「健康食品」について知っておきたいこと

スムージー
「紅麹(べにこうじ)」を配合したサプリメントによる健康被害の報告が相次いでいます。日本製のサプリメントで初めて死者が出たとの報には驚かされます。機能性表示食品や特定保健用食品(トクホ)などの、サプリメントを含むいわゆる健康食品の利用法を改めて見直す必要がありそうです。

法律上の定義・基準がない
いわゆる「健康食品」

最近特に、テレビや雑誌、新聞などのCM欄で「健康食品」とか「サプリメント」という言葉を目にしない日はありません。

テレビの健康関連番組などでは、「〇〇によく効く健康食品」などといったタイトルをしばしば見かけたりもします。ただ、「健康食品」も「サプリメント」も、「医薬品」とは明らかにカテゴリーが異なるものですが、今のところこれといった法律上の定義も基準もないことをご存知でしょうか。

販売業者が独自の判断で、毎日の食事で摂っている普通の食品よりも、「健康によい」「健康の保持増進に役立つ」「病気の予防に効果がある」として販売しているものをひっくるめて、「健康食品」とか「サプリメント」と呼んでいるのが実情でしょう。

ただし、一般に健康食品として扱われているもののなかには、国が「保健機能食品制度」で定めている安全性や健康への有効性に関する一定の基準を満たした食品があります。

この種の食品は「保健機能食品」と呼ばれ、健康への効能を食品のパッケージなどに表示したり、CMでアピールすることが許されています。この保健機能食品ではない、いわゆる健康食品に表示されている効能(健康への効果)については、すべてが科学的に実証されているわけではなく、安全性も保証されていません。

健康食品について患者や利用者から情報提供を求められることも少なくないと思います。その際には、健康食品にもいろいろなものがあることやそれぞれの特徴、健康被害を未然に防ぐ利用法も伝えていただけたらと思い、まとめてみました。

国の厳格な審査をパスした
「特定保健用食品(トクホ)」

現在、食品のパッケージなどに、使用により期待できる健康への特定の効能を表示することができる保健機能食品には、「特定保健用食品(通称「トクホ」)」と「栄養機能食品」、および「機能性表示食品」の3種類があります。

このうち「特定保健用食品」は、健康の維持増進に役立つことが科学的根拠をもとに認められ、その効能を「コレステロールの吸収を抑える」「食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにする」などと表示することを国から許可された食品です。

厳しい認定基準があり、国が、食品ごとに、健康の維持増進に役立つ効果や人体への安全性を審査し、その審査をパスしたものに限り、消費者庁長官が認可し、認可を得た食品には独自の許可マークが付されて市販されます。

令和5(2023)年12月22日の時点で、1,058件の食品が特定保健用食品の認可を得ています(認可食品は消費者庁のホームページでチェックできます)。

国が定めた表現で効能を表示した
「栄養機能食品」

二つ目の「栄養機能食品」は、病気や加齢などの影響を受けて思うように食が進まず、通常の食事だけでは1日に必要な栄養成分が不足しがちな場合に、その不足分を補充する目的で使用するように作られた食品です。

私たちが健康に生活していくうえで不可欠な栄養素のうち、主にビタミンやミネラルなど、特定の栄養成分を、国が規定した基準量(上・下限の範囲内)を含んでいる食品であれば、特に届け出をしなくても、国が定めた表示基準を遵守して、期待できる効能をパッケージに表示することができます。

表示に際しては、「栄養成分量」「1日当たりの摂取目安量」「摂取方法」「摂取する上での注意事項」などに加え、「複数の栄養機能食品を同時に摂取することによる過剰摂取のリスクを防ぐために、機能を表示しない栄養成分であっても、強化されているものについてはその含有量を積極的に表示すること」といった注意喚起がなされています。

たとえば骨粗鬆症などが気になり始めた閉経前後の女性の間で人気と聞く「大塚製薬 ザ・カルシウム チョコレートクリーム 」は、その一つです。

そのパッケージを見ると、「栄養機能食品(カルシウム)」と並び、「1袋に牛乳ビン3本分のカルシウム」「ビタミンD・マグネシウム配合」との表示があります。

企業の責任で効能を表示した
「機能性表示食品」

3つ目の「機能性表示食品」は、特定保健用食品(トクホ)のような国の厳しい審査も、栄養機能食品に求められているような国の基準値も設定されていません。

食品の、健康の維持・増進に役立つ効能と安全性を、商品を製造・発売している企業が自らの責任において、一定の科学的根拠を臨床研究や論文としてまとめ、それを消費者庁に届け出たうえで、その機能性、つまり「効能」を当該食品のパッケージに表示したものです。

この場合の効能の表現には、「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」に示された、一定の基準があり、以下のような表現は認められません。
1.「診断」「予防」などの医学的表現
2.「高血圧の人に」など病気の治療や予後に有効と思わせる表現
3.「増毛」「美白」など健康の維持・増進という制度の目的を超えた表現
4.科学的根拠にもとづき説明されていない表現

前記のように、機能性表示食品には国による厳しい認定基準がなく、企業の責任において、食品ごとの効能や安全性が担保されています。

ですから機能性表示食品を利用する際は、まず食品のパッケージに表示されている「届出番号」をもとに、国の食品表示業務を所管している消費者庁のホームページで、企業が届け出ているその食品の科学的根拠に関する「一般消費者向け基本情報」を確認したうえで利用する習慣をつけるよう指導したいものです。

消費者庁は2023年8月17日、ドコサヘキサエン酸(DHA)などによる中性脂肪の低減効果をうたう食品計88点のうち計80点について、裏付けのない効果をうたっていたとして、「機能性表示食品」としての届け出を撤回すると発表しています。商品名などは消費者庁のホームページを参照されたい。

日本医師会がとり過ぎを警告

なお、健康食品としてのサプリメントの利用者が年々増え続けていることを憂慮し、日本医師会はとりすぎを警告するメッセージをホームページで発信しています。詳しくはこちらを。

サプリメントの摂りすぎを警告するメッセージを、日本医師会が発信しています。特に高齢者では、医師の処方薬と併用していると、薬本来の効果が低減して病状が悪化したり、副作用が強く出ることも。栄養補給の主役は食事であることの再確認を!!