新型コロナウイルスの感染予防に「うがい」は?




コップに水

新型コロナウイルスは
潜伏期間が11日に及ぶ例も

新型コロナウイルス感染症については、発熱などの呼吸器症状の自覚がないものの、なんとなく体調が思わしくないからと医療機関を受診し、検査により新型コロナウイルスの感染が確認されたというケースも出ているようです。

また、この新型ウイルスの潜伏期間、つまり感染を受けてから発熱やのどの痛み、咳嗽などの呼吸器症状が現れるまでに平均して5日前後、最短は1日、最長では11日かかっていることを、厚生労働省の技術参与として新型コロナウイルス感染症対策に日々尽力しておられる高山義浩医師が報告しています。
→ 高山医師の「新型コロナウイルス感染症 臨床像」

新型コロナウイルスの「歩く感染源」が多い

ということは、「歩く感染源」が存在するということです。

つまり、新型コロナウイルスの感染者であっても、人によっては11日もの長い間、自分が感染を受けているという自覚が全くないまま、街中でショッピングをしたり、レストランで食事をしたり、観光を楽しんだりしている可能性を否定できないことになります。

そこで、個人レベルでの感染予防の徹底が求められるわけです。
ところが、厚生労働省などが国民に呼びかけている予防策を見てみると、そこに「うがい」が入っていないことに疑問を感じている方は少なくないようです。

というわけで、今回は「ウイルス感染に対するうがいの効果」について書いてみたいと思います。

ウイルス感染の予防策から
「うがい」が外れている理由

感染予防策としての「うがい」、専門用語で言えば「含嗽(がんそう)」については、ここ数年ずっと疑問に思っていることがありました。

インフルエンザのような飛沫(ひまつ)、つまりウイルス感染者が咳やくしゃみをした際に周囲に飛び散る細かい水滴、いわゆる「しぶき」を介しての感染予防には、昔から「うがいと手洗いをこまめに行い、人混みを避け、やむを得ず人混みに出るときはマスクを着用する」と言われてきたものです。

ところが、4年ほど前からでしょうか。
季節性インフルエンザ予防を呼び掛ける厚生労働省の国民向けメッセージやパンフレット、リーフレットなどから、それまで記載されていた「うがい」が外されているのです。

その理由を厚生労働省の担当者に尋ねたことがあるのですが、その答えは、
「うがいは、一般的な風邪を予防する効果があるとする研究データはありますが、インフルエンザを予防する効果については科学的に証明されていませんから」
といった程度の、少々そっけない回答でした。

今回の新型コロナウイルス関連肺炎についても、感染対策として厚生労働省がホームページで国民に向けたメッセージとして記載しているのは、次のようなもので、そこにはやはり、「うがい」は入っていません(2020年3月3日現在)。

「国民の皆様におかれましては、過剰に心配することなく、季節性インフルエンザと同様に、咳エチケット飛*や手洗いなどの感染症対策に努めていただくようお願いいたします」
*「咳エチケット」とは、咳やくしゃみをするときにマスクやティッシュ、ハンカチ、洋服の袖などで口と鼻を覆い、人にウイルスなどを含むしぶきが飛ばないようにすること。
マスクの効果については、こちらの記事を読んでみてください。
→ 新型コロナウイルスの感染予防とマスクの着用

うがいによる風邪予防効果は
実証されているが……

うがいの風邪予防効果を科学的に実証しているのは、予防医療学が専門の川村孝教授(京都大学環境安全保健機構健康管理部門/健康科学センター)らの研究チームです*²。

研究チームは、ボランティア387名を「水でうがいを続けるグループ」「ヨウ素系のうがい薬でうがいを続けるグループ」「うがいをしないグループ」に分け、15秒×2回のうがいを1日3回、2か月間続けてもらい、風邪の発症状況を追跡調査しています。

その結果、水でうがいを続けたグループはうがいをしなかったグループに比べ、風邪の発症率が40%も抑えられることを確認できた、というのです。

一方、ヨウ素系のうがい薬でうがいを続けたグループの風邪発症率は、12%程度の抑制にとどまっていて、統計学的に有意な抑制効果は認められなかった、としています。

水によるうがいで風邪抑制効果が確認された理由として、研究チームは次の2点を挙げています。
⑴ うがいをするときの口の中の水の勢いでウイルスそのものやウイルス感染を引き起こしやすくする物質が洗い流される
⑵ 水道水に含まれる塩素が何らかの効果を発揮する

また、ヨウ素系のうがい薬によるうがいで水のような効果がでなかったことについては、のどに常在している細菌叢をうがい薬が破壊して、風邪ウイルスの侵入を許したり、喉の正常細胞を傷つけたりすることが原因として考えられる、としています。

口や鼻からの侵入ウイルス撃退に
うがいは現実的な策ではない

うがいには、口腔内の汚れを水の勢いで浮き上がらせて吐き出し、清浄にする効果があります。
乾燥によるネバツキなどを改善、解消して口臭を防ぐ効果も期待できます。

うがいにより水と一緒に吐き出される口腔内の汚れのなかには、鼻や口から入り込んだ雑菌やインフルエンザウイルスなども含まれますから、うがいはウイルス感染の予防に効果があるのではないか、と考えがちです。

しかし、鼻や口から入り込んだウイルスなどが、口腔内を通過してのどの粘膜や気管支の細胞に達し、その細胞内に侵入していくのに要する時間は想像以上に短く、早いときで数分、かかっても20分ほどと考えられています。

ですから、鼻から吸い込んだり口から入り込んできたウイルスによる感染を完全に防ぐには、数分から20分ごとにうがいをしないと間に合わないことになります。

これはあまりに非現実的な話ですから、インフルエンザや新型コロナウイルス関連肺炎の予防策としては実行可能な方法ではないとして、うがいが外されているようです。

■うがいをするなら、いきなり「ガラガラ」ではなく
ただし、だからうがいはしなくていい、という話にはならないでしょう。

外出から戻ったとき、とりわけ満員電車や人込みの中にいたときなど、また口腔内が乾燥してのどがイガイガするようなときは、まず水で口をしっかりゆすいで汚れを吐き出してから、ガラガラとうがいをすることをおすすめします。

このとき、たとえば風邪やインフルエンザ予防にと洗面所などに備えてある【第3類医薬品】イソジンうがい薬 を使えば、口腔内とのどの清浄にはより効果的でしょう。

イソジンに関しては、「どうもあの匂いや味が苦手で……」という方が少なくないようです。
そんな方には【指定医薬部外品】のどスッキリうがい薬がおすすめです

感染を疑ったときの「相談・受診」に新目安
厚生労働省は5月8日、新型コロナウイルスの感染を疑ったときに「相談・受診」する目安を変更し、発表しています。
新たな目安では「37.5度以上」「4日以上続く」などの条件が外されています。
詳しくはこちらの記事を読んでみてください。
→ PCR検査や相談の新たな目安を厚労省が発表

参考資料*¹:厚生労働省「新型コロナウイルスに関連した肺炎の患者の発生について」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09100.html
参考資料*²:水うがいで風邪発症が4割減少―世界初の無作為化試験で実証
http://www.sypis.jp/ishikai/ugai.pdf