がん治療中の食事で看護師が伝えたいこと




がんとたんぱく質

がん治療の効果を上げるには
「栄養バランスのよい食事」を

がん治療中の患者は、抗がん剤による化学療法であれ、放射線治療であれ、手術であれ、治療効果を上げるためは十分な栄養が絶対的に必要です。

そこで、がん治療前やがん治療中の患者には、
「毎食、バランスのよい食事を必要量摂るように心がけてください」
と指導されていると思います。
ただその際に、「バランスのよい食事」に、どのような食事をイメージしているでしょうか。

簡単にいえば、「バランスのよい食事」とは、いろいろな食品からいろいろな栄養素を過不足なく摂ることです。

栄養バランスを考えながら、たとえば「まごたち食」*として知られるようなバランスのとれた食事を摂るようにすればいいのですが、食事のたびにそれを誠実に守ることは、健康なときでもなかなかできることではありません。

ましてやがん治療中の患者にとって、バランスのよい食事を毎食摂りつづけることは、よほどの工夫をしないと難しいでしょう。
何よりも食事を摂ること自体が難しい状態にある場合が少なくないのですから。

*「まごたち食」とは、「まごたちわやさしい」、つまり
「豆類(ま)、ごま(ご)、卵(た)、乳製品(ちち)、わかめなどの海藻類(わ)、野菜類(や)、魚類(さ)、しいたけなどのきのこ類(し)、いも類(い)」
の9種類の食材をまんべんなく摂取するようにしていれば、食材選びで迷うことなく必要な栄養素をバランスよく摂ることができる。

がん治療中のたんぱく質摂取は、
「普段より5割増し」をすすめたい

がんそのものによりもともと食欲が低下しているところへ、治療の副作用などが加わり、さらに食事摂取量が減ってしまうことは珍しくありません。
この食べられない状態が長引くと、体力が低下してさらに食欲がなくなるという悪循環に陥りがちです。

たいていのがん患者がやせているのは、この悪循環にはまり、からだが必要としている栄養を十分に補給できていないからです。

この栄養不足状態がそのまま進めば、究極的には「がん悪液質と呼ばれる状態になり、もはや栄養療法による改善は期待できなくなってしまいます。

そこで、バランスのとれた食事を心がけることはもちろんですが、看護師さんとしては、少なくとも高たんぱく質、高カロリー、そしてビタミンとミネラルが豊富な食品を摂ることの大切さを伝えたいものです。

がん細胞による侵襲からの回復にはたんぱく質が必須

なかでもたんぱく質については、がん治療はがん細胞のみならず正常な細胞をも侵襲する可能性があることから、その修復、回復のために、ふだんのせめて5割増し、理想としては10割増しが理想とされています
早い話が、通常の2倍の量にあたるたんぱく質を摂るように勧めるといいでしょう。

なお、このところ糖質制限ということがメディアなどで盛んに取りあげられています。
そのため、米飯やパン類などの糖質を摂らない、あるいは極力減らす傾向があります。

しかし、糖質の摂取量が少なすぎると、たんぱく質が分解されてエネルギー源として使われてしまい、たんぱく質本来の機能が奪われることになってしまいます。
がん患者には、その辺のことも看護師さんから伝えていただけたらと思います。

詳しくは、日本がん看護学会がまとめた『がん治療と食事: 治療中の食べるよろこびを支える援助 (がん看護実践ガイド)』(医学書院)が参考になります。

がん治療中の栄養状態は
血清アルブミン値の「変動」を指標に

がん治療中の患者の食事については、高たんぱく食の是非をめぐって議論があるようです。
とりわけ「肉などの動物性たんぱく質の摂取」をめぐり、「積極的に食べた方がいい」とする意見がある一方で、「避けるべきだ」との反論も聞かれます。

一口に「がん治療中の患者」といっても、その栄養代謝を中心とする病態の変化は患者個々で微妙に異なり、文字どおり千差万別ですから、この議論に正解はないと言っていいでしょう

ただ、少なくとも「低栄養状態を改善して自己免疫力を高める」観点からいえば、肉類の動物性たんぱく質は欠かせないでしょう。

がん治療中に限らず、患者の栄養状態を看護師さんは、定期的な体重測定や血液検査による血清アルブミン値(Alb)などを調べて評価していると思います。
それらの値を、基準値との比較ではなくその患者の変動としてチェックし、その変動に合わせて微調整をしながら、たんぱく質とカロリーの高い食事を摂るように工夫したいものです。

なお、看護師さんには釈迦に説法ですが、高たんぱく食を推し進める際には、たんぱく食の摂取量が増えるとその代謝産物を排泄するために、腎臓に過分な負担がかかります。
この点を考え、事前に患者の腎機能をチェックしておくことをお忘れなく。

がん治療中の患者個々のレシピは
管理栄養士との連携のもとに指導を

高たんぱく食には肉類、魚類、卵、牛乳やチーズなどの乳製品が特に有効であることはよく知られています。
いずれも動物性食品ですが、最近注目されている植物性たんぱく質、つまり大豆などの豆類や豆腐、納豆といった大豆製品、さらにはバナナやアボカドなど一部の果物類にも、必須アミノ酸が豊富で栄養価の高いたんぱく質が多く含まれています。

がん患者には動物性と植物性両方のたんぱく質をバランスよく摂ることで、脂肪を低く抑える効果が期待できることも伝えたいもの。
そのバランスとしては、動物性・植物性が1対1となるのが理想的だと考えられています。

幸い最近は、豆腐や納豆以外にも、野菜に大豆をおからまで丸ごと使ってブレンドしたカゴメ野菜生活Soy+(ソイプラス)やおやつで手軽に植物たんぱく質をとってもらえるように商品化されたというビスケットギンビス アスパラガスプロテイン グリコ 植物生まれのBigプッチンプリン など、植物性たんぱく質がとれる食品が数多く市販されていますから、上手に活用するよう話してみるといいでしょう。

また、食が進まないときは、患者の嗜好に合わせてアペリティフ、つまり食前酒としてワインやビールなどを使うことも、主治医と相談してみるといいでしょう。

最近はチーム医療の普及に伴い、「食事に関することは栄養士さんに」とすべてバトンタッチしてしまう看護師さんが少なくないようです。
確かに具体的なレシピなどは、託してもいいとは思いますが……。

『がん治療中の食事サポートブック2018』の活用を

ところが、胃がんで入院した経験を持つ友人によると、「栄養士さんはめったに病室に来てくれないし、栄養相談も予約制で、疑問に思うことがあってもなかなかすぐには答えてもらえない」のが実情とのこと。

やはり食事についても基本となるポイントは「自分の病気や治療のこと、さらには日々の生活や家族構成などもよく知ってくれている看護師さんに託したい」というのが、患者サイドの正直な希望のようです。

最近は少量で効率よくたんぱく質やビタミン・ミネラル類を補給できる栄養補助食品が各種出回っています。この種の具体的な情報に関しては、がん研究振興財団が広報活動事業の一環として『がん治療中の食事サポートブック2018』(ダウンロード可)のような小冊子を刊行していますので、患者指導に活用されたらいかがでしょうか。