家族と会えない終末期患者にテレビ電話で面会を




タブレット

終末期患者にテレビ電話面会を
緩和ケア医有志がプロジェクト

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴い、感染経路を断つ目的で、緊急やむを得ない場合を除き、入院中の患者と家族や親しい人との面会を制限、あるいは全面的に中止する医療機関が多くなっています。

家族など大切な人と会えない状態が長引いてくると、とかく患者は不安やイライラが目立つなど、情緒的に不安定になりがちです。

こうした事態を防ごうと、緩和ケア病棟や小児科病棟を中心にスマートフォンやタブレット端末による「オンライン面会」に取り組む医療機関が出てきています。

そんななか、ウイルスに分断されて家族との面会が困難になっている終末期患者のために、タブレット端末を用いた家族面会の普及を目指す活動、「終末期医療の現場にテレビ電話面会を広めるプロジェクト」が進んでいるのをご存知でしょうか。

このプロジェクトを企画、運営しているのは、全国の緩和ケア医の有志で、発案者である東京・台東区にある永寿総合病院がん診療支援・緩和ケアセンター長の廣橋猛(ひろはしたけし)医師が代表を務めています。

テレビ電話面会用タブレットを
緩和ケア病棟などに寄贈

本プロジェクトは、面会の制限や中止により
「ご家族や大切な人と会えずつらい思いをされている方がいなくなる未来のために」
をモットーに、以下を活動内容としています(2020年5月21日現在の修正目標)。

⑴ 緩和ケア病棟へのタブレット端末寄贈(100施設への配布を目標)
⑵ 緩和ケア病棟以外で終末期医療を行っている「緩和ケアチームがある一般病院」と「看取りを行っている老人ホーム」へのタブレット端末寄贈(60施設への配布を目標)
⑶ テレビ電話での面会を実施しやすくするための仕組み・マニュアルを作成し、テレビ電話面会を普及させる
⑷ テレビ電話面会を実施する施設から聞き取り調査を行い、利点や限界に関する研究を行う
⑸ テレビ電話面会を支援する事業を継続的に行うための組織の運営

プロジェクトでは、タブレット端末などのテレビ電話による面会に必要な環境を整えるため、インターネットを介して人々から資金を募る「クラウドファンディング」を、当初は「6月30日までに300万円」を目標に掲げてスタートしました。

ところが目標額の300万円は、開始からわずか半日で達成でき、さらに5日目には、約80施設にタブレット端末を配布できる1000万円に到達できたそうです。

そこでプロジェクトは、「6月30日までに2000万円」とする新たな目標を設定。
タブレット端末を寄贈する施設についても、当初予定していた緩和ケア病棟のある20施設から、看取りを行っている老人ホームを加えた160施設にまで拡充しています。

大切な人の顔を見て話すことで
終末期患者の孤独の緩和を

ご存知のように、クラウドファンディングで多くの人から事業資金を集めるには、資金を集める目的、つまりその資金で「自分たちは何をしたいのか」「そのことはどのような意味を持つのか」を人々に明確に伝えて、賛同者を募る必要があります。

本プロジェクト代表の廣橋医師は、終末期の患者がテレビ電話で家族と面会できるタブレット端末を用意するための資金集めであることを説明したうえで、終末期患者にとってのテレビ電話による面会の必要性を、サイト上で次のように説明しています。

直接会えないのなら、せめて大切な人の顔を見て話すことで、終末期のつらさを抱える方々の孤独が緩和されるように――。

”会えないつらさ”はいつまで続くのでしょうか。
元気な私たちは、いつか会えるその日まで、辛抱すればいいのかもしれません。しかし、緩和ケア病棟に入院中の患者さんとその家族などの大切な人々には、その”いつか”が、もしかしたら来ないかもしれません。

このプロジェクトは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で面会が制限・中止されている緩和ケア病棟において、タブレット端末を用いた家族面会を普及させることにより、医療従事者だけでは取り除けない患者さんの「つらさ」を緩和するための挑戦です。

(引用元:コロナ禍で家族と会えない終末期医療の現場にテレビ電話面会を*¹)

また、「オンラインでの面会なら自前のスマートフォンを使ってできるのではないか」といった声があがることが想定されます。

これには、①緩和ケア病棟に入院する患者には高齢者が多いこと、②スマートフォンを持っていない人、あるいは持っていても上手に使えない人もいること、③スマートフォンの小さな画面では家族の顔をはっきり見て会話するのが難しいる人もいるとして、テレビ電話面会では「大きな画面のタブレットを使用する」と説明しています。

オンライン面会における
新型コロナウイルス感染対策

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い発令されていた緊急事態宣言は、5月25日、最初の発令から7週間ぶりに全面解除となりました。

宣言が解除されたとはいえ、これで出口が確実に見えてきたわけではありません。
収束に向けての「通過点」であることは、海外の多くの事例でも実証済みです。

気を緩めることなく、新型コロナウイルスの感染第2波、さらには第3波を見据えた感染対策が必要で、緩和ケア病棟などの医療機関のみならず老人ホームのような高齢者施設においても、この先しばらくは面会の制限や中止は続くものと思われます。

高齢者施設におけるオンライン面会に関し厚労省が通知

こうした事態を受け、高齢者施設で普及が進む利用者(入所者)と家族間のテレビ電話やビデオ通話によるオンラインでの面会について、厚生労働省老健局は、5月15日、都道府県・指定都市・中核市の介護保険担当部局宛てに、「高齢者施設等におけるオンラインでの面会の実施について」とする通知を発出しています*²。

この通知の中で「新型コロナウイルス感染対策の徹底」として、利用者(入所者)と家族双方に、それぞれ以下の留意点をあげ、注意を促しています。

この先緩和ケア病棟など医療機関においてテレビ電話によるオンライン面会を行う際にも、感染対策抜きにはできませんから、その参考にと思い、要約して紹介しておきます。

なお、タブレット類を消毒する際は、電子回路を内蔵していることを忘れずに安全面に注意し、操作の電源を切った状態で行うこと、塗装に影響があることを考え、消毒薬はタブレットなどの添付文書に従って使用することが必要です。

【利用者(患者)側】
▪タブレットやパソコン等の操作を行う場合には、使用するタブレット等の消毒のほか、利用者もスタッフも手指消毒を行う
▪飛沫感染防止のため、会話する利用者と補助役のスタッフは、1mほどの距離をとった横並びでディスプレイ画面に対面し、利用者もスタッフもマスクを着用する

【家族側】
▪施設内(病院内)の面会室などで、同席者がいる状態でオンライン面会を行う場合は、手指消毒に加え、飛沫感染防止のため、1mほどの距離をとって横並びでディスプレイ画面に対面し、マスクを着用する

隔離状態による閉塞感からの解放にVRの活用も

なお、感染対策としてほぼ「隔離」状態に置かれている患者(利用者)に対するインターネットを利用した緩和ケアとしては、バーチャルリアリティー(VR)装置を活用する方法もあります。詳しくはこちらの記事を読んでみてください。
→ 終末期緩和ケアにVRで疑似外出体験を

参考資料*¹:コロナ禍で家族と会えない終末期医療の現場にテレビ電話面会を
参考資料*²:高齢者施設等におけるオンラインでの面会の実施について