看護師が人手不足を理由に患者虐待?




医療的ケアも介護も

共同通信社は2017年3月29日、看護師のあなたにとってなんとも残念なニュースを、全国に配信しました。京都市内にある病院の療養介護事業所における出来事です。
入所している患者に看護師さんが、暴言を浴びせるなどした虐待行為が昨年来4件続いたとして、京都市が同事業所に対し障害者総合支援法に基づく改善勧告を出すとともに、新たな入所者の受け入れをこの先3か月間停止する行政処分を行ったというのです。

暴言を浴びせるなどの不適切な対応を指摘された看護師さんは、監査のために同事業所を訪れた市の職員からその言動の理由を聞かれると、「スタッフが足りず、忙しかった」と答えているとのことなのですが……。

現時点で、全国の看護職は優に160万人を超えると聞きます。
その大多数の方がたは、精神的にも肉体的にも決して楽とはいえない状況にありながら、それぞれの職場で、患者や入所者、あるいは在宅サービスの利用者一人ひとりの意に極力沿えるようにと、誠心誠意ご自分の務めを果たしておられます。

にもかかわらず、ひとたび今回のような報道が出ると、看護職全体への不信がまたたく間に広がってしまうことを思うと、なんとも悔やまれてなりません。

療養介護事業所で暮らすのは
医療的ケアが欠かせない患者

ところで、今回のニュースを見聞きして、現場である「療養介護事業所」を高齢者のための老健施設のような介護保険施設と早とちりし、「入所高齢者への虐待」として受け止めた看護師さんがもしいるとしたら、それは誤解です。

療養介護事業所は、2013年4月1日に施行された「障害者総合支援法」に基づく医療福祉施設です。そこでは、長期の入院による医療的ケアを必要としている患者が、常時介護を受けながら日常生活を送っています。
早い話が、患者にとってそこは、医療的ケアが受けられる入院施設であるとともに、福祉サービスが担保された生活施設でもあるということです。

ここに入所できるのは、障害の程度に一定の規定があるものの、おおむね筋委縮性側索硬化症(ALS)などにより気管切開を伴う人工呼吸器による呼吸管理を受けている患者や筋ジストロフィーなどの難病患者、あるいは重症心身障害者です。
いずれも医療的ケアが日々の生活に欠かせないことからいえば、「入所者」とか「利用者」ではなく、「患者」と呼ぶほうがより実像に近いのではないでしょうか。

いいケアができないのは
人手不足が原因でしょうか?

報道によれば、このような患者に対して、たとえば20代の女性看護師が、「いじめられたくなかったら黙ってよ」とか、「患者って立場を忘れんときや」「ホント、イライラするわ」と暴言を吐いているのが、音声記録で確認されたとのことです。
また、40代の男性看護師が、難病によりほぼ寝たきりの状態にある患者のナースコールを、約10分間、患者の手の届かないところに置いていたことが虐待と認定され、今回の処分の1理由となったとも報じています。

このような、患者に対する看護師ら医療スタッフによる虐待と捉えられる行為は、この事業所に限らず、程度の違いこそあれ、どの医療機関においても日常的に起こりうる倫理的問題の一つであるといわれています。

その防止策、解決策は看護管理者を中心に検討されているようですが、その過程で原因として必ず上がってくるのが「人手不足」という話だということをよく聞きます。
それも、「経営的な観点から、すぐに人員補充を確約してもらえないような状況が、どの病院でも慢性的に続いている」――。電話先でそう話してくれたのは、地方の総合病院で看護部長を務めて8年目になるというMさんです。

精神的な疲れを
看護師はため込まないで

そして、今回の報道を受けての感想をMさんはこんなふうに語ってくれました。
「患者への虐待とまではいかないものの、いいケアができないのは人手が足りなくて忙しすぎるから、などと結論しがちです。だけど、それは絶対に違うと私は思っているし、スタッフにも折に触れてそう話している」

「確かに忙しくてみんな疲れているけれども、その疲れていることやストレスになっていることを、それぞれが自分の中にため込まないことが大事だと思う。ため込んでしまうと、自分の感情をコントロールできなくなり、つい患者にきつくあたるなんてことになってしまう。だから、勤務状況から、あるいはその日の顔つきや発言などから気持ち的に疲れていそうなスタッフには、私から声をかけたり、話を聞いたりすることが、今の自分にできることだろうと考えて、日々それをこころがけている。甘いものを一緒に食べることもよくあるのよ」――。

確かに「甘いもの」、つまり糖分は脳のエネルギーになりますから、脳の疲労回復にはいちばんの良薬です。特にリラックス効果の期待できる「テアニン」を多量に含んでいる抹茶を使ったネスレ日本 キットカットミニ 濃い抹茶 は、私も友人や知人によくススメています。

患者をケアするように
看護師は自分自身もケアして

電話を介してMさんの話を聞きながら、私はあることを思い出していました。
もうかなり前のことになりますが、そのころ聖路加看護大学におられた南裕子先生をセルフケア理論について取材させていただいた折りのことです。
いったん話し終えたところで、「看護はきつい仕事で、みんなとても疲れている。だから看護師には心身ともにケアが必要なのよね。これもセルフケアということではとても大事なことで、それを怠っていると燃え尽きてしまう。だから、機会があったら記事にして」と話してくださったことがあります。

このことについては、精神看護専門看護師の平井元子さんも近著『リエゾン―身体(からだ)とこころをつなぐかかわり 』(仲村書林)の「看護師のこころを守る」の章で、「相手をケアするように自分自身もケアして」として、看護師さんにとっての心身両面のセルフケア、とりわけメンタルケアの大切さをアピールしておられます。

詳細は本を読んでいただくとして――。
看護師さんにおすすめしたい、セルフケアの一環としてのストレス対策については、これまでに以下の記事を書いてきましたので、参考にしていただけたらとても嬉しいです。