「地域連携薬局」認定制度がスタートしています

薬局

病院医療と在宅医療をつなぐ
「地域連携薬局」を認定

医薬品や医療機器の安全確保に関する法律、いわゆる「薬機法*」の改正に伴い、今年(2021年)8月から「地域連携薬局」の認定制度がスタートしているのをご存知でしょうか。

地域連携薬局は都道府県知事が認定し、中学校区(通学距離で6㎞以内、通勤時間にして1時間以内の日常生活圏域)に1カ所以上整備される予定です。

現在わが国では、重度な要介護状態となっても人生の最後まで住み慣れた地域で自分らしい生活を送れるように地域内で助け合う体制として「地域包括ケアシステム」の構築が、2025年度完成を目途にすすめられています。

しかしながら、こと「医療」、とりわけ薬物療法に関係して言えば、たとえば末期がん患者に使用される麻薬注射や重症患者の大量輸液などに対応できる診療所が少ないことが深刻な課題となっています。

急変しやすい重症在宅患者において需要の多い、休日や夜間の調剤に応じてくれる薬局が不足していることも、地域の受け入れ体制が不十分である点とされています。

そこで、新たに認定される「地域連携薬局」に、薬物療法に関係して病院医療と在宅医療をつなぐ役割を担ってもらおうというわけです。

*ここで言う薬機法は、2019年12月4日公布の「医薬品、医療機器の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の一部を改正する法律」のこと。
2021年8月1日に施行された。

療養の場の移行に併せて
地域連携薬局と情報共有

地域連携薬局には、外来通院中の患者の服薬フォローアップだけでなく、在宅療養患者についても、服薬サポートはもちろん、点滴や注射薬などの無菌設備、いわゆるクリーンルームが必要な薬剤の調剤などにも対応できる薬局として機能することが求められます。

たとえば、在宅の重症患者では、各種医療機器や注射器やチューブ・カテーテル類などの特定保険医療・衛生材料が必要になるケースも少なくないでしょう。

また、重症患者や終末期にあるような患者に対応するには、急変に伴う休日や夜間の調剤なども可能な体制を備えていることが求められます。

在宅療養患者宅を訪問して医薬品や医療機器関連のサポートをすることも必要でしょう。

さらに看護との連携で言えば、地域連携薬局には、患者の入退院時や施設への一時入所時など療養の場を移行する際に、患者が受けている薬物療法に関する情報を病院・施設と継続的に共有し、在宅医療をサポートする役割も期待されています。

「薬局」の機能が
大きく変わる地域連携薬局

従来の「かかりつけ薬局」は、「医師が処方した薬剤を調剤し、その薬剤に関する情報提供を行う場所」と説明することができます。

一方、「地域連携薬局」は、従来の薬局機能に、「薬剤および医薬品の適正な使用に必要な情報の提供および薬学的知見に基づく指導の業務を行う場所」が追加され、地域の医療機関や施設に勤務する医師をはじめとした医療関係者との連携体制を構築したうえで、これらの業務を行うことになります。

つまり、これまでの薬局のように利用者に服薬指導等を行うだけでなく、他の薬局に対する医薬品の提供や情報発信など、他の薬局の業務をサポートする役割も期待されているのが地域連携薬局の特徴と言っていいでしょう。

地域包括ケアシステムの1拠点として活動する地域連携薬局の薬剤師らとの連携の在り方については、こちらの記事を参照してください。

地域包括ケアシステム構想が打ち出されて10年余り。全国の市区町村で地域にふさわしい独自の取り組みが進むなか、課題も見えてきた。看護職ら医療関係者に関しては、コミュニケーションをとりにくいとの指摘が他職種から出ている。どういうことなのか―。

地域連携薬局の認定基準

このような役割を担えるように、知事の認定を受けて「地域連携薬局」として活動するには、おおむね以下4点の基準を満たしていることが求められます*¹。

  1. 利用者(患者)に薬局で服薬指導等を行う場合に備え、利用者の心身の状況に配慮した構造設備が整備されていること
    ・座って情報提供や服薬指導を受けることができる
    ・プライバシーの確保に配慮した相談スペースを設ける
    ・手すりやスロープなど、高齢者や障害者もスムーズに利用できる構造
  2. 利用者の薬剤や医薬品の使用に関する情報を地域の医療機関や介護施設、他の薬局など、利用者にかかわる施設と十分に共有できる体制が構築されていること
    ・退院時カンファレンス等、医療機関が開催する会議に継続して参加できる体制
    ・地域の多職種が参加する地域ケア会議等に継続して参加できる体制
  3. 地域の利用者に対して薬物療法に必要な医薬品等を安定的に提供できる体制づくり
    ・開店時間外の相談に対応する体制
    ・休日および夜間の調剤応需体制
    ・在庫として保管する医薬品を必要な場合に他の薬局開設者の薬局に提供する体制
    ・麻薬の調剤応需体制
    ・無菌剤処理を実施できる体制
    ・医療安全対策
    ・継続して1年以上常勤として勤務している薬剤師の配置
    ・地域包括ケアシステムに関する研修を終了している薬剤師の体制
    ・地域包括ケアシステムに関する内容の研修の受講
    ・地域の他の医療提供施設に対する医薬品の適正使用に関する情報提供
  4. 居宅等における調剤や訪問診療の利用者への情報提供や服薬指導ができる体制づくり
    ・居宅等における調剤並びに情報の提供および薬学的知見に基づく指導の実績
    ・医療機器および衛生材料を提供するための体制

各都道府県内の認定を受けた「地域連携薬局」は、「○○県内地域連携薬局一覧」で検索すればチェックすることができます。

がん等の専門的な薬学管理は
専門医療機関連携薬局で

なお、2021年8月1日からは、「地域連携薬局」と同時に、「専門医療機関連携薬局」の認定制度もスタートしています。

専門医療機関連携薬局は、がん等の専門的な薬学管理が必要な患者に対して、地域内の他の医療提供施設と密に連携しつつ、より高度な薬学管理や、高い専門性が求められる特殊な調剤に対応できる薬局です。

この薬局には、
・学会認定等のがんに関する専門的な知識を有する薬剤師の配置
・勤務するすべての薬剤師ががんに関する専門的な研修を受講
・継続して1年以上常勤する薬剤師の配置
等が、認定要件としてあげられていますが、詳細は、日を改めて紹介したいと思います。

参考資料*¹:厚生労働省「地域連携薬局の認定基準」