看護師の手荒れ防止に免疫パワーの活用も




ヨーグルト

看護師の手荒れ防止・改善策は
身体の内側からも

看護師さんは1日に平均して何回手指衛生を実施しているでしょうか。
WHO(世界保健機関)は、2009年に発表した医療現場における手指衛生のガイドラインのなかで、「5モーメンツ」と称して、患者との接触に伴う5つのタイミングには意識して手指衛生を実施するよう推奨しています。

その5つのタイミングとしては、①患者に触れる前、②患者に清潔・無菌操作を行う前、③患者の血液・体液に曝露、つまりさらされた可能性のある場合、④患者に触れた後、⑤患者周辺の環境や物品(リネン類、ベッド類、点滴など)に触れた後、があげられています。

まさに「1処置前後の1手指消毒」ですから、1回の勤務中に行う手指衛生の回数をトータルすると、かなりの数にのぼることでしょう。その結果として起こりがちな手荒れが、看護師さんにとって深刻な悩みの1つであることは、察するに余りあります。

この手荒れ対策について過日まとめた記事には、連日多くの看護師さんがアクセスしてくださっています。これは、まぎれもなく手荒れの悩みが深刻であることの現われと言えるでしょう。

同時に、その記事の後半部分で「手荒れ防止には自らの免疫力を高める努力も必要」といったことに少しだけ触れているのですが、この点について「より具体的な情報がほしい」とのご要望をかなりの数、頂戴しています。

この点については、私自身も書き足りていないことが気になっていましたので、今日はその、「身体の内側からの手荒れ防止・改善策」についてまとめてみたいと思います。

感染防止の観点から頻回な手洗いは避けられず、結果として手荒れに悩まされている方は少なくありません。ときにひび割れなどもして、さらに感染リスクを高めることも……。手荒れ防止を強く意識した手洗いの方法とスキンケアについてまとめてみました。

手荒れを防ぐ免疫力は
生活習慣次第で高められる

一般的に言われている意味での「免疫力」とは、外界からの刺激に敏感に反応して我が身を守ろうとする、いわゆる「生体防御力」のことを指します。

免疫力が高ければ、ウイルスや細菌のような外敵から身を守ることができます。
手指衛生で使用する消毒薬のアルコール刺激から、皮膚や粘膜をガードする力も高まりますから手荒れしにくくなります。仮に一時的に手が荒れるようなことがあっても、高い免疫力と適切な対応により、比較的速やかな回復も期待できます。

私たちの免疫力は、生まれたときはその大半を母親、つまり母乳に依存しています。
そのためもともと備わっている免疫力は低いのですが、成長とともに徐々にアップしていき、20歳前後でピークを迎えると考えられています。

その後は加齢とともに少しずつ低下していくのですが、生活習慣次第で、ピーク時とそれほど変わらない免疫力を維持することも、またより高めていくことも可能と考えられています。

医療現場における手指衛生に関するWHOのガイドラインは、手荒れ防止策の1つとして「手荒れを増強するような生活習慣がないかどうか」見直してみることをすすめています。
これは、免疫力のことを言っていると考えていいでしょう。

免疫力を高める食生活は
食事バランスのチェックから

そこで、免疫力を高める生活習慣ですが、手っ取り早く、しかも最も確かな方法は、毎日の三度三度の食事を充実させることです。
それも何か特別なものを食べるということではなく、栄養バランスを考えながら、バランスのとれた食事を摂るようにすればいいのです。

とはいえ、交代制勤務のうえに、連日多忙な日々を送っている看護師さんには、「栄養バランスのよい食事」を摂り続けることは、簡単なようでいて案外難題かもしれません。
しかし、せめて1日の締めの食事の際には、「今日1日何を食べたかしら?」と振り返ってみることを習慣にしてみてください。

その際に、厚生労働省と農林水産省が協同で作成した「食事バランスガイドのチェックブック」(コチラ)を活用してみてはいかがでしょうか。
このバランスガイドには、1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかの目安がわかりやすくイラストで示してあります。

チェックしてみてもし足りていない栄養素があれば、その栄養素を補える一皿を加えることにより、1日を通して必要な栄養素が過不足なく摂れるようになるはずです。

腸内環境を整えて
免疫力を高め手荒れを防ぐ

免疫力を高めるうえで、「腸内環境を整える」ことも大切です。
私たちの腸管には、身体全体の免疫細胞の約70%が集まっています。
腸内にある免疫細胞の一つひとつが本来の働きを存分に発揮できるように腸内環境を健康に保つことができれば、免疫力の維持・アップにつながると考えられているのです。

腸内には、約1,000種類、数にして100兆個にも及ぶ細菌が常在しています。
この常在菌の集まりである腸内細菌叢(そう)を「腸内フローラ」などと呼んでいるわけですが、そのなかにはビフィズス菌や乳酸菌など、私たちの身体にプラスの働きをする菌もあれば、逆にマイナスに働いて悪さをする有害菌もあります。

免疫細胞にとって腸内環境は、両者がいいバランスを保っていることが理想です。
ところが、たとえばストレス状態が続くと、ビフィズス菌や乳酸菌が減少して、このバランスが崩れやすくなります。

すると腸の働きに不調をきたし、便秘や下痢に悩まされるようになります。
こうなると、腸内の免疫細胞の働きが落ちて免疫力が低下し、インフルエンザなどの感染症にかかりやすくなるだけでなく、手荒れも起きやすく、回復も遅れがちになってしまいます。

そこで、免疫力を高めるためには、ビフィズス菌や乳酸菌を多く含む食品を積極的に食事に取り入れて、腸内環境を整えることが大切になってくるわけです。
その際、ビフィズス菌も乳酸菌も生きたまま腸に届くと、より確かな効果が期待できることがわかっていますから、ビフィズス菌や乳酸菌を含んだヨーグルトやオリゴ糖がおすすめです。

食物繊維を摂るなら
水溶性の食物繊維がおすすめ

腸内環境を整えるには、食物繊維、それも腸内の老廃物を体外へ排出する効果の高い水溶性の食物繊維を意識して多めに摂るのが効果的です。
具体的には海藻類、きのこ類、バナナやリンゴなどの果物、といったところでしょうか。

また、n-3系多価不飽和脂肪酸やビタミンC、ミネラルで言えばセレン(セレニウム)も腸内環境を整えて免疫力を高めるうえで効果的だと言われています。

料理でオイルを使うなら普通のサラダオイルではなく「えごま油」や「亜麻仁油」を使う、イワシやサンマ、サバといった「青味の魚類」を、缶詰でもOKですから意識して食べるようにする、セレンを多く含む魚介類、肉類、大豆製品、卵や牛乳を欠かさないように摂ることを心がけるといいでしょう。

ただし、いずれの食品も単品でそれだけを摂ろうとすると栄養的に偏った食事になってしまいます。あくまでも栄養バランスのよい食事を用意したうえで、免疫力を高めるとされる栄養素を多く含む食品を加えるようにするのがいいようです。