「公認心理師」誕生へ、看護師との連携は?




こころのケア

こころを読み解く専門職として
「公認心理師」誕生へ

看護師のあなたは日々看護するなかで、たとえば患者や家族とのコミュニケーションに行きづまりを感じることはないでしょうか。あるいは、「この患者にはどうもうまくかかわれない」と悩むことも少なからずあるでしょう。

そんなときの頼もしい助っ人として、リエゾン精神看護専門看護師が活躍していることは、先に記事としてまとめました。ぜひ目を通してみてください。

看護をしていると、患者のこころのケアに行きづまったり同僚や医療チームにおける人間関係に問題を抱えたりと、メンタル面のケアに悩むことがあるのでは? そんなときはコンサルテーション手法による精神看護専門看護師やリエゾンナースの手を借りては……。

リエゾン精神看護専門看護師は、ベースに看護がありますから、看護のコンサルテーションという方法を用いて、精神面からの理解を深めて患者や家族に看護師としてかかわっていく手助けをしてくれています。

そこに新たに、こころを読み解くコミュニケーションの専門職が、こころのケアにかかわる医療チームの一員として加わってくることになりました。

公認心理師が
こころのケアを望む声に応える

20159月9日に「公認心理師法」が成立し、国家資格の心理職として「公認心理師」の創設が決まったことはご存知でしょう。

医療現場ではこれまでも、臨床心理士に代表される心理職の方々がさまざまな活動をしてきました。その活動を展開するなかで、彼らはチームを組んで働く医師や看護師等と同じように国家資格化されることを待ち望んでいました。
その長年の夢がやっとかなうことになったというわけです。

国家資格の心理職を待ち望むのは当事者だけではありません。
最近のニュース報道は、これまではあまりなかったような凶悪な事件や虐待事案などを連日のように伝えています。覚せい剤など薬物の違法使用で逮捕される事件も、後を絶ちません。

医療現場を見ても、さまざまな対策を講じてはいるものの、いまだ院内暴力はなくなっていません。在宅ケアの現場でも、先に記事にしたように、ほぼ半数の訪問看護師さんが患者・家族からの暴言・暴力に悩んでいるという実態があります。

需要が高まる訪問看護について残念な報道があった。訪問看護師の50%が訪問先で暴力や暴言の被害を経験しているというのだ。暴言や暴力は利用者だけでなく家族や親族によるものもあり、その内容はかなりシビアだ。密室性が高い場所だけに、対策が急がれる。

こうした事態の背景を見ると、そこには、こころを病んでいる、あるいは病んでいないまでも他者とうまく関係をもてない人の存在に気づかされることが多いように思います。
彼らはこころのケアを必要としていながらそれを受けられずにいたようです。

そこで、深刻化するこころの問題に対応できる社会的な仕組みづくりを進めるなかで、その要となることを期待して、公認心理師が創設されたといっていいでしょう。

心理の専門知識・技術を
フルに活用してこころを読む

公認心理師の活動の場は、医療現場だけではありません。「公認心理師法」の第2条には、「保健医療、福祉、教育その他の分野において」とあり、司法、矯正、労働・産業、学術・研究など、非常に広範囲の領域における活動が想定されています。

公認心理師には、心理学に関する専門的な知識および「心理検査」「カウンセリング」「心理療法」「心理的支援」「心理教育」等の専門的技術を生かして、以下の業務を行うことが期待されています(「公認心理師法」第2条による)。

  1.   心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析する
  2.   心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行う
  3.   心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導、その他の援助を行う等
  4.   こころの健康に関する知識の普及を図るための教育および情報の提供を行う

公認心理師国家試験の受験資格は、現時点では、大学と大学院で心理系の指定科目を履修した人や、大学で指定科目を修めたのち、一定期間の実務経験を積んだ人あるいは研修を受けた人。加えて、現在心理職として働いている人も、所定の要件を満たせば法律施行後の5年間は経過措置として受験することができるとされています。
詳しくは、『あたらしいこころの国家資格「公認心理師」になるには ’18~’19年版』(秀和システム)が参考になります。

2018年に実施された第1回公認心理師国家試験は、北海道胆振東部地震の被災状況を踏まえて9月9日と12月16日の2回に分けて行われ、トータルの受験者数36,103人で、うち合格者は28,574人、合格率は79.1%となっています。
(資料:日本心理研修センターホームページ

医療知識の面で課題は残るが……

公認心理師の教育カリキュラムや受験資格にある指定科目、また何をもって実務経験と認めるかなどの具体的なことは、『第1巻 公認心理師の職責 (公認心理師の基礎と実践)』(遠見書房)などを参照していただくとして、彼らが医療現場にやってきたときのことをちょっと考えてみたいと思います。

公認心理師は、人の心理、つまり「人のこころの動きやこころのありよう」を読みとることに精通しています。その知識をベースにしたコミュニケーションスキルに長けているでしょうから、対人援助という点で優れていることは想像に難くありません。

ただ、こと医療現場ということになると、そこで活動する以上は医療の知識が不可欠です。
公認心理師の教育カリキュラムにそれを盛り込もむ案もあるようですが、現時点では、その知識を持ち合わせないまま医療現場に参入してくることになりそうです。

公認心理師と連携して
患者のこころに入り込む

したがって課題は残りますが、医療現場において彼らだからこそ果たせる役割のひとつは、質の高いコミュニケーションを通して、患者のこころに入り込み、そこあるしこりのようなものを溶かしていくことだろうと思います。

さらにその、患者とのコミュニケーションを通して気づいたこと、たとえばこだわっていることや性格、受けとめ方の癖などを、担当医師や看護師等に伝えることにより、いわゆる「問題のある患者」と「うまくかかわれない」という問題をクリアしていくことに貢献することも、彼らに期待される大切な役割になってくるんだろうと考えます。

幸い、実際に彼らがあなたの職場にやってくるまでには、まだ少し時間があります。
それまでに、その辺のことを踏まえて、彼らとどう連携していくのが患者のQOL向上につながるのかを、看護チームで話し合っておくといいように思います。

同時に、看護現場を取材していると、臨床経験を積むなかで、患者にかかわっていくには、「人間のこころと身体の相関について理解を深めたい」とか「心理についてきちんと学びたい」などと考えておられる看護師さんによく出会います。

そんな方には、その需要に応える通信制の講座や大学・大学院がありますから、『働きながら学べる社会人大学院・通信制大学』(中央経済社)を参考に本気で検討されてはどうかとお勧めしています。私の提案を受けて実際に行動を起こし、ステップアップした看護を実践されている方をずいぶん存じ上げています。

患者とのかかわりを一層深めたいと考えているものの、大学や大学院で学ぶのは時間的に厳しいとおしゃる方は、180日を目途に集中して学べる通信講座もあります。検討してみてはいかがでしょうか。