看護職チームが作成した「医療事前指示書」




事前指示と看護

在宅での看取りは
死亡者全体の12.8%との発表だが

自宅で死を迎えた人は、全国平均で死亡者全体の12.8%――。
これは、
厚生労働省が今年(2016年)76日、2014年度の人口動態調査を基に市区町村別統計をまとめて公表したデータです。

詳しくみてみると、人口5万人以上の自治体では5.5%25.6%と、最大4.65倍の差があることが示されています。人口20万人以上の都市で比較しても、22.9%8.0%と地域間格差が大きいことがわかります。

このデータは、在宅における終末期ケアの環境整備に役立ててもらおうとのねらいで出されたものです。ところがこの報告されたデータに、訪問看護師ら在宅医療の関係者から疑問の声が上がっているようです。

というのは、この調査で「自宅死」としているもののなかには、在宅医が看取ったケースだけでなく、自殺や孤独死で死因がわからず警察扱いになった「異状死」、つまり「検案死」の事例も含まれているのです。
そのため、「在宅における看取り」の実態を正確に反映していない可能性があるというのが疑問とする理由のようです。

「死亡確認の看護師代行」
解禁に向けて万全の備えを

在宅における終末期ケアや看取りについては、「暮らしの場で穏やかに看取りたい」という家族や訪問看護師らの要望に必ずしも応えるものになっていないことがかねてから指摘されています。
その主な原因としては、「看取ることのできる訪問医」が絶対的に足りていないということがあります。

加えて、在宅死を看取ることのできる訪問医の数が絶対的に不足している状況にありながら、患者の死亡確認が依然として医師の独占業務になっています。
そのため、在宅で患者が亡くなっていてもその確認が、ときにスムーズに行われないことも大きく影響しているのです。

こうした現状を鑑みて、政府は2016年7月、医師による対面での死後診察がなくても死亡診断書の交付を条件付きで解禁する方針を固めました。
現在、この「条件」については、厚生労働省内で具体策の検討が進んでおり、2017年度中には実施される予定であることを先に記事にまとめました。読んでいただけましたでしょうか。

まだお読みになっていない方は、まずそのなかで明記している「5つの条件」を先に押さえたうえで、先に進んでいただいたほうがいいと思います。ちなみにその記事はこちらです。死亡診断の看護師代行」条件つきで解禁へ

まず求められる取り組みは
アドバンス・ケア・プランニング

こうした趨勢のなかにあって、訪問看護師をはじめ自宅での終末期ケアや看取りに立ち会う機会のある看護職のあなたには、在宅死における「死亡診断の看護師代行」が解禁されるときへの備えが求められることになります。

具体的には、先の記事で紹介した5条件のなかの2点目、「終末期の対応について、事前の取り決めがある。医師と看護師の十分な連携が取れており、患者や家族の同意がある」という条件が大切ではないでしょうか。これをクリアするために、アドバンス・ケア・プランニングの取組みをすでに始めておられる方も少なくないでしょう。まだという方のために、以下、ちょっとその紹介を……。

アドバンス・ケア・プランニングとは、「回復する見込みが亡くなった場合に、どのような治療を受け、どのような治療は受けたくないか」を患者本人が自らの考えをまとめ、さらに家族等とも話し合いをもって合意を取り付けていく取組みのことです。

終末期ケアのあり方を大きく左右するものですが、この取組みでは、たとえば「リビングウィル」のように本人だけの意思表示ではなく、家族等も含めて意思決定を行うことにより、双方が満足のいく死を迎えられることをねらいとしているわけです。

「私の終末期はこんなふうにしたい」
その希望を事前に書き留めておく

本人も家族等も穏やかな気持ちで最期を迎えられるということは、おそら誰もが理想とするところでしょう。しかしながら、事前に「死んでいくとき」について考えるのは、さほど簡単ではないことを、終末期ケアを経験している看護師さんなら重々承知しておられることと思います。
場合によっては、「生きているうちにそんな話をするなんて縁起でもない」という雰囲気にもなりかねません。

そこで、本人や家族がそのときを考え、話し合っていく道筋のようなものがあれば、さらにそれを書きとめておける文書があればということで、個々の病院や老人保健施設などで独自の「事前指示書」が作られていることはご存知でしょう。
ただそれらは一般向けに配布されたり、市販されているわけではありませんので簡単には入手しずらいはずです。

もしものときに希望する医療・ケアの
事前指示書を看護チームが本に

そんな方の助けになればと、まず『「私の四つのお願い」の書き方―医療のための事前指示書』(ワールドプランニング)が、次いで札幌市立大学大学院教授(看護学)のスーディ神崎和代さんら研究チームによる『医療事前指示書:私への医療・私の終末期はこうしてほしい(ナカニシ出版)を刊行されています。

患者自身が、自分がこの先受ける医療や終末期の処置やケアに対する要望を、意識や認知が清明なうちに事前指示として残しておき、尊厳あるかたちで人生を終えることができるようにとの意図で、最期の医療にかかわるさまざまな項目を列記しています。
本人の意思決定のみならず家族との話し合いにも使える内容となっているのです。

「死亡確認の看護師代行」解禁に向けた備えの一歩として、この書を先の5条件の一つ、「終末期の対応について、事前の取り決めがある。医師と看護師の十分な連携が取れており、患者や家族の同意がある」をクリアするために役立てるというのはいかがでしょうか。