ノロウイルス感染に厳重な警戒を!




カキ

ノロウイルスの流行と
牡蠣シーズンの因果関係は?

木枯らしが身に染みるようになってくると、牡蠣のシーズン。牡蠣は「海のミルク」と呼ばれるように、ミルク(牛乳)と大差なく栄養価が高いことで知られています。

低脂肪、高たんぱく質に加え、ビタミン類も、またカルシウムやマグネシウム、亜鉛といったミネラル類も豊富に含まれています。

とりわけ注目されるのは、ミネラルのなかでも鉄分が多いことです。
その含有量はホウレン草のほぼ2倍に相当することから、貧血、とりわけ鉄欠乏性貧血の方には見逃せない食材です。

ところが、ちょうどこの時期に流行期を迎えるノロウイルスによる感染性胃腸炎について、「牡蠣で感染する」との情報がメディアで盛んに取り上げられ、生牡蠣はもちろん、牡蠣グラタンや牡蠣鍋といった牡蠣料理まで敬遠されがちになるということがありました。

公衆衛生微生物学と水処理工学の観点からノロウイルス感染について研究を重ねておられる北海道大学の佐野大輔准教授によれば、確かにノロウイルスは、牡蠣のように左右に1対2枚の貝殻をもつ、いわゆる二枚貝の中から見つかることがよくあるのだそうです。

ノロウイルス感染症は、この、ノロウイルスに汚染された牡蠣などの二枚貝を食べることにより発症するケースが、確かに多いようです。

ただそれは、調理用牡蠣を生のまま、あるいは加熱が不十分な調理済み牡蠣を食べた場合の話。
牡蠣の肉の中央部分に90℃の熱がきちんと届く状態で、少なくとも90秒間加熱調理したものであれば、ノロウイルスは活性を失っていますから、食べても安全だといわれています。

ノロウイルス感染者の
糞便・吐物処理の徹底指導を

ところで、海水中に生息している牡蠣などの二枚貝がノロウイルスに汚染されるのは、当然ながら、その海水がノロウイルスに汚染されているからです。

ではその海水中のノロウイルスはいったいどこからやってきたのかという話になります。
ノロウイルスは、人間の小腸以外の場所では、感染したり増殖したりすることができないと考えられています。

ですから、私たち人間がおおもとの感染源なのです。
感染者が排泄するノロウイルスを含む糞便や吐物が、汚水となって下水管から下水処理場を経て川に放流され、海までたどり着いたということになります。

アルコールでは死滅しないノロウイルス

ご存知のように、現在、わが国の下水処理場ではかなり厳密な浄化処理が行われています。
その精度の高さは世界一といわれるほどです。

ところが、ノロウイルスには普通の細菌やウイルスにある脂肪の膜がないために、アルコールなどで消毒・殺菌しても、完全に死滅させることは難しいようです。

そのため、下水処理場の浄化プロセスをなんなくかいくぐり、生き残ったノロウイルスが、海に生息している牡蠣に取り込まれ、その牡蠣を食べた人間が、ノロウイルスによる感染性胃腸炎を起こす、といった図式になっているわけです。

この悪循環のサイクルを断ち切って感染を食い止めるには、ノロウイルスに感染した人の糞便や吐物の処理をきちんと行う必要があります。

この点において、感染した患者のケアを担う看護師さんや地域の公衆衛生を担っておられる保健師さんに重要な役割があるように思うのですがいかがでしょうか。

ノロウイルス対策の基本は
次亜塩素酸ナトリウムによる消毒

そこで、このノロウイルスに対する感染対策です。

国立感染症研究所感染症情報センターのホームページにある「ノロウイルス感染症とは」を見ると、「ノロウイルスの粒子は、胃液の酸度(pH 3)や飲料水に含まれる程度の低レベルの塩素には抵抗性を示す。また60℃程度の熱には抵抗性を示す」とあります。

ちなみに「飲料水に含まれる塩素」ですが、たとえば水道水の残留塩素濃度は、各家庭の蛇口(給水栓)で、1リットルあたり0.1㎎(0.1ppm)以上の濃度を保持していることが、水道法により義務づけられています。

以上のようなノロウイルス粒子の特性を踏まえると、その感染性を奪うには、「次亜塩素酸ナトリウムなどで消毒するか、85℃以上で少なくとも1分以上加熱する必要がある」となります。
ちなみに手近な次亜塩素酸ナトリウムとしては、キッチン泡ハイター が代表的です。

この原則のもと、感染源としてのリスクが高いノロウイルス感染者から排泄された糞便や吐物、またそれらで汚染されたおむつ類や寝衣、寝具などを処理する際は、その糞便や吐物の中に大量のウイルスが混在しており、感染源となりうることを考慮して取り扱う必要があります。

その具体的な方法は、厚生労働省のホームページ(コチラ)で詳しく紹介されていますので、是非参考にしてください。

なお、床などに落ちたまま放置されたノロウイルスは、乾燥すると容易に空中に舞い、これが口に入り感染することがあるようです。
つまり飛沫感染の可能性があるということです。

また、ノロウイルスの感染による嘔吐や下痢などの症状が消失した後も、数週間は糞便中へのノロウイルスの排出が続き、場合によっては1か月以上続くこともあるそうです。

このことも念頭に、ケアにあたられる看護師さんは、「症状が消失しているから」と安心することなく、石けんと流水による入念な手洗いを、どうぞ怠りなく。

保健所や都道府県から出される
感染症情報に敏感に

ノロウイルスなどによる「感染性胃腸炎」は、「感染症法」では、麻疹や梅毒、破傷風などと同じ5類感染症に分類されています。

流行状況を迅速に把握して蔓延化を防ぐ対策の第一歩として、あらかじめ指定されている医療機関で感染性胃腸炎の患者を診察した医師は最寄りの保健所へ届け出ることが求められる、いわゆる「定点把握感染症」に定められているのです。

この規制の下、11月2日(2020年)には消費者庁が、新型コロナウイルスやインフルエンザだけでなくノロウイルスも流行期を迎えたとして、注意喚起を発表しています。

飲食店や食品販売業者は、衛生管理やカキなど二枚貝の十分な加熱処理の徹底を、また消費者には、家庭や職場における手洗いや調理器具の消毒などを呼びかけています。

看護師さんや保健師さんは、最寄りの保健所や都道府県から出されるこのような情報をいち早くキャッチして、いち早く感染予防対策に着手されると同時に、食事をきちんととり、十分な睡眠を確保して免疫力を高め、感染から身を守ることをおすすめします。