酸化マグネシウム製剤適正使用に再度注意喚起

錠剤

便秘薬としても多用される
酸化マグネシウム製剤

ご承知のように酸化マグネシウム製剤(MgO)は、便秘症の治療や胃・十二指腸潰瘍、胃炎などにおける胃内での制酸による症状の改善、また尿路結石の予防にも広く使われています。

この酸化マグネシウム製剤を製造、販売する17社*は8月5日、
「酸化マグネシウム製剤の使用により高マグネシウム血症を発症し、重篤な転帰をたどる症例が報告されている」として、「酸化マグネシウム製剤の適正使用に関するお願い」の文書をWebサイトに公開し、医療現場に注意を喚起しています*¹。

市販の便秘薬には、この酸化マグネシウム製剤が主成分のものが少なからずあります。

数ある便秘薬のなかでもこのタイプの薬(塩類下剤/浸透圧性下剤)は、作用がマイルドで、比較的安全な便秘薬とされています。
そのため、常備薬として服用している便秘症の方も多いようです。

このことを考えると、この製剤の処方を受けている患者だけでなく、便秘対策にこの製剤を常用している看護師さんにとっても、安心安全のうえで欠かせない重要な情報と思い、今回公表された使用上の留意点をお伝えしようと思います。

*酸化マグネシウム製剤製造販売17社
協和化学工業(株)、健栄製薬(株)、小堺製薬(株)、(株)三恵薬品、シオエ製薬(株)、東海製薬(株)、東洋製薬化成(株)、日医工(株)、日興製薬(株)、ニプロ(株)、日本ジェネリック(株)、マイラン製薬(株)、丸石製薬(株)、持田製薬販売(株)、山善製薬(株)、吉田製薬(株)、(株)グラフィコ

高マグネシウム血症を
発症しやすい患者

「適正使用に関するお願い」の文書では、酸化マグネシウム製剤の使用により高マグネシウム血症が発症しやすい患者として、以下をあげています。

⑴ 同製剤を長期間服用している患者
⑵ 腎機能障害のある患者
⑶ 高齢の患者
⑷ 便秘症の患者

このうち特に「4」の便秘症の患者については、腎機能が正常であっても、また通常用量以下の服用であっても、高マグネシウム血症を発症する可能性があるとしています。

実は、上記高マグネシウム血症発症リスクのある患者に対する酸化マグネシウム製剤の投与については、すでに2008年9月の時点で、重大な副作用として添付文書に追記されています。

その後も2015年10月には、「適正使用に関するお願い」の文書を公表して高マグネシウム血症の発症リスクを伝え、より慎重な使用を求めてきました。

しかし、その後も引き続き、酸化マグネシウム製剤を服用していた患者が高マグネシウム血症を発症して死亡、またはきわめて重篤な状態に陥ったものの、血液透析により一命をとりとめとする事例などが報告されています。

こうした事態を憂慮し、この度2回目の「適正使用に関するお願い」を新たに発出することで、より一層の注意喚起を促すこととなったようです。

高マグネシウム血症の
予防と早期発見のために

今回の「適正使用に関するお願い」文書では、上記のようなリスク患者に酸化マグネシウム製剤を使用する際には、高マグネシウム血症の発症や重篤化の防止、および早期発見のため、下記の点に注意し、必要な対応を徹底して実施するよう要請しています。

  1. 定期的に血清マグネシウム濃度を測定する
  2. 漫然とした処方を避け、必要最小限にとどめる
    特に便秘症の患者では、腎機能が正常な場合や通常用量以下の投与でも、重篤な転帰をたどる例が報告されていることに注意する
  3. 使用中の患者に高マグネシウム血症の症状が現れた場合には服用を中止し、直ちに医療機関を受診するよう指導を徹底する。

このうち「3」の服用を中止し、直ちに医療機関を受診すべき高マグネシウム血症の初期症状としては、以下を例示しています。

悪心・嘔吐、起立性低血圧(立ちくらみ、めまい)、徐脈(脈が遅くなる)、皮膚潮紅(皮膚が赤くなる)、筋力低下(力が入りにくくなる)、全身倦怠感、無気力、傾眠状態(眠気でぼんやりする、うとうとする)、腱反射の減弱など。

血清マグネシウム濃度と
高マグネシウム血症の症状

上記の初期症状と並び、高マグネシウム血症発症のリスク指標となるのは血清マグネシウム濃度ですが、その正常範囲は、1.8~2.6㎎/dLとされています。

この値が2.6㎎/dLを上回った状態が高マグネシウム血症で、全身の神経や筋肉、消化器、循環器などが機能障害を起こし、そのためさまざまな症状が出現します。

具体的な目安として「適正使用に関するお願い」文書では、この値が4.9㎎/dL以上になると、悪心・嘔吐、起立性低血圧といった初期症状が現れるとしています。

さらに、この状態を放置し、血清マグネシウム濃度が、
▪6.1㎎/dL以上になると、心電図異常(PR短縮、QT延長)など
▪9.7㎎/dL以上では、腱反射の消失、随意筋麻痺、房室ブロック、低血圧
▪18.2㎎/dLでは、昏睡、呼吸筋麻痺、血圧低下、心停止
といった経過をたどることから、随時迅速に、適切な処置を行うよう求めています。

参考資料*¹:酸化マグネシウム製剤 適正使用に関するお願い―高マグネシウム血症―