新型コロナウイルス肺炎への院内感染対策指針




発熱

新型コロナウイルス関連肺炎、
日本で初の感染者が確認される

昨年の暮れ以降、中国中部にある武漢市で多発し、死者も出ている新型コロナウイルスに関連した肺炎について、厚生労働省は1月16日、年末年始を武漢市で過ごし日本に帰国した男性が、中国で検出されたものと同じウイルスによる肺炎にかかっていたことを明らかにしました。

日本国内でこの新型コロナウイルス関連肺炎の患者が確認されたのは初めてです。
発表によると、感染が確認されたのは神奈川県在住の30歳代中国国籍の男性で、12月下旬から武漢市にある実家に滞在。

日本に帰国後、39℃まで発熱したことから医療機関を受診し、10日から入院していましたが、15日には症状が回復して退院。ところが、患者が退院した15日の夜、国立感染症研究所村山庁舎で行われていた検査で、提出された患者の検体から中国のものと同じ新型コロナウイルスの「陽性反応」が確認され、報告を受けた厚生労働省がその旨を公表する、といった経過をたどっています。

その後、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は日本を含む世界100カ国以上に感染が拡大し、WHOはパンデミック(世界的大流行)を宣言。そんななか国内では、院内感染が多く発生し、国立感染症研究所は4月5日、COVID-19の院内感染の発端者の30%が医療関係者であるとする調査結果を発表。医療関係者の感染予防策を改めて発表している。詳しくはこちらの記事を参照されたい。
→ COVID-19院内感染の原因にならないために

新型肺炎に対する
院内感染対策指針まとまる

中国の武漢市で相次いで発生しているウイルス性肺炎の原因が新型のコロナウイルスによるものであることは、WHO(世界保健機関)における遺伝子検査により1月14日に最終確認され、直ちに世界に向けて発信されました。

この知らせを受け、日本感染症研究所疫学センターと国立国際医療研究センター国際感染症センターは、先にまとめていたこの新型肺炎に対する院内感染対策指針の内容を一部修正し、
「中国湖北省武漢市で報告されている新型コロナウイルス関連肺炎に対する院内感染対策」*¹
として、1月15日に公表しています。

なお、上記手引きは内外の感染状況などに応じて随時内容が修正されています。
最新版は、日本感染症研究所のウエブサイト*¹で確認してください。

「確定例」&「疑い例」に対する感染対策

急性呼吸器感染症患者(新型コロナウイルス感染症/COVID-19)の診察時には、以下に示す標準予防策を実施することを原則とすること、としています。

  1. 呼吸器症状を呈する患者本人には、必ずサージカルマスクを着用させる
  2. 医療従事者は、診察する際にサージカルマスクを含めた標準予防策を実施することを前提とする

そのうえで、新型コロナウイルス感染症の確定例、疑い例を診察する場合は、以下の対応をとることを促しています。

  1. 標準予防策に加え、接触、飛沫予防策を行う
  2. 診察室および入院病床は個室が望ましい
  3. 診察室および入院病床は十分換気する
  4. 患者の気道吸引、気管内挿管の処置などエアロゾルが発生する危険性のある手技を実施する際には、空気感染の可能性を考慮してN95マスク、眼の保護具(ゴーグルまたはフェイスシールド)を装着する
  5. 患者の移動は医学的に必要な目的に限定する

厚労省が国民へのメッセージで
適正かつ冷静な対応を求める

一方、日本国内で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認されたことを受けて厚生労働省は、全国の医療機関に対し、発熱や咳嗽など呼吸器症状がある患者が来院した場合は、新型コロナウイルス感染症の可能性も念頭に置き、
⑴ 中国湖北省への渡航や滞在歴、湖北省武漢市内の海鮮市場訪問歴を確認する
⑵ 発熱などの症状が軽い場合で不明な点があれば最寄りの保健所に相談する
の2点を厳守するよう、呼びかけています。

また国民に対しては、同省ウエブサイト*²にて、新型コロナウイルスの感染が確認された男性は、武漢市滞在中に肺炎症状のある父親と一緒に生活していたことから、患者との濃厚接触により感染を受けた可能性が否定できないことを説明。

そのうえで、このウイルスの感染力は低く、人から人へと感染が拡大するリスクは低いとして、過度に心配することのないよう、冷静な対応を求めるメッセージを発出しています。

濃厚接触藻者の定義が4月21日変更されている。
COVID-19の確定患者が発症した2日前から接触した者のうち、①その患者と同居、あるいは15分以上の接触(車内、航空機等内を含む)があった者、⓶適切な感染防護なしに患者を診察、看護もしくは介護した者、③患者の気道分泌物もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者、④手で触れる、または対面で会話することが可能な距離(目安として1m以内)で、必要な感染予防策なしで患者と15分以上の接触があった者、のことをいう。

なお、「新型コロナウイルス感染症について基本的なことを抑えておきたい」と本の紹介を求める声をいただいています。さまざま刊行されていますが、ips細胞でノーベル生理学・医学賞を受賞された山中伸弥氏が自身のサイトで「大変勉強になった」推奨されている『呼吸器内科医が解説! 新型コロナウイルス感染症 — COVID-19 —』を紹介させていただきます。

■1月31日 WHOが「緊急事態宣言」
なお、この新型コロナウイルス感染症についてWHOは、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」として認定すべきかどうか協議をした結果、1月23日の時点では緊急事態に当たらないとしたものの、1月31日には緊急事態宣言を出しています。
詳しくはこちらの記事を読んでみてください。
→ WHO「緊急事態宣言」で看護職に期待すること

■政府が「指定感染症」「検疫感染症」に指定
新型コロナウイルス感染症は1月28日、「指定感染症」と「検疫感染症」にそれぞれ指定されています。何が、どう変わるのか――詳しくはこちらの記事を。
→ 指定感染症となった新型肺炎、何が変わるのか

■2月15日 国内初の院内感染
2月13日には和歌山県内で病院勤務の外科医が新型コロナウイルスに感染していることが明らかにされ、15日にはこの外科医の同僚らに感染者が見つかり、国内初の院内感染が発生しています。詳しくはこちらの記事を。
→ 新局面を迎えた新型肺炎「正しく恐れて!」

■2月17日 看護師初の職業感染
2月17日、新型コロナウイルス感染者の国内初の死亡者のケアを担当していた看護師さんが、ウイルス曝露により職業感染していたことが公表されています。
「もしかしたら私も……」と不安な方は、こちらの記事を参照してください。
→ 新型コロナウイルスの職業感染を疑ったら

■曝露リスク評価と対応まとまる
日本環境感染学会は3月2日に「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第2版」のなかで、新型コロナウイルス感染症璃確定患者またはその疑いのある患者に接した際の曝露リスクの評価と対応について詳細にまとめています。
詳しくはこちらの記事を。
→ 医療従事者の新型コロナウイルス曝露リスク

参考資料*¹:国立感染症研究所「中国湖北省武漢市で報告されている新型コロナウイルス関連肺炎に対する院内感染対策」
参考資料*²:厚生労働省「新型コロナウイルスに関連した肺炎の患者の発生について
参考資料*³:厚生労働省「国民の皆様へのメッセージ」