さんがセンター長を、乳がん経験者の鈴木美穂さんが共同代表を務め、企業や個人からの寄付で運営されるそうです。

NEWS 秋山正子さんがフローレンス・ナイチンゲール記章を受賞
2年に一度、顕著な功績のあった看護師らに贈られる世界最高の記章であるフローレンス・ナイチンゲール記章を、当センター長の秋山正子さんが受賞し、2019年8月7日、日本赤十字社名誉総裁の皇后雅子さまから記章が授与されました。
がん患者への訪問看護実践の経験から地域住民が誰でも、いつでも気軽に利用・相談できる環境整備、地域の保健活動の先駆性が認められたものです。

「がんサバイバーシップを高める」
その支援の活動拠点として

ここには、イギリスのマギーズセンターで研修を受けたがん看護専門看護師や臨床心理士などの専門スタッフが常駐し、訪れるがんサバイバーたちの治療への向き合い方や日々の生活について、アポイントなしで、しかも無料で相談に応じるそうです。

その支援のモットーは、マギーズセンターの基本コンセプトである「ヒューマンサポーティブケア」です。この考え方をベースに、施設オープンの式典で挨拶したセンター長の秋山さんは、こんなふうに今後に向けた抱負を語っています。

「病院で自らががんであるという重い事実を突きつけられてショックを受け、状況によっては自分を見失う人もいる。そんな人たちがゆったりとした環境のなかで自分を取り戻し、肩の荷を下ろすことのできる“第二のわが家となる場所にしていきたい」

がんの種類やステージ、受けている治療、そして治療期間などに関係なく、がんサバイバーたちが、がんそのものや治療に伴う苦痛や再発への不安を抱えながらもそれに負けることなく、「がんという病気とともに、どう自分らしく生きていくか」を自ら考える支援をする場というわけです。

このところがん専門病院を中心に「がんサロン」の開設が進められていますが、「マギーズ東京」は、その拡大版といったところです。2人に1人が生涯に一度はがんを経験するとされるわが国にあって、まさに「がんサバイバーシップを高める支援」の拠点として活動をスタートしたといっていいでしょう。

マギーズセンターの基本コンセプトである「ヒューマンサポーティブケア」が意図しているのは、「そこを訪れる人々が自分の力を取り戻して、自らのために自分の足で歩いていく」ことにあります。
このコンセプトのベースには、がんサバイバーを弱者としてではなく、自らのはっきりした意思と、それをきちんと自己主張して道を切り拓いていこうとする強さを併せもつ者としてとらえる考え方があることがわかります。

このような、がんという病により窮地に追い込まれながらも、「自分の生き方を積極的かつ、能動的に考え、行動する姿勢そのもの」を、がん看護専門看護師の近藤まゆみさんは、近著『臨床・がんサバイバーシップ―“生きぬく力”を高めるかかわり 』(仲村書林)のなかで、がんサバイバーの「セルフアドボカシ―」であると説明しています(p.69)

がんサバイバーそれぞれがセルフアドボカシ―を実践していくためには、心身両面からのサポートが必要となります。もちろん社会的な支援も大切です。

マギーズ東京は、訪れる人の相談に応じるだけでなく、彼らの癒しの場になるようにと、設計の段階から居心地のよい空間づくりに心を配ったといいます。その、随所に工夫が施された施設内部や周辺の環境については当施設のホームページで実際に見ることができます。

訪問者のためのティーサービスなども用意され、がん治療中のからだによい食事について学ぶ機会も設けられています。また、多目的スペースではヨガなどのリラクセーション法も身につけられるようになっているようです。

がん看護において「セルフアドボカシー」への視点は重要だが、この言葉にリアリティが感じられないとの声は多い。がん看護専門看護師の近藤まゆみさんは著書の中で、がんを病んでいることにひるむことなく、自分らしく生き抜いていくことと、説明している。

がん看護に携わる看護師も
がんサバイバーとして活用を

マギーズ東京は、がんサバイバーのために用意された「癒しの場」であり、かつ「憩いの場」です。この「がんサバイバー」には、がん治療中の患者はもとより、その家族、友人、知人、さらには彼らのケアにあたっている看護師をはじめとする医療スタッフや社会的サポートに携わる人びとも含まれます。

ですから、日々がん看護を実践しているなかで疲れを感じ、「なんとなく気持ちが落ち込む」とか、「がん看護を続けていく自信がなくなってきた」というようなときは、気分転換を兼ねて、フラッとマギーズ東京を訪ねてみてはいかがでしょうか。