新設の「抗菌薬適正使用支援チーム」とは?




抗菌薬

感染管理認定看護師から
「抗菌薬に関する本を」の声

感染管理認定看護師の友人から、こんなリクエストのメールが届きました。

「岩田医師のワインに関する本に関する記事を面白く読みました。でも、岩田医師は感染症専門医で、感染症に関する著書も多く、なかでも抗菌薬について書かれた本は、日々の臨床で看護師として知っておきたいことがていねいに説明されているから、是非取り上げてよ!!」

岩田医師とは、神戸大学大学院の岩田健太郎教授のこと。
メールにあるように感染治療学がご専門の感染症専門医ですが、同時に日本ソムリエ協会認定のシニア・ワインエキスパートの資格もお持ちです。

この資格を背景に、岩田医師はこの春先(2019年3月)、『ワインは毒か、薬か。』(朝日新聞出版)という本を出されています。

知人の医師にすすめられてこの本を読んだ話は、先にこのブログで書かせていただきました。
内容をざっくり言えば、ワインなどの飲食物に関して巷で言われている健康リスクについては、これを鵜呑みにすることなく、必ず科学的裏づけをとる癖をつけよう、といった話です。

岩田医師が検証作業を進めていくプロセスを読んでいて、
「科学的に考えるとはなるほどこういうことか」といたく感服。

「看護は実践の科学である」ことを大切にしておられる看護職の皆さんに是非読んでいただけたらとの思いから書いてみたのが、こちらの記事でした。
→ ワインを例に感染症専門医が説く「科学的思考」

「抗菌薬適正使用支援チーム」
の新設をご存知ですか

ところで、ちょうど半年ほど前、今回メールをくれた感染管理認定看護師の友人から、勤務先に新設された「抗菌薬適正使用支援チーム」に参加し、新たな活動を始めることになったという主旨の電話を受けていました。

抗菌薬(いわゆる「抗生物質」)については、薬剤耐性菌という問題があります。

とりわけ、現時点で使用可能な抗菌薬のほとんどに耐性をもつ「多剤耐性菌」、いわゆるスーパー耐性菌の登場が、国際的にも深刻な脅威になっていることはご承知かと思います。

こうした事態を招いている究極の原因は、抗菌薬の不適切な使用にあります。

そこで政府は、2016年4月に「抗菌薬処方を見直して、薬剤耐性を減らそう!」のスローガンのもと、「薬剤耐性(AMR*)対策アクションプラン」を打ち出しています。
詳しくはコチラの記事を読んでみてください。*Anti Microbial Resistance
→ 抗菌薬の適正使用に看護師も積極的取り組みを

このプランを受け、2018年度の診療報酬改定において、抗菌薬の適正使用や感染防止策をより確実に強化・推進していくことを目的に、抗菌薬の適正使用のための取り組みを評価する「抗菌薬適正使用支援加算」(100点「入院初日」)と「小児抗菌薬適正使用支援加算」(80点)が新設されています。

この算定要件の一つとして、多職種から成る「抗菌薬適正使用支援チーム(AST*)」を院内に設置することがあげられていることから、同支援チームを新設する医療機関が徐々に増えてきているというわけです。
*Antimicrobial Stewardship Team

「抗菌薬適正使用支援チーム」
構成メンバーと業務内容

「抗菌薬適正使用支援チーム」は、以下の条件を満たす4職種を構成メンバーとし、チームに参加する医師、看護師、薬剤師または臨床検査技師のうち1名は専従、つまりもっぱらチームの仕事だけに専念することが求められています。

⑴感染症の診療について3年以上の経験をもつ常勤医師*
⑵5年以上感染管理に従事した経験があり、感染管理に関する研修を修了した専任の看護師
⑶3年以上の病院勤務経験があり、感染症診療にかかわる専任の薬剤師
⑷3年以上の病院勤務経験があり、微生物検査にかかわる専任の臨床検査技師

*常勤医師の確保に難渋していた医療機関の救済策として、2020年度診療報酬改定により、週3日以上かつ週22時間以上勤務の非常勤医師2名で常勤換算が行えるようになった。

また、抗菌薬適正使用支援チームには、以下の活動を通して院内における抗菌薬の適正使用を推進すると同時に、他の医療機関から抗菌薬適正使用に関して相談を受けた場合は、積極的に協力することも求めています。

⑴院内における感染症患者(菌血症の患者、耐性菌が検出された患者、カルバペネム系抗菌薬など特定の抗菌薬を使用中の患者など)のモニタリングと主治医への診療支援
⑵感染症診療に関する各診療科からのコンサルテーション
⑶適切な微生物検査・血液検査などの推進
⑷抗菌薬適正使用に関する評価
⑸抗菌薬の適正使用に関する院内スタッフの教育・啓発
⑹院内での使用可能な抗菌薬の定期的見直し

患者と自身の安心・安全のために
抗菌薬の適正使用にもっと関心を

このように国をあげて抗菌薬の適正使用が進められる現状にあっては、スタッフナースといえども、「抗菌薬を処方するのは医師だから」とか「抗菌薬適正使用支援チームに任せておけばいい」などと、抗菌薬の使用に無関心ではいられなくなっているというのが実情です。

こうした事態を踏まえ、「感染症についてはよく考えたことがないという看護師でも、これ一冊で、抗菌薬のことはもちろん感染症の診断から治療に至る診療プロセス全体がよくイメージできるから、是非読んでみてほしい」――。

そう言って感染管理認定看護師の彼女がすすめてくれたのが、岩田健太郎医師による『抗菌薬の考え方,使い方 ver.4 魔弾よ、ふたたび…』(中外医学社)です。

タイトルにあるように、2018年11月に刊行された本書の最新版は、『抗菌薬の考え方、使い方』の「ver.4」、つまり第4版です。
彼女は2年ほど前、病棟の医師から本書の第3版を借りて読んだことがあるのだそうです。「でも正直、あまりに専門的すぎるのと詳しすぎるのとで、よく理解できなかった」。

ところが、本書の第4版が出たと聞き、書店で立ち読みしてみたところ、ずっとわかりやすくなっていたので、「これなら支援チームの活動に活用できる」と考え、購入したとのこと。

実際、本書の「まえがき」には、抗菌薬の話なんて一度も聞いたことがない看護学生でもスラスラ読める内容にしたいと思って改版した、といった趣旨のことが記されているそうです。
旧版ではなく、是非とも最新版「ver.4」の購入を!!

最後に彼女はこう書いています。
「抗菌薬の薬剤耐性は、患者さんだけの問題ではない。そこで働く自分自身にとっても大きな脅威になり得るということを、看護師一人ひとりにしっかり認識してもらいたいと思いながら、日々活動している」と――。