看護師も「薬の飲み合わせリスク」に注意を




たくさんの薬

睡眠薬服用後に
クルマを運転したお笑い芸人

あるお笑い芸人が、睡眠薬を服用した直後にクルマを運転し、危うく事故を起こすところだった、とのニュースが流れました。
ことが起きたのは、6月14日の午前2時過ぎ(2017年)です。

その翌日記者会見を開いたその芸人の話によれば、1か月ほど前からアレルギー症状に悩まされていて、1週間にほぼ1回の間隔で、医療機関に通院していたそうです。
事故を起こしかけた日の前日も受診しています。

その際、彼は担当医に「からだが痒くて眠れない」と訴え、3種類の薬の処方を受けたとのこと。その時処方医からは、「クルマを運転する前にこの薬を服用するのは控えるように、という話があった」と、彼は話しています。

こうした忠告を受けていたにもかかわらず、処方を受けた当日の深夜、自宅付近のサウナにクルマで行き、サウナから上がったその場で、牛乳と一緒に処方薬を服用し、そのままクルマを運転して自宅に向かっています。

そして、午前2時ごろ、東京都内の路上で、路肩に少し乗り上げた状態で停車中の車内において、意識がもうろうとした状態で運転席に座っているところを発見されます。
その後、救急搬送先で受けた尿検査で睡眠薬が検出され、警察の事情聴取を受けた、というのが大方の経緯のようです。

処方された3種類の薬
その内訳を知って気づくこと

この報道にふれ、「大事にならずにすんでよかった」と胸をなで下ろすと同時に、「その処方されたという3種類の薬はどんな薬だったのかしら」と、関心をもたれたことでしょう。
この点については所属事務所が、服用したのは以下の処方薬であったことを明らかにしています。ご承知のように、1と2は睡眠薬で、3は抗アレルギー薬です。

  1. ベルソムラ錠20mg(一般名:スポレキサント)1回1錠
  2. レンドルミンD錠0.25mg(一般名:ブロチゾラム)1回1錠
  3. アレジオン錠20(一般名:エピナスチン塩酸塩)1回2錠

睡眠薬については、ストレス社会と相まって、近年処方量が増加傾向にあることから、2014年に厚生労働科学研究班と日本睡眠学会の睡眠薬使用ガイドライン作成ワーキンググループが、睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(じほう)をまとめています。
それによると、1も2も短時間作用型の睡眠薬に分類されています。そのため個々の添付文書には、「就寝直前に服用すること」との注意書きがあります。

一方の抗アレルギー薬である「アレジオン錠20」は、彼が訴えている皮膚の掻痒感以外にも、花粉症や鼻アレルギーなどに処方されることの多い薬剤です。
同じ抗アレルギー薬でもヒスタミン系のものに比べると、服用後に眠くなりにくいタイプといわれています。それでもその添付文書を見ると、「眠気を催すことがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に注意させる」と明記してあります。

「運転する前には服用しない」ことを承知していた?

こうした点を踏まえ、本人は処方箋を受け取る際に医師から、クルマを運転する前の服用は控えるように指導を受けていました。医師だけでなく、調剤薬局で処方薬を受け取る際に薬剤師からも、同じ注意が伝えられていたようです。
にもかかわらず、クルマを運転して自宅へ帰ることがわかっていながらなぜ処方薬を飲んでしまったのでしょうか。

記者会見の場で、集まった記者からこの点を聞かれた彼は、「インターネットで調べたら、薬が効くまで少し時間があると書いてあった」「サウナから家までは、クルマで10分もかからないから大丈夫だと思った」などと答えています。

看護師さんら医療スタッフにとっては、「睡眠薬や眠気を催す副作用があるような薬を服用したらクルマの運転はしない」というのは、おそらく常識レベルのことでしょう。
しかし、一般の方には、よほど具体的なかたちで、正しく理解し、納得できているかどうかを双方向のやりとりで確認しながら伝えないと、なかなか理解が得られないものなのだということを、このケースは伝えてくれているのではないでしょうか。

看護師も知っておきたい
薬の飲み合わせ・食べ合わせリスク

今回のケースでもう1点、気になったことがあります。
この芸人さんが、「牛乳で薬を飲んだ」と話していることです。

かなり前のことですが、ウイークデーの午後の時間帯だけ病棟に配置されている臨床薬剤師の方を取材させていただいたことがあります。テーマは、与薬業務において同じ病棟の看護師さんとどのように協働、連携しているのか、という内容だったと記憶しています。

そのときに、「食事の時間帯に病棟をラウンドしてみて驚いたことがある」と話してくれたのが、牛乳で内服薬を服用している患者のことでした。
そのときは確か外科病棟で、術後の患者さんが看護師さんから渡された抗生物質を牛乳で飲もうとしているのをたまたま目撃し、ストップをかけたという話でした。

「一部の抗生物質には、牛乳や乳製品と一緒に飲むと、胃の中で吸収を阻害して、もともとの効果を下げてしまうから……」と聞かされたことを思い出し、「睡眠薬と牛乳の相性はどうだったかしら」と思った次第です。薬は水か白湯で飲むのが当たり前と思い込み確認を怠っていると、意外な落とし穴がありそうです。

複数の薬の相互作用、食品との組み合わせの指導を

複数の薬を同時に服用して起こる相互作用は、処方医の細心の注意によりある程度防ぐことができます。最近増えている高齢患者は、いくつもの診療科にかかっています。その場合は、調剤薬局が配布している「お薬手帳」を活用することで、相互作用の弊害を防ぐことができるでしょう。

2016(平成28)年4月からは、紙タイプ同様の「電子お薬手帳」も使用できるようになっています。日本薬剤師会が提供している無料アプリ「eお薬手帳」、あるいは全国展開している調剤薬局チェーンの日本調剤による「お薬手帳プラス」などがその代表です。

ただし、牛乳の例のように、飲食物と薬の飲み合わせ、食べ合わせにより、薬の効果が下がってしまう例もあれば、逆に作用が必要以上に強まるというリスクもあります。
たとえば抗凝固剤のワーファリンを服用している患者は、ビタミンKの含有量が多い納豆、クロレラ、青汁は禁忌で、緑黄色野菜や海藻類も控えた方がいい、ということは看護師さんならご存知のことと思います。

このような薬の飲み合わせ、食べ合わせのリスクについて書かれた専門書としては、改定されて間もない『新版 薬の相互作用としくみ』(日経BP社)に詳しく書かれていますから、やはり看護師さんにはこちらがおすすめです。
その付録E「飲食物・嗜好品(21品目)と薬の相互作用」のなかには「牛乳と・乳製品と同時摂取を避けるべき薬剤」の一覧表もあってとても参考になります。

また、薬に関する情報を把握するには、2018年9月の段階で、病院で使用されている保険薬(内服薬・外用薬)約1万3771薬品について薬の説明や副作用、使用上の注意点に関する最新データが収載されているソフト『くすり55検索2019 』(オフィス・トゥエンティワン)が便利です。一般向けにできていますので、患者に説明する際にも、専門用語を使わずにそのままの表現で伝えられますから、活用してみてはいかがでしょうか。