不審者や暴力行為から患者を守る、自らも守る




暴力

不審者や暴力に
即座に対応できるように

数日前、都内の某クリニック専用駐車場で、クリニックの男性職員が、男にいきなり背後から首2か所を刃物のようなもので刺されるというショッキングな事件が起きました。

刺された男性は直ちに救急搬送され、意識もあり命に別条はなかったとのこと。
この報に、不幸中の幸いといっとき安堵はしたものの、ひと月ほど前にも医療機関で刃物を持った患者による同じような事件が起きていたことを思い出し、思わずぞっとしました。

折しも、徳島県鳴門市にある県鳴門病院において、鳴門署による防犯講習会が開かれたことが新聞*で取り上げられていました。
*徳島新聞2019年10月23日

院内の看護師や事務スタッフら90人ほどが参加して、暴力的な患者への対応や不審者に襲われた際の対処法について学んだとのこと。

「いざというときに生かせるよう、普段から意識しておきたい」といった中井幾美看護師のコメントも紹介されていました。

不審者・暴力対策として
護身術を身に着けておこう

医療機関内における不審者・暴力対策については、多くの医療機関が独自に対応マニュアルを作成するなどして、対策を講じていることと思います。

しかし、「不審者に声をかけたらいきなり襲いかかってきた」とか「夜勤を終えての帰り道、いきなり背後から抱きつかれた」といったまさかの時に身を守る方法、いわゆる護身術の訓練まで実践している医療機関はまだまだ少ないようです。

先の新聞記事によれば、徳島県鳴門病院の防犯講習会は最寄りの警察の協力を得て行われたようですが、鳴門署に限らず、全国の警察署は、防犯対策に力を入れています。

その一環として、どこの警察署も、防犯講習会や防犯教室を定期的に開催しています。
そこでは、自身の身を守るための実技指導や被害に遭わないために日頃から気をつけたいポイントなどを伝授してくれるそうです。
看護師さんもこの防犯教室を個人で受講してみてはいかがでしょうか。

■警察官による出張防犯講習会開催を
あるいは、防犯対策担当の警察官数人を派遣して行う出前スタイルの講習会も、要請があれば随時対応してくれているようです。

たとえば、最も基本的な膝蹴りのときの力の入れ方や手首をつかまれたときのいなし方、あるいはナイフを突きつけられたときに手持ちのバッグで身を防ぐ方法など、簡単な護身術でも、一度コツを覚えておくと、普段の生活に何かと心強いものです(これ、私の体験談です)。

病院として、あるいは看護部として講習会の開催を検討している方は、管轄の警察署の生活安全課などに電話して相談をしてみてください。
簡単な書類の提出を求められると思いますが、要請には必ず応えてくれるはずです。

■サスマタなど防犯器具の活用法も
診療科によっては、病気そのもの、あるいは薬物などが原因で突然暴れ出したり暴力的になったりする患者もいるでしょう。

そんなときに、刺又(サスマタ)などの防犯グッズを活用して対処する方法なども指導してもらえるようです。また、警察署の通信指令室に直通でSOSが伝わる非常通報装置の設置などについても相談に乗ってもらえます。

また、夜勤の行き帰りなどはどうしても夜道を一人で歩くことになるでしょうから、道の選び方や歩き方、持っていると安心な防犯グッズなど、日頃個人的に気になっていることを相談してみるのもいいと思います。

コストはかかりますが、SECOMやASLOKといった民間の警備会社と病院などが提携している場合は、そちらの防犯教室などのサービスを活用してみるのもいいでしょう。

すぐに不審者と決めつけず
必ず2人1組で冷静に対応する

ところで「不審者」と聞いてどのような人をイメージするでしょうか。
挙動不審な人、つまり「キョロキョロしている人」「目を合わせようとしない人」「立ち居振る舞いが怪しげな人」等々、いろいろあげられると思いますが、行き着くところ「知らない人」「普段見かけない人」となるのではないでしょうか。

ところが、医療機関にあっては、外来にしても病棟にしても、初診の患者や見舞いに訪れた患者家族や友人、あるいは新人の出入り業者など、この「知らない人」「普段見かけない人」だらけではないでしょうか。

ですから、「普段見かけないから」とか「立ち居振る舞いが怪しげだから」といった理由だけで、見かけた人を即不審者と決めつけて対応を誤ると、人権侵害のそしりを免れず、思わぬトラブルに発展するおそれさえあります。

■不審な人への対応に医療メディエーターの応援も
不審に思う人を見かけたら、「何かお困りですか?」「どなたをお尋ねでしょうか?」とさりげなく声をかけるなどして、相手に不快感を与えない注意が必要でしょう。

その際の対応は、最低でも2人1組で、1人は声掛けを、もう1人は少し離れたところからその様子を見守り、不測の事態に備えるといった冷静な対応を心がけたいものです。

そのうえで、仮に話がこじれたりするようなことになったら、医療メディエーターなどに応援に駆け付けてもらう体制が整備されていれば、なお安心でしょう。

社会問題になっている職場におけるハラスメントは医療現場も例外ではなく、多くの看護職が被害者と聞く。対話不足が主因なら、医療現場で最近力を入れている医療メディエーション、つまり「対話による関係構築」の手法をハラスメント対策に活用してはどうかと考えた。