抗菌薬の適正使用に患者の理解が欠かせない




抗菌薬

「抗菌薬はウイルスに効かない」
理解している人は37.8%

内閣府の政府広報室は10月11日(2019年)、少々残念な世論調査結果を公表しています。
抗生物質などの抗菌薬について「風邪やインフルエンザなどの原因となるウイルスには効かない」ことを正しく理解している人が37.8%にとどまった、というのです。

「薬剤耐性」という言葉については、49.9%が「知っている」と回答しています。
ところが、「知っている」と回答している人でも、
「抗生物質を正しく飲まないと、薬剤耐性菌が身体の中で増える恐れがある」
ことを認識できている人の割合は、53.7%にとどまっていました。

また、「薬剤耐性菌を増やさないために心がけていることはありますか」との問いに、
「抗生物質は医師や薬剤師の指示どおりに飲み切る」を選択した人の割合が69.9%だったのに対し、「むやみに抗生物質の処方を希望しない」は、29.9%にとどまっていました。

耐性菌の増加になかなか歯止めがかからない原因の一つに、患者が希望すれば比較的簡単に抗菌薬が処方されている現実があることはかねてから指摘されています。
抗菌薬の適正使用を推進するうえで、「薬剤耐性」や感染症に対する患者の正しい理解が欠かせないことを改めて認識させられる調査結果と言えるのではないでしょうか。

患者が抗菌薬を希望しても
原則として処方しない

抗菌薬の不適切な使用がもたらしている薬剤耐性菌による感染症が世界的規模で急拡大している問題を受け、日本政府は、WHO(世界保健機関)からの要請もあり、2016年4月に「薬剤耐性(AMR*)対策アクション」を打ち出しています。
*Antimicrobial Resistance

このアクションプランでは、「抗菌薬使用を見直して、薬剤耐性菌を減らそう!」をスローガンに掲げています。
同時に、その実現に資するようにと、厚生労働省は2017年6月1日に「抗微生物薬適正使用の手引き第1版」を、さらに9月29日にはそのダイジェスト版をホームページ上に公表しています。

■厚労省の手引き書に「患者・家族への説明文例」
この手引き書では、患者が抗菌薬の処方を希望することの多い急性気道感染症や急性下痢症には、原則として抗菌薬を処方しないことを求めています。
そのうえで、「患者・家族への説明」のページにおいて、抗菌薬を使わなくても症状は十分改善できること、そのために配慮すべきことなどについて、具体的な説明文を紹介して対策の徹底、普及に努めています。

今回の内閣府による世論調査は、「薬が効かない(薬剤耐性)感染症に関する国民の意識を把握し、今後の施策の参考とする」目的で行われたもので、以下4項目について調査しています。
⑴ 抗生物質の理解度について
⑵ 抗生物質の服薬に関する意識について
⑶ 薬剤耐性の理解度について
⑷ 薬剤耐性対策の理解度について

調査は、全国18歳以上の日本国籍を有する3,000人を対象に、調査員による個別面接聴取法により、2019年8月22日~9月1日に実施され、有効回収数は1,667人(回収率55.6%)でした。

薬剤耐性菌の増加が世界的に大きな問題となっている。とりわけスーパー耐性菌と呼ばれる「多剤耐性菌」の登場は深刻な脅威である。国は「薬剤耐性対策アクションプラン」を打ち出し、抗菌薬処方・使用の見直しを呼び掛けている。看護にできる協力をまとめた。

抗菌薬の処方を受けても
指示どおりに服用しない理由

本世論調査の結果は、内閣府のホームページから全文をダウンロードできます(pdf.)。
たとえば「抗生物質を処方されたときに、医師や薬剤師の指示どおりに、飲む量や回数、期間を守って飲むことを意識しているか」との質問には、13.0%が「指示どおり飲まないことがある」と回答しています。

その、指示どおりに飲まない理由を多い順に挙げると、以下のようになっています。
「途中で治ったらそれ以上必要と思わない」…52.3%
「そもそも薬を飲むのは最低限にしたいから」…35.6%
「指示どおり飲むのを忘れてしまうから」…34.7%、
「自分の体調に合わせて調節したいから」…21.3%
「副作用が心配だから」…18.5%

この先、ケア場面で抗生物質のような抗菌薬について患者や家族に「処方された薬は指示どおりに飲み切るように」服薬指導していくうえで、患者サイドには抗菌薬に関し概してどのような誤解があるのか、処方された抗菌薬をどのように服用しているのか、といった生の情報は大変役立つのではないでしょうか。

■抗菌薬適正使用支援チームの活動も
折しも医療現場では、2018年度の診療報酬改定で「抗菌薬適正使用支援加算」と「小児抗菌薬適正使用支援加算」が新設されたことを受け、多職種から成る「抗菌薬適正使用支援チーム(AST*)」の活動が活発化していると聞きます。
*Antimicrobial Stewardship Team

この支援チームには、「5年以上感染管理に従事した経験があり、感染管理に関する研修を修了している」ことを条件に、専任の看護師が構成メンバーの1員として加わることが求められています。

加えて、スタッフナースのみなさんも、抗菌薬を希望する患者、あるいは医師から処方を受けた患者や家族への服薬指導が必要になる場面はゼロではないでしょう。
そんなときは、国が用意している抗菌薬に関するさまざまな啓発ツール(コチラ)を積極的に活用して、抗菌薬の適正使用に向け教育・啓発に取り組んでいただけたらと思います。

抗菌薬には薬剤耐性菌の問題があり、国際的な脅威となっている。国は先に「薬剤耐性対策アクションプラン」を打ち出し、「抗菌薬適正使用支援チーム」を新設するなど対策強化を図っている。もはや無関心でいられない抗菌薬について理解を深める一冊を紹介する。