症状がコロナによく似た「結核」の集団感染発生




咳き込む

岡山市で結核の集団感染
家族と職場の濃厚接触者計6人

山陽新聞digitalによれば*¹、岡山市保健所は7月10日、市内在住の60代の女性が結核を発病し、この女性を発生源とする集団感染が発生したことを公表しています。

女性と接触のあった同居家族3人が発病し、職場関係者2人も無症状ながら感染が確認され、発生源の女性も含め6人とも入院や服薬治療を受けているとのこと。

6人とも治療により、症状のあった人は症状が治まり、排菌もしていないため、咳などにより結核菌を拡散させる状態にはなく、感染拡大の恐れはないと報じています。

今回発生源となった女性は、昨年9月ごろから咳が続いていたとのこと。
市内の医療機関で結核を診断されたのは今年4月でした。

医療機関から報告を受けた保健所が、直ちに濃厚接触者の健康診断を行い、5人の感染が判明したという経緯だったようです。

岡山県内における結核の集団感染は、2018年12月に岡山保健所とは別の保健所管内で発生して以来のことだと、記事は伝えています。

新型コロナウイルス感染症にすっかり気をとられていましたが、結核は過去の感染症ではなかったことを、この報道で改めて再認識させられた次第です。

神奈川県でも10人の集団感染
7月30日には、同県横須賀市内にある工場の職員10人が結核に感染し、うち4人が発症していたことが報じられている。いずれも治療を受けて快方に向かっており、さらなる感染拡大のリスクはないとのこと。長引く咳や発熱は早めの受診を。

新規感染者数は年々減少するも
依然として2類感染症

ご承知のように、結核(Tuberculosis:TB)は、結核菌により起こる感染症です。
国内では、予防接種や結核治療薬の進歩などにより、1947年をピークにその後は年々減少していることから、もはや過去の感染症にすぎないとして軽視されがちです。

ところが、厚生労働省の結核登録者情報調査年報集計結果によれば、2018年の1年間に、全国で15,590人の新規患者が発生し、そのうち2,204人が結核で死亡しています。

新規感染者数からも、また死亡者数からしても、現在、国を挙げて闘っている新型コロナウイルス感染症の比ではないのですが……。

結核が日本における最大級の感染症の1つであることに変わりはなく、重症急性呼吸器症候群(SARS)や鳥インフルエンザ(H5N1およびH7N9)、ジフテリアなどとともに、感染症法の2類感染症*に指定されています。

*2類感染症の感染症例(患者)には、都道府県知事が必要と認めた場合、第2種(第1種、特定)感染症指定医療機関への入院が勧告される。
併せて消毒等の措置がとられると同時に、食品製造等の特定業務への就業制限が行われる

国内新規結核患者の1割が
フィリピン等の外国出生者

一方、世界に目を向けると、毎年1,000万人が新たに結核(HIV合併結核を含む)を発病しています。そのうち死亡者は約160万人に上り、世界の死亡原因のトップ10に入っています。

世界各国、とりわけ「結核低蔓延国(けっかくていまんえんこく)」*における新規結核患者の発生状況を見ると、自国出生の結核患者は減少しているものの、外国出生の結核患者が増加していることを共通の傾向としてみてとることができます。
*結核低蔓延国とは、人口10万人あたりの活動性結核患者の発生数が10未満の国を言う。

これは日本についても言えることで、2018年の新規登録結核患者15,590人のうち外国出生の患者は1,667人でした。
これは全体の10.7%にあたります。

空気感染により濃厚接触者10~15人に感染を拡散

この外国出生の新規結核患者の出身国は、かつて圧倒的に多かったのはフィリピンと中国でした。
ところが、2018年の統計を見ると、多い順にフィリピン、ベトナム、中国、インドネシア、ネパール、ミャンマー、韓国、インド、タイと続いています。

いずれも、留学生あるいは労働者として在留資格を取得して国内で生活する外国人の出身国として上位にランクインする国々です*。

結核は、空気感染により人から人へと感染が拡大します。
とりわけ肺結核の患者は、咳やくしゃみをしたり、つばを吐いたりしたときに、空気中に結核菌をまき散らします。

その結核菌を少量でも吸い込めば感染し、感染後に結核を発症した人は、年間10人から15人の濃厚接触者に感染させる可能性がある考えられています。

フィリピンやベトナムなど上記の国々からの出身者が、結核の初期症状である咳、発熱、寝汗、体重減少、強い倦怠感などを訴えて医療機関を訪れた際は、新型コロナウイルス感染症とともに結核感染のリスクも念頭に入れて対応する必要がありそうです。

*在留外国人の入国前結核スクリーニング
政府は2020年3月より、入国後の日本在留中に診断された結核患者数の多い国(フィリピン、ベトナム、中国、インドネシア、ネパール、ミャンマー)の国籍を有し、在留期間が3か月以上の中長期在留者予定者に、入国前に結核スクリーニングを行い、結核に罹患していないことを証明できない人の入国を認めないことにしている。

結核にもある職業感染リスク
患者に接触し感染を疑ったら

新型コロナウイルス感染症同様、結核にも職業感染のリスクはあります。

感染リスクの観点から言えば、新型コロナウイルス感染症には、現在鋭意開発中ながら、予防可能なワクチンはまだ存在しません。
一方の結核は、ワクチンで予防可能な疾患、いわゆるVPDです。

VPDとは、Vaccine(ワクチン)、Preventable(予防可能な)、Diseases(疾患)の略です。
現在日本国内において、広く一般的にワクチン接種が行われているVPDは、B型肝炎、麻疹(はしか)、インフルエンザなど、驚くほど多く、結核もその一つです。

ただし、結核予防に使われるBCGワクチンは、重症化しやすい乳幼児(生後5か月~8か月)には価値があるものの、青年や成人になってからBCGワクチンを接種しても結核の感染予防効果は期待できないとされています。

とはいえ、私たち日本人は「子どもの頃にBCGを接種しているから大丈夫だろう」と考えたがちですが、さにあらず。BCGの効果は十数年しかもちません。

感染したかどうかはIGRA(イグラ)検査で

したがって予防対策としては、まずは日頃から、十分な睡眠、バランスのよい食事、適度な運動を心がけて免疫力の低下を防ぐことです。

加えて、結核患者と知らずに濃厚接触してしまい、「感染したかもしれない」と不安になったときは、いち早く専門医の診察・検査を受けることをおすすめします。

幸い最近は、結核感染のリスクが高いか、あるいは結核菌に感染しているかどうかを判断する診断法、IGRA(イグラ:インターフェロン-γ遊離)検査で「陰性」と出た場合は、発病を抑える目的で、発病予防薬(イソニアジド錠)の内服療法を、公費(無料)で受けることができるようになっています。

なお、結核対策についてはこちらの記事も参照してください。
→ 結核は過去の病気ではないと認識し対策の徹底を

参考資料*¹:山陽新聞digital 2020年7月10日配信