看護師の慢性腰痛に認知行動療法を!




慢性疼痛と認知

ストレス関与が疑われる
慢性腰痛が看護師に多い

つらい腰痛で悩んでいる看護師さんのなかには、「整形外科を受診したが、原因と考えられる骨などの異常はないといわれた」「鎮痛薬などの治療を受けているが痛みはいっこうに治まらない」という方が少なくないのではないでしょうか。

このような原因がはっきりしない腰痛が、症状を自覚し始めてすでに3か月以上、絶えることなく続いている場合は、一般に「慢性腰痛」と診断されます。

そしてこの、原因不明の慢性腰痛には、大なり小なり心理的・社会的ストレスが関係していて、そのストレスの存在が痛みの改善を遅らせている、と考えられています。

この考えのもと、最近では、ストレスが関係していると考えられる慢性腰痛の治療に、「認知行動療法」と呼ばれる精神・心理療法が取り入れられるようになってきました。

先にまとめたコチラの記事のなかで、腰痛緩和のために3つの提案をさせていただいていますが、そのなかの1つ、「楽しんでできる方法でからだを動かす時間をもつ」ことが認知行動療法に基づくアプローチです。

腰痛は看護師の職業病だといわれる。看護師の半数以上は腰痛を抱えているとの調査結果もある。だからといって諦めず、腰痛を緩和して患者の前に立っていただきたい。そんな思いから、個人レベルでできる腰痛対策3点と、認知行動療法による緩和策をまとめた。

「すべて慢性腰痛のせい」と
ネガティブ思考に陥っていないか

看護師のあなたなら、認知行動療法がうつ病や適応障害などの精神・心理療法として広く普及していることはすでにご存じだろうと思います。

具体的な行動を通してその人の認知、つまり現実の受けとめ方やものの見方、考え方に働きかけ、その癖のようなものを軌道修正することを通して、ストレスの軽減を図り、気持ちを楽にしていこうという治療的アプローチです。

長引く慢性腰痛のつらさに辟易しているあなたは、たとえば「腰痛のせいで患者さんのケアに集中できない」とか、「腰痛があるからやりたいこともできない」「腰痛がなかったらもっと楽しい人生になるのに」などと、腰痛があることを理由にすべてをネガティブにとらえてしまっているようなことはないでしょうか。

私たちの脳にはもともと、痛みの緩和に関する情報伝達に深くかかわっている神経伝達物質を分泌する機能が備わっています。
ポジティブなことを考えると、この物質、通称「幸せホルモン」が分泌されて痛みを和らげてくれるのですが、ネガティブ思考に陥っているとこの分泌が滞り、腰痛が少しもよくならずに自分を苦しめていることはよくあります。

そうだとしたら、このネガティブな思考に働きかけて、そこから抜け出す手助けをしようというのが、認知行動療法と呼ばれるアプローチです。

四六時中腰痛のことばかり考えている状態から、何か別の、あなた自身が興味のもてることを、実際にからだを動かしてやってみる――。
その行動を通して、考え方や受けとめ方をポジティブな方向に変えていくことで、ストレスを上手にコントロールしていこうというわけです。

認知行動療法の第一歩として
リエゾン精神看護専門看護師に相談を

認知行動療法は、まずあなた自身の認知の枠組み、つまりものの考え方や感じ方、受けとめ方の傾向、あるいは癖のようなものを、問診やアンケートを通して明らかにしていくことからスタートすることになります。

そこでは、「慢性腰痛が自分の日々の生活にどのような影響をもたらしているのか」といったことを考え、そこで思いつくことを口に出してみるといいようです。

その聞き手としては、認知行動療法に精通した精神科医や心療内科医、臨床心理士、カウンセラーなどがあげられます。
また、最近はストレスの関与が疑われる疾患が多く、ストレスとして受けとめてしまう認知の部分にかかわらないことには治療効果が期待できない患者が増えている趨勢から、内科医や小児科医なども認知療法をマスターするようになっているようです。

加えて、先に、看護師さんのメンタルヘルス支援の担い手として「リエゾン精神看護専門看護師の手を借りては?」という記事を書きましたが、この精神看護専門看護師のみなさんも、専門の教育課程で治療法の1つとして認知行動療法を必ず学んでいるはず。

ですから、まずは身近にいるリエゾン精神看護専門看護師に相談してみることです。
そのうえで必要に応じて精神科医や心理カウンセラーなどを紹介してもらうというのがいいのではないでしょうか。

看護をしていると、患者のこころのケアに行きづまったり同僚や医療チームにおける人間関係に問題を抱えたりと、メンタル面のケアに悩むことがあるのでは? そんなときはコンサルテーション手法による精神看護専門看護師やリエゾンナースの手を借りては……。

ものの見方や現実の受けとめ方は
簡単には変えられないが……

認知行動療法については、メンタル面の問題へのアプローチ法といったイメージが強いこともあり、自らの慢性腰痛の治療法として受けとめ、取り入れていくことに多少の抵抗感を覚える方も少なくないと思います。

そんな抵抗感から「私はうつ病ではないからそんな治療法は……」などと考えているあなたも、嫌っていないで認知行動療法を試してみることをお勧めします。

すでに身についているものの見方や現実の受けとめ方を変えることは、そう簡単にできることではありません。簡単に変えられないから人は悩み、ストレスに感じたりするわけです。

しかし、一度認知行動療法に触れてみることで、少なくとも「今の自分はどうも腰痛にこだわりすぎているようだ」といった程度の気づきさえ持つことができれば、改善に向けた一歩を踏み出せたと考えていいようです。

認知行動療法的アプローチを
自己学習して慢性腰痛の改善を

慢性腰痛対策として本気で認知行動療法に取り組んでみたいという方には、トレーニング用のワークブック『慢性疼痛の治療:患者さん用ワークブック-認知行動療法アプローチによる‐』(星和書店)がありますから、是非活用してみてください。

このワークブックにある11のセッションの一つひとつを自分で学び、実行していくことにより、自らの考え方や受けとめ方の癖のようなものに気づき、考え方や物事のとらえ方を少しづつでも変えていくわけです。

この学習を積み重ねていくうちに、「すべて腰痛のため」と考えがちだった思考に少しずつ変化が現れ、慢性腰痛の改善に効果をもたらしてくれるはずです。

もう1点、2017年1月に認知行動療法の第一人者である精神科医の大野裕氏と産業医の田中克俊氏の共著により、精神面だけでなく食事や睡眠の面にもふれて、認知行動療法をかなり具体的かつ実践的に解説した『保健、医療、福祉、教育にいかす 簡易型認知行動療法実践マニュアル』(きずな出版)が刊行されています。
ご自分に合いそうなものを選んで、日々の生活に取り入れてはいかがでしょうか。