無症状者の新型コロナウイルス検査に注意喚起




水滴

院内感染対策として必須の
無症状患者のPCR検査

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検査については、感染第1波の段階では、医療、とりわけ検査体制が逼迫(ひっぱく)していたことから、
「入院治療が必要な肺炎患者で、ウイルス性肺炎が強く疑われる症例」
と医師が判断した場合に限り、PCR検査が行われていました。

しかし、2月3日に横浜港に入港したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」における感染状況を検証した結果、PCR検査で陽性反応を示し感染が確認された712人のうち331人は、無症状病原体保有者であることが明らかになっています*¹。

端的に言えば、新型コロナウイルスに感染していても、約半数の人が、無症状で経過し、そのまま回復していたということです。

この検証結果を重視すると同時に、検査体制の整備が日を追って進んだこともあり、5月15日からは、無症状の患者であっても医師が必要と判断した場合にはPCR検査を、有症状者同様に保険適用で実施できるようになりました。

日本感染症学会等が検査実施上の留意点まとめる

そして最近では、院内感染対策や濃厚接触者等による感染拡大防止策として、スクリーニングを目的に、無症状者を対象としたPCR検査等の新型コロナウイルス検査が行われています。

この無症状者を対象に行われている検査について、特にその結果の解釈に注意が必要と考えた日本感染症学会、日本微生物学会、日本臨床検査医学会の3学会は、共同で検査を実施する際の留意点と陽性者への対応についてまとめ、公表しています*²。

読んでみると、看護職の皆さんには是非知っておいていただきたい点が何点かあります。
ということで、今日はそのポイントを紹介してみようと思います。

スクリーニング目的の検査では
「偽陰性」による見逃しを防ぐ

院内感染対策、あるいは施設内感染対策としてスクリーニングを目的に検査を実施する場合には、本当は新型コロナウイルスに感染しているのに「陰性」と出てしまう、いわゆる「偽陰性」による見逃しを防ぐために、感度の高い検査を実施する必要があります。

感度が高い、すなわちウイルス検出力の高い検査としてまずあげられるのは、新型コロナウイルス検査の標準法となっている鼻咽頭ぬぐい液を検体に用いてウイルスの遺伝子を検出するPCR検査(Polymerase Chain Reaction test:ポリメラーゼ連鎖反応検査)です。

このPCR検査法は、検体の中にウイルスの遺伝子が少量であっても検出することができるため、感染症の検査のなかでは特に感度の高い検査として認知されています。

この感度のよさから考え、偽陰性を見逃すリスクはきわめて低いとの判断から、無症状者に対する検査法としては最適と考えられています。

唾液によるPCR検査も
院内感染対策のスクリーニングに

ご承知のようにPCR検査には、唾液を検体に用いる方法もあります。

鼻咽頭ぬぐい液を検体に用いる方法では、長めの綿棒を患者の鼻腔奥深くへ差し込んで検体を採取するため、患者には痛みや恐怖感といった負担を強いることがあります。

同時に、検体を採取する医療者サイドも、検査中の患者のくしゃみや咳とともに飛び出す飛沫を浴びて感染を受けるリスクがあります。
そのリスクを低減するために、万全の感染対策が必要となります。

その点において唾液を検体にする方法では、患者が自分で唾液を容器に吐き出すだけで済みますから、患者と医療従事者双方の負担が大幅に軽減されます。

しかも、唾液によるPCR検査の感度は、鼻咽頭ぬぐい液によるPCR検査の感度と大差がない、つまり同程度に感度が高いことが確認されています。

唾液によるPCR検査は、6月2日に新型コロナウイルスの検査法として承認されたものの、その時点では「発熱などの症状発症から9日以内の有症状者」に限定されていました。

しかし、7月17日には厚生労働省が、唾液によるPCR検査の対象を、濃厚接触者などの無症状者にも拡大することに方針転換しています。
これにより病院などでのスクリーニング検査にも保険適用で実施できるようになっています。

検査結果が「陰性」となっても
感染を否定できるわけではない

無症状者にPCR検査を実施し、その結果が「陰性」であったことを伝えると、被験者(患者)は「よかった、感染していなかった」とホッとするでしょう。

しかし、PCR検査で陰性となったのは、「今回調べた検体に、遺伝子検査で検出されるほどの新型コロナウイルスの遺伝子が含まれていなかった」ことを意味するだけで、感染を全面的に否定できるものではありません。

感染初期でウイルスの量が少なかった、あるいはたまたま検体として採取した鼻咽頭ぬぐい液に、あるいは唾液に含まれているウイルス量が少なかったために陰性に出た、ということも十分ありうるわけです。

そのため、たとえ1回の検査で陰性だったとしても、今後発症する可能性がゼロではないことを、被験者にはしっかり伝えておく必要があるとしています。

検査結果が「陽性」となったら
無症状病原体保有者として対処

無症状者対象のPCR検査で結果が「陽性」となれば、その患者は新型コロナウイルス感染症の「無症状病原体保有者」と判断されることになります。

ご承知のように、新型コロナウイルス感染症は「指定感染症」に認定されています。
つまり、他人にうつして感染を拡散させるリスクがありますから、無症状病原体保有者といえども、隔離のための入院療養が必要となります。

この隔離療養については、無症状で軽症と診断されれば、本人の希望により自宅で療養することも可能としていた時期がありました。

しかし、自宅療養には、家庭内での感染リスクが高いという問題があります。

そのうえ新型コロナウイルス感染症は、初期は無症状や風邪程度の軽い症状であっても急性増悪する可能性があることがわかっています。

実際、軽症と診断されて自宅で療養中だった患者が、容体が急変して、そのまま自宅で死亡するといったことが何例か起きています。

無症状者や軽症者は宿泊施設での隔離療養が基本

こうした事態を深刻に受け止めた厚生労働省は、自宅での療養を原則禁止とし、都道府県が借り上げたホテルなどの宿泊施設で、24時間常駐する看護職等の医療スタッフによる健康チェックを受けながら療養する方針に切り替えています。

この辺のことも十分説明をし、無症状でもウイルスの保有者であることに理解を求めたうえで、納得のもとに療養してもらえるように働きかけていただけたらと思います。

参考資料*¹:新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について
参考資料*²:無症状者に対するSARS-CoV-2検査での注意点(2020年7月31日)