在宅で人工呼吸器等使用時は携帯電話と距離を




モバイル

携帯端末の電波により
植え込み型医療機器が誤作動

最近はまず聞かなくなりましたが、携帯電話(スマートフォン・モバイル)が一般に普及し始めた当初は、電車やバスに乗っていると、
「優先席付近では、混雑時には携帯電話の電源をお切りください」
といったアナウンスが流れたりしたものです。

携帯電話の端末から発する電波が、植え込み型心臓ペースメーカや植え込み型除細動器等、人体に装着している医療機器の誤作動を引き起こし、健康に深刻な影響を生じさせるおそれがあるから、というのが理由でした。

しかし、現在の携帯電話端末のほとんど(2010年4月末時点で98%)が、第3世代(3G)以降の携帯端末に切り替わっています。

以降、当初懸念された「電波干渉(「電磁干渉」とも言う)」については、植え込み型の医療機器等に端末を8㎝まで近づけない限り、誤作動を招くなどの影響はないことが、総務省が毎年実施している調査により確認されています*¹。

在宅療養環境における
携帯電話による電波干渉

一方、最近では、在宅において人工呼吸器等の比較的高度な医療機器を使用して治療を継続する患者が急増しています。

在宅療養環境のような限られた空間にあっては、在宅医療機器が携帯電話端末等と不用意に接近することが容易に想定されます。

その結果、端末等から発する電波が、これらの医療機器にマイナスの影響を及ぼすことが懸念されることから、総務省では2017年から毎年、この件について調査を実施しています。

成人用人工呼吸器と二相式気道陽圧ユニットが誤作動

2017年と2018年に実施された検証実験では、在宅医療機器のうち、成人用人工呼吸器と二相式気道陽圧ユニットについては、携帯電話の端末をごく近くまで接近させると、端末からの電波(Wi-Fi環境を除く)を患者の自発呼吸と誤検知して、誤作動を引き起こすケースがあることが確認されています。

具体的には、成人用人工呼吸器では、自発呼吸を誤検知して呼吸数が増加し続けるためアラームが鳴り、その後も呼吸回数が増加し続けるといった状況が発生することになります。

また、二相式気道陽圧ユニットの場合は、「スピーカーから異音が生じる」「ベントに関わるアラームが鳴る」「自発呼吸がないと判断し、バックアップのための圧力が2回出力される」といった影響が発生していることが報告されています*²。

医薬品医療機器総合機構が
注意喚起のリーフレット

このような調査報告を受け、医薬品医療機器総合機構(Phamaceuticals and Medical Devices Agency;PMDA)は2020年7月、「医療機器適正使用のお願い」として、
「在宅で人工呼吸器等を使用する患者さんやそのご家族等の皆様へ」
と題するリーフレット*³をまとめ、関係者に向け注意喚起を行っています。

Web上で紹介されているこのリーフレットの2ページ目には、
「医療スタッフの皆様への留意点について」
とあり、在宅において人工呼吸器等を用いた治療を始める患者やその家族に、このリーフレットを用いて、医療機器使用上の注意事項としてその都度説明することを求めています。

また、先に紹介した総務省による検証実験で明らかになった誤作動に関する結果については、
「今回の実験は、極端な状況を想定したものであり、同様の事象が実際に臨床現場で起きたとする報告は、2020年7月の時点ではない」
としています。

医療機器の添付文書で
「離す距離」を確認し伝える

そのうえで、電波干渉を防ぐために携帯電話端末を人工呼吸器等の医療機器から離す距離については、使用する医療機器の添付文書の「重要な基本的注意」の項目欄に、
「〇m程度以内に近づけた場合、電波干渉を受け不具合が発生する可能性がある……」
として、その距離が明示されています。

医療スタッフには、添付文書にあるこの「距離」を把握したうえで、
⑴ 示された距離から離して携帯電話端末等を使用すること
⑵ 日頃の動作状況を確認すること
⑶ 携帯電話端末の電波が原因と思われる誤作動が生じた場合は、速やかに医療スタッフ、もしくは医療機器メーカーの担当者に連絡すること
の3点を、患者や家族等の関係者に指導するよう求めています。

なお、近年では、携帯電話端末並びに在宅医療機器の機能向上により、電波による誤作動などの影響は非常に少なくなってきています。

一方で、在宅療養を続ける患者や家族にとって携帯電話は、たとえば急変時等にはかかりつけ医との文字どおり命綱とも言える必要不可欠なツールです。

この点に配慮し、安全な距離を確保さえすれば電波による誤作動の心配はないことを安心材料として伝え、間違っても携帯電話の利便性を損なうようなことがないよう注意を促しています。

参考資料*¹:総務省「携帯電話端末による心臓ペースメーカ等の埋め込み型医療機器への影響に関する調査結果」
参考資料*²:2018(平成30)年3月「電波の植え込み型医療機器及び在宅医療機器等への影響に関する調査等」報告書
参考資料*³:医薬品医療機器総合機構「在宅で人工呼吸器等を使用される患者さんやそのご家族の皆様へ」