新型タバコの健康リスクを甘く見ていませんか




NO Smoking

講演で「新型タバコの真実」を知り
禁煙を新たに決意した看護師さん

先週末のこと。半年近くご無沙汰だった関西の病院に勤務する看護師さんから、「今度こそ禁煙することに決めました!!」というメールが届きました。

友人に誘われて大阪国際がんセンターで開催された「新型タバコの真実」という講演会に行き、当センターの田淵貴大・がん対策センター副部長の話を聞いたということに始まり、続いて、健康リスクが低いと思い込んで新型タバコの一つ、加熱式タバコに切り替えていたが、それが大変な誤解だったとわかった――。
だから「もう禁煙するしかないと決意した」とあります。

実は、彼女の「禁煙することにした」といった宣言は、私が記憶しているだけでもこれで4度目です。この間には、「ニコチンガム」も「ニコチンパッチ」も、インターネットでサポートを受けながらの「禁煙マラソン」などにも懲りずに挑戦していたようです。

しかし、その都度「こんなにストレスフルな仕事をやっているうちは禁煙できない」などと言い訳めいた自己弁護に逃げて、すべて一時的な禁煙で終わってしまっていたのですが……。
今回のメールからは、禁煙に取り組む意気込み自体、これまでとは違うように読み取れました。

新型タバコは煙が出ないから
周囲に受動喫煙の迷惑をかけない?

いわゆる「新型タバコ」には、加熱式タバコと電子タバコがあることはご承知でしょうか。
加熱式タバコは、葉タバコを加熱すると発生するエアロゾル(蒸気)を吸引するタイプのタバコです。このエアロゾルには、ニコチンが含まれています。

一方の電子タバコでは、ある種の液体(リキッド)を加熱してエアロゾルを発生させ、それを吸引します。このリキッドには、ニコチンを含むものと含まないものとがあります。
海外ではニコチン入りのリキッドが販売されていますが、日本では医薬品医療機器法(旧薬事法)により、ニコチン入りリキッドは販売されていません(インターネットで海外から個人購入している人もいるようですが)。

加熱式タバコも電子タバコも、従来型のタバコのように葉タバコを燃焼させるわけではありません。そのため、紫煙(しえん)と呼ばれるタバコ特有のニオイを伴う煙が出ないニュータイプのタバコとして、「新型タバコ」と通称されています。

屋内全面禁止でも加熱式タバコならOKの飲食店も

友人がこの1年ほどずっと吸い続けてきたというのは、加熱式タバコです。
「有害物質を約90%低減」といった健康リスクが少ないことをイメージさせるキャッチコピーに魅かれ、加熱式に切り替えたと話してくれたことがあります。

何よりも加熱式タバコは煙が出ないのが魅力で、周囲の人に受動喫煙というかたちで迷惑をかける心配がなく、また髪の毛などに臭いがついて、同僚や患者さんから敬遠されるようなことがないのがいいとも、考えていたようです。

実際のところ関西には、屋内全面禁煙のはずのホテルやレストランなどでも、従来の紙巻きたばこは禁止しているものの、彼女が吸っている「ICOS(アイコス)」の加熱式タバコなら吸うことができる飲食店も少なくないようです。

日本呼吸器学会が
新型タバコに警鐘を鳴らす見解を発表

ところが、講演で聞いた田淵医師の話は、加熱式タバコならまだマシだろう、といった彼女の思い込みを完全に覆すものだったようです。
特に胸にグサッと来たのは「紙巻きたばこと比べれば低い値ではあっても、同じ有害物質が含まれていることには変わりはない」という言葉だったと書いてあります。

この加熱式タバコの販売がわが国で開始されたのは、2016年4月のことです。
煙が出ないことや、従来の紙巻きたばこと比べ健康リスクが少ないことが大々的に報じられたこともあって、またたく間に全国規模で普及しています。

こうした事態を深刻に受け止めた日本呼吸器学会は、2017年10月31日に「非燃焼・加熱式タバコや電子タバコに対する日本呼吸器学会の見解」を発表。
そのなかで、新型タバコの製品が発売間もないため科学的根拠が得られるまでには、まだかなりの時間が必要と断ったうえで、以下の2点を指摘し、学会として「新型タバコの使用はすすめられない」と結論づけています。

  1. 非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用は、健康に悪影響がもたらされる可能性がある
  2. 非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用者が呼出したエアロゾルは周囲に拡散するため、受動吸引による健康被害が生じる可能性がある。
    従来の燃焼式タバコと同様に、すべての飲食店やバーを含む公共の場所、公共機関での使用は認められない

(引用元:日本呼吸器学会ホームページ

がん予防に必須の知識として
新型タバコの健康リスクに関心を

呼吸器学会が先の見解のなかで、「科学的根拠が得られるまでにはかなりの時間が必要」とはしているものの、現時点で、新型タバコのうち、特に加熱式タバコについて言えば、健康リスクに関する科学的根拠が全くないわけではありません。

たとえば、先に紹介した田淵医師は、2017年11月に開かれた日本禁煙学会総会で、加熱式タバコについて、1万人以上を対象にしたインターネット調査の結果を発表しています。
それによると、他の人が吸っている加熱式たばこから出ている見えにくいエアロゾルにより、約33%の人が「気分が悪くなる」経験をし、約24%が「のどの痛みを感じる」といった急性症状を自覚していたそうです。

この結果から田淵医師は、加熱式タバコを吸った人が吐き出す息にはたとえ少量であっても、通常の大気中濃度を上回るホルムアルデヒドなどの発がん物質も含まれており、喘息の子どもやがん患者などへの影響が大きいだけでなく、吸っている本人も長く吸い続ければがんの発症につながると警告しています。

田淵医師の近著『新型タバコの本当のリスク』

田淵医師はこのたび、『新型タバコの本当のリスク アイコス、グロー、プルーム・テックの科学』(内外出版社)を出版されました。
そのなかで同医師は、新型タバコの健康リスクについてさらに多くの研究成果と最新のエビデンスをもとに、「決して安全ではない」ことを読者に伝えようとしておられます。

少し前のデータですが、日本看護協会による「2013年看護職のたばこ実態調査」では、看護職の喫煙率は7.9%(女性7.2%、男性29.5%)と報告されています。
この数値は一般成人の喫煙率を下回ってはいるものの、医療に携わる者としては思った以上に多いという印象があるのが正直な感想です。

田淵医師のご本には、喫煙者の方は言うまでもなく、自らは喫煙しないものの、患者や一般の人びとから新型タバコについて質問を受ける立場にある看護職の皆さんに、がん予防、あるいは呼吸器疾患の予防や症状緩和の観点からも正しく知っていただきたいことが多く盛り込まれています。
是非ご一読を!!