診療報酬改定にみるこの先高まる看護ニーズ




新たなニーズ

2025年問題への対応に
看護師はいっそうの尽力を

看護サービスの値段が決まる診療報酬が2年ごとに改定されていることは、看護師さんならよくご承知のことと思います。

その改定率は、この先の看護サービスの報酬にそのまま影響し、看護師さん個々のお給料にも直接響いてくることは言うまでもないでしょう。
同時に、それ以上に大きな意味を持つのは、改定のポイントをどこに置くかで、看護を含む医療サービス全体の方向性が微妙に変わってくることです。
それだけに医療に携わる看護師さんは、その動向に無関心ではいられないことと思います。

さらに、今回行われている来年、つまり2018年度の診療報酬の改定は、3年ごとに行われている介護報酬の改定と時期が重なり、ダブル改定となっているのが大きな特徴です。

このダブル改定には、人口の多い団塊世代が75歳以上となり、医療・介護ニーズがいっそう高まることが想定される、いわゆる「2025年問題」への対応のあるべき姿を描くという重要な役割があります。
自ずと、病院などの医療機関において、また地域医療・在宅ケアなどの現場でも、看護職の皆さんに期待されるものがより大きくなるものと思われるますが、今回はそのポイントとなる視点をまとめてみたいと思います。

終末期ケアに必須となる
アドバンス・ケア・プランニング

2018年度の診療報酬改定については、去る12月8日に厚生労働省から、改定の基本方針(骨子案)が提示されています。
そこでは「改定の基本的視点」として、以下の4点が挙げられてます。

  1. 地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化・連携の推進
  2. 新しいニーズにも対応でき、安心・安全で納得できる質の高い医療の実現・充実
  3. 医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進
  4. 効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上

これらの4点は、前回の2016年度改定時に掲げられた基本的視点とダブル部分が多くなっています。そのなかで特に注目すべきは、この先今まで以上にニーズが増す分野として「看取り」と「認知症医療」の2つをクローズアップしている点です。

このうち「看取り」については、上記の基本的視点1の具体的な方向性として「国民の希望に応じた看取りの推進」と明記されています。国民の希望、つまり患者・家族の意思を尊重した看取りということになろうかと思います。

これを実現していくには、終末期ケアの一環としてアドバンス・ケア・プランニングの考え方が必須になってくるということでしょう。
その実践には、「私の四つのお願い」の書き方―医療のための事前指示書』(ワールドプランニング)や、『本人の意思を尊重する意思決定支援: 事例で学ぶアドバンス・ケア・プランニング』(南山堂)などを参考に、その時に備えることも求められるのではないでしょうか。

また、住み慣れた自宅で人生を締めくくりたいと希望する方は、今まで以上に増えることが予測されます。そのニーズによりスムーズに応えようと、情報通信機器を使用した遠隔での死亡診断に向けて鋭意準備が進行中ですが、その実践に訪問看護師さんの役割が大きく期待されていることはご存知のとおりです。

病期や診療科の別なく求められる
認知症看護の充実を

もう一点の「認知症医療」については、改正の基本的視点2の具体的な方向性のなかに「認知症の者に対する適切な医療の評価」と記されています。ひとことで言えば、認知症者に対して適正に行われる医療サービスやケアをきちんと評価するということになるでしょうか。

現時点ですでに500万人を超えているといわれる認知症患者は、2025年には700万人を優に超えると推計されています。医療機関に働く看護師の皆さんは、診療科の別なく、また急性期、慢性期に関係なく、認知症患者への対応が求められることになるでしょう。

また、訪問看護師さんら在宅ケアに取り組んでおられる方も、認知症ケアは避けて通れないでしょう。さらに地域においては、介護保険施設などにも、今まで以上に看護職の皆さんの手が必要になってくるのではないでしょうか。

認知症は、物事を認知する能力が低下することにより、今まで当たり前にできていたのにできなくなることが増え、日常生活にさまざまなかたちで支障をきたす病気です。それだけに、認知症患者を「何もかもわからなくなっている人」として捉え、できるだけかかわりを避けたいと考えがちではないでしょうか。

しかし、認知症看護認定看護師の上野優美さんは、近著『急性期にある認知症高齢者―安心・安全を届けるかかわり 』(仲村書林)のなかで、目の前の認知症症状がみられる高齢者を「何もわからなくなっている人」ではなく、「できなくなっていることがあって困っている人」として受け止めてかかわっていると、自ずとこころが通じ合い、その人が望んでいることがわかってくると、記しています。
認知症者への適切なかかわりのヒントは、どうもこの辺にありそうです。

看護師も無関心でいられない
慢性期医療重視の視点

2018年度の診療報酬と介護報酬のダブル改定で最も重視されているのは、2025年に向けて、またその先も患者の高齢化が一層進むことにより生活習慣病や認知症が多くなってくることです。

言いかえれば、手術などにより比較的短期で完治を目指す、いわゆる急性期医療よりも、在宅で長期にわたり治療に取り組むスタイルの慢性期医療を受ける人が、この先ますます増え続け、医療の中心はそこに置かれると推測されるということです。

この点について、日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、12月14日(2017年)の定例記者会見において、「リハビリテーションは病前の日常生活により早く復帰するために必須の技術であり、急性期を含むあらゆる段階で必要なかかわりである」旨の見解を述べておられます(資料)。

この見解は、先に看護領域で活躍しておられる仲間との食事会の席で話題になったことをまとめた「生活の再構築を必要としない患者はいるだろうか」という記事の趣旨とまったく同じものです。まさにこれからは、目の前の患者の「できないこと」ではなく「できること」、その人の持てる力を見つけて、それをのばしていく看護のかかわりが、医療の中でますます大きな力になっていくのだろうと考えたところです。