気をつけたい「スマホ老眼」、症状と予防法

スマートフォン

目を酷使しすぎて
一時的に「スマホ老眼」に

今やスマートフォン(以下、スマホ)は、私たちの生活に欠かせない必需品の一つとしてすっかり定着しています。

新機能がどんどん加わり、便利さも増す一方ですが、使い方によってはかなり深刻な弊害が、個人レベルのみならず社会的にも目立ってきています。

加えて医療や介護の現場においては、このところナースコールシステムを従来のPHS連動からスマホ連動に切り替える施設が増えています。

そのため看護師さんは、プライベートな時間だけでなく勤務中もスマホのディスプレイ(画面)を頻繁に注視して目を酷使しており、巷でよく耳にする「スマホ老眼」を気にしている方も少なくないのではないでしょうか。

幸いスマホ老眼は、高齢者によくみられる老眼とは異なり、その多くが一時的な症状です。

見えにくさに早く気づき、目の疲労を和らげることにより、比較的容易に進行を予防でき、回復も期待できるといわれています。

ということで今日は、ほぼ終日、暇さえあればスマホやタブレット、あるいはパソコン画面とにらめっこするのが習慣になっていて、もはや他人事ではすまなくなっているスマホ老眼について、予防の観点からいくつか情報をまとめてみたいと思います。

手元が見にくくなったら
スマホ老眼を疑って

最近は、病院でも在宅でも患者がコールボタンを押すと、看護師さんや訪問看護師さんが携帯しているスマホが鳴り、その画面に、コールしている患者の名前や現在の状態、訴えなどが即座に表示されるというシステムが普及しています。

そのためコールを受ける側としては、終日スマホ画面から目を離せない状況に置かれ、四六時中、目を酷使せざるをえなくなっているのではないでしょうか。

そんなあなたに以下の症状の一つでもあれば、目のピント調節能力が衰えて焦点を合わせにくくなっていると考え、一刻も早くスマホ老眼の予防に取り組むことをおすすめします。

  • ときどき視野がボヤケたりチカチカして、手元のスマホ画面が見にくい
  • レストランなどでメニューの文字が小さくて読みにくくなった
  • 焦点が合いにくく、アイメイクをしにくくなった
  • 細かい字を読んだりすると、目がショボショボして疲れやすい
  • よく肩がこるようになった

疲れ目対策を徹底すれば
スマホ老眼は予防・改善できる

「スマホ老眼」は、正式な診断名ではありません。

ですからはっきりした定義があるわけではありませんが、スマホ画面を近距離で長時間、または頻繁に見過ぎて目を酷使することにより、目のピント調節能力が低下している状態を一般に「スマホ老眼」と呼んでいます。

早い話が、スマホ老眼のメカニズムも症状も、40歳代の後半に入ったころから程度の差はあれ誰もが自覚するようになる「老眼」とまったく同じです。

そのため「えっ、まだ私若いのに、もう老眼なの?」と気落ちしがち……。

しかし、加齢に伴って起きてくる老眼は生理的な老化現象ですから、「手元がボヤケル」といったピンボケ症状には老眼鏡をかけるなどして対応するしかありません。

これに対しスマホ老眼は、そのほとんどが一時的なものです。

一時的なピンボケ症状は、早めに兆候に気づいて目の疲労回復に努めることでいかようにも改善することができるものです。

疲れ目の改善策を何もとらずに目を酷使し続けていると、ピンボケ症状が重症化していくだけですから、気づいたら早めに手を打つことが大切です。

スマホを正しく使い
目への負担を極力減らす

スマホ老眼の回復には、「スマホを使わない」「スマホ画面を見ない」というのが最善の策であることは言うまでもありません。

とはいえ、今や私たちの生活は、また看護の現場にあっては、スマホなしには1日たりとも立ち行かないような状況になっています。

そこで、せめて以下の点を厳守してスマホを正しく使用し、目にかかる負担を極力減らすようにしていきたいものです。

  • スマホ画面は目から35cm以上離し、目線が下がる角度(10度)を保つ
  • 歩きスマホや電車・バスのなかでの立ちスマホなど、揺られながら画面を追わない
  • スマホ画面を見続けるときは、1時間したら10~15分の休憩をとり、その間は画面から完全に目を離して、長時間継続して画面を見ないようにする
  • 休憩中は、ピント調節力を高める効果を期待できる毛様体筋トレーニングを行う。
    その方法としては「遠くと近くを交互に見つめる」「眼球を左右、上下に交互に動かす運動を3~5回繰り返す」「寝る前に温かいタオルをまぶたの上に載せて3分間ほど温めて目の筋肉の緊張を和らげる」など。
  • 手元が見にくくなったら、躊躇せずに老眼鏡を使う

このうち老眼鏡については、「まだそんな歳ではないから」と使うことに抵抗を感じ、見えづらいからと目を細めて文字を追うなどしていると、見えにくさが悪化するだけですから、早めに老眼鏡を使うことをおすすめします。

目薬を使うときは使い方に注意を

見えにくさが続くときは眼精疲労が深刻化しないよう、一度眼科を受診して目薬の処方を受けるという手もあります。

眼科を受診するほどではないときは市販の目薬を使ってみるのもいいようです。

その際は、薬剤師が常勤している薬局やドラッグストアで、薬剤師に症状をきちんと伝えたうえで、症状に合った目薬を選んでもらうことが大切です。

目薬は1日に10回を超えて点眼すると、眼の表面を覆っている涙の層が崩れてしまい、ドライアイにより症状が悪化するリスクがありますから、使い過ぎないように!!

メガネ型拡大鏡を
老眼鏡代わりに使うと危険!!

ところで、スマホ老眼対策として、老眼鏡の代わりに、普通のメガネのように耳にかけて着用できる、いわゆる「メガネ型拡大鏡」を使用している方も少なくないと思います。

このメガネ型拡大鏡について、2021年2月4日、国民生活センターが、「視力や老眼を矯正できるものではない」として、その使用に注意喚起を行っています。

「ルーペ」とも呼ばれる拡大鏡は、手の届く範囲内にあるものをレンズで拡大して見るためのツールで、老眼鏡とはまったく別個のものです。

そのため、メガネ型拡大鏡を老眼鏡代わりに使い続けていると、以下のようなトラブルが起きやすいことが確認されています。

  • 拡大鏡に表示されている倍率どおりに拡大されて見えない
  • ピントが合わなかったりぼやけたりして、明瞭に見えない
  • 使用中に目がチカチカして、気分が悪くなる
  • 着用したまま歩行すると転倒したり、階段を踏み外すことがある

スマホ老眼とは言え、老眼ですから、眼科医の診察を受け、あなたの目に合った老眼鏡の処方を受け、その処方箋に合ったメガネを作成することをおススメします。

詳しくはこちらの記事を読んでみてください。

眼鏡のようにかけて使える拡大鏡(ルーペ)が、加齢性老眼の方だけでなくスマホ老眼の若者にも愛用されている。両手を使えるのは便利だが、拡大鏡は老眼鏡の代用にはならない。使い方を誤ると転倒などの事故や目のトラブルも。国民生活センターが注意喚起している