超少子高齢社会を生きる
高齢者は「極力自力」の生き方を
私たちの国は今、国民のおよそ5人に1人が75歳以上の後期高齢者という、まさに超高齢社会に突入しています。一方で、異例の超少子化の進行による若者の人口減少が著しく、医療や介護の現場では人手不足の深刻化が止まらない状況にあります。
「フレイル(虚弱)」という言葉があるように、人は誰でも年齢を重ねていけば、大なり小なり体力や気力が衰えて生活機能が低下していき、日常生活に介護などのサポートが必要な状態になってくるものです。
しかし、これからの超少子高齢社会を生きる高齢者は、他人の手助けを待つことなく、それぞれが自分の持てる力を十分に発揮してフレイルを予防、あるいは進行にブレーキをかけることにより、「極力自力」の生活を維持していく必要があります。
そこで、何かと高齢者に接する機会の多い看護や介護スタッフの皆さんには、入院、在宅の別なく、また介護認定の有無にも関係なく、高齢者個々の生活機能を維持していくための、いわゆる介護予防策として、「その人の持てる力を引き出して最大限に活かし、かつ高めていくかかわり」が求められています。
フレイルの兆候に早期に気づき
「持てる力」に着目を
ご承知のように「フレイル」は、海外の老年医学の領域で「身体がストレスに弱くなっている状態」を意味する言葉として使われている「Frailty(フレイルティ)」の日本語訳です。日本老年医学会は2014年、「加齢により心身が老い衰えた状態」を「フレイル」と呼ぶことを提唱しています。
具体的には、加齢に伴い足腰を中心に筋力が低下し始めて歩くのが困難になり(身体的要因)、自宅に閉じこもりがちで(社会的要因)、精神的にも気持ちが落ち込んで抑うつ的になっている(精神的要因)状態を言います。
このような状態は、日常生活の自立度が低下して日々の生活に他人の助けが必要になる、「要支援や要介護状態の前段階」とされています。
しかし、たとえばわずか5つの質問でフレイルを判定できるスケールなどを活用してフレイルの兆候にいち早く気づき、直ちに適切な支援を行えば、要支援や要介護の状態に陥ることなく、極力自力で、その人らしい生活を続けられることがわかっています。
この支援として看護や介護に求められるのが、高齢者個々の持てる力を把握し、その力を十分に活かし、かつより高めるようなかかわりというわけです。
「その人らしさ」も
「持てる力」として着目を
ところで、個人の「持てる力」を把握する方法は多々提案されていますが、とかく「食べる力」「排泄する力」……等々、個々の生活行動について「自分でできるかどうか」をチェックしてみることにエネルギーを注ぎがちではないでしょうか。
しかし、「その人の持てる力」に着目することの重要性を説いたナイチンゲールによるいくつかの著作を読んでみると、たとえば自力で食べることは難しくても、「何とかして自分で食べたい」という意思があれば、その思いをその人の持てる力として引き出し、活かせるようにかかわることこそ重要であると説いています。
看護や介護が大切にしている「その人らしさ」もまた、その人の価値観や人生観などを反映した「その人の持ち味」であり「強み」ですから、持てる力として着目してかかわる必要があるでしょう。
このように考えてみると、その人の持てる力を正しく把握するには、かかわる側の観察力のみならず、言語的・非言語的コミュニケーションを駆使した対話力も大きく問われていることに気づかされます。
「その人の持ち味を活かすサポート」の体験を
先に私は、このブログで何回か、全国のメッセンジャーナースの皆さんが、「極力自力」の精神で「精一杯、自分の持っている力を発揮して最期まで自分らしく生きたい」と望む高齢者の支援に取り組んでおられることを紹介してきました(たとえばこちら)。
併せて、その支援の在り方を模索するためのメッセンジャーナース認定協会/在宅看護研究センターLLP主催の体験セミナーなども紹介してきましたが、この5月には、「極力自力」サポートの秘訣体験と題して、「ケアの受け手の個性を大切に、その持ち味を活かすサポートを編み出す体験にチャレンジする」講習会が予定されています(こちら)。
超少子高齢社会の今まさに、ケアを提供する側に求められている高齢者の自立支援に関心のある方には、是非ともお勧めしたい講習会です。詳しくお知りになりたい方は、在宅看護研究センターLLPへメール(zaitakullp@e-nurse.ne.jp)、あるいは電話(03-5386-2427)で問い合わせてみてください。