手足口病が流行の兆し 予防策の周知徹底を 

子どもの感染症

「手足口病」が
昨年を上回る季節外れの流行に

幼い子どもを中心に夏に流行する「手足口病」の患者が、この数週間で宮崎県、佐賀県、鳥取県など西日本を中心に季節外れの流行を見せている模様です。

国立感染症研究所(東京)は、この先全国規模で昨年以上の流行になる可能性が高いとして、特に子どものいる家庭、および保育施設や幼稚園では、手洗いなどの予防策を徹底するよう呼び掛けています。
小児科外来・病棟、幼子のいる訪問先なども対象に含まれるでしょう。

ところでこの「手足口病」については、健康問題のプロである看護職といえども、幼子をお持ちだったり、小児看護や感染症看護が専門でもないと、「そういえばそんな感染症があったわね」といった程度の認識ではないでしょうか。

乳幼児を中心に流行する感染症ですが、大人もまれに感染します。
大人が感染すると重症化するリスクがあり、感染対策は重要です。

そこで今回は、国立感染症研究所にある「手足口病とは」の資料*¹などを参考に、直近の感染状況とともに、手足口病の感染防止対策をざっくりとまとめてみました。

手足口病は5類感染症
夏が流行のピーク期だが

手足口病は、その名のとおり、手掌や足底または足背などの四肢末端、および口腔粘膜に米粒大程度の水泡性の発疹が数個から数十個現れる急性のウイルス感染症です。

通常は、放っておいても3~7日ほどで発疹は消えるのですが、ごく稀に、髄膜炎や脳炎などの脳神経系疾患を合併することもあり、決して軽視できない病気です。

「感染症法」では、麻疹や梅毒、破傷風などと同じ5類感染症に分類されています。

流行状況を迅速に把握して蔓延化を防ぐ対策の第一歩として、あらかじめ指定されている医療機関で手足口病の患者を診断した医師は最寄りの保健所へ届け出ることが求められる、いわゆる「定点把握感染症」に定められています。

この感染症は、子どもの夏風邪の一種と言われるように、4歳くらいまでの乳幼児を中心に、通常は、7月を山場とする夏に流行のピークを迎えます。

ところが今年(2021年)は、むしろ冬本番を迎える前の、11月1日~7日までの1週間に、定点と指定されている全国の小児科医療機関から届出のあった手足口病患者数が過去10年の同じ時期と比べて最も多いことが、国立感染症研究所から報告されています。

飛沫と便の感染経路別に
感染予防対策の強化を

手足口病の主な病原体はエンテロウイルスですが、コクサッキーウイルスが原因の例も、数は少ないもののあるようです。

エンテロウイルス自体は、私たちの身の回りに常在する病原体です。

年齢の別なく多くの人が無自覚のうちに、感染から回復へのプロセスを何度か体験しているといわれています。

手足口病の人から人への感染は、主として咳やくしゃみなどにより患者の咽頭から排泄されるウイルスを含む飛沫を介しての、いわゆる飛沫感染と、その飛沫が付着している物に触れることによる接触感染で起こるとされています。

加えて、確率としては低いものの、患者の便中に排泄されたウイルスによる経口感染、まれに水疱内部の液体に混在するウイルスによる接触感染のリスクもあると考えられています。

詳細については、国公立大学附属病院感染対策協議会編『病院感染対策ガイドライン 2018年版【2020年3月増補版】』(じほう)が参考になります。

入念な手洗いの励行と
おもちゃ類の共用を避ける

咳やくしゃみなどによる飛沫感染の予防には、マスクの着用が原則となります。

とはいえ、幼子に感染予防を理由にマスクの着用を求めても、おそらく嫌がって大騒ぎになるでしょう。仮にいったんはおとなしく着けてくれても、すぐに外してしまうなど、マスク着用の強要は、幼い子どもには無理があると考えるべきです。

むしろ徹底すべきは手洗いです。
手洗いなら、指導の仕方次第で、幼い子どもたちにはむしろ喜んで、お遊び感覚で積極的にやってもらえるのではないでしょうか。

そういえば、インフルエンザが流行した冬の時期に、都内の幼稚園の子どもたちが並んで手洗いをしている様子がニュース映像で流れたことがありました。

彼らは「ハッピバースデートゥーユー」を声を合わせて歌いながら、そのリズムに乗って楽しそうに手洗いをしていました。その姿がとても印象的で、なるほどうまい方法を考えたものだと、感心させられたものです。

ウイルスを含む飛沫などを介しての感染の拡大は、こうした工夫のもとに流水と石けんによる念入りな手洗いを強化することにより、かなり防ぐことができます。
もちろん手洗い後のタオルの共有はNGです。

同時に、ウイルスを含む飛沫などが付着しているであろうおもちゃやタオル類などは、子どもたちにわかるように理由を話してそれなりの了解を得たうえで、感染リスクがある時期に限って貸し借りするのはやめ、個人別にすることも感染の拡大を防ぐうえで大切です。

手口足病の発疹消失後も
排泄物やおむつの処理を適切に

発熱や脳炎などの合併がなければ、手掌など四肢末端や口腔粘膜にできた水泡性発疹は、症状が現れてから3~7日も経てば、痂皮、いわゆる「かさぶた」を残すことなく消退し、同時に飛沫感染や接触感染のリスクもなくなります。

ところが、患者の便中へのウイルスの排泄は、比較的長期間にわたって続き、一般に発疹が消失した後も、2~4週間は感染リスクが残ると考えられています。

なぜならエンテロウイルスの「エンテロ」は「腸」という意味ですから、日本語で言えば「腸管ウイルス」、つまり腸内で増えるウイルスだからです。

エンテロウイルスの感染リスクが残っている間は、便などの排泄物やおむつの処理と、処理した後の手洗いには十分な配慮が求められます。

消毒はアルコールではなく次亜塩素酸ナトリウム溶液で

一般に感染リスクが疑われる便で汚染されたおむつ類は、ビニール袋に入れて密封し、所定の方法で廃棄するのがいいようです。

エンテロウイルスはアルコール消毒には比較的抵抗性が強いものの、バイバイ菌 次亜塩素酸のような次亜塩素酸ナトリウム溶液には弱いことも頭に入れておくと、汚染物の処理方法を考えるヒントになるでしょう。

ちなみに家庭用の塩素系漂白剤は次亜塩素酸ナトリウムです。
通常は0.02%液が使われますが、手足口病の場合のエンテロウイルスによる汚物の処理には0.1%液が妥当とされています。

また、幼い子どものことですから、唾液や排泄物で汚染されてしまったおもちゃ類でも、「捨てたくない!」と泣き叫ぶような事態も起こりうるでしょう。そんなときは、そのおもちゃ類が加熱に強い素材のものであれば、100℃で1分間加熱すればエンテロウイルスを殺菌できることも覚えておけば、役立つのではないでしょうか。

なお、同じウイルス感染症の麻疹についてはこちらの記事を参考にしてみてください。

麻疹(はしか)ウイルスについてはわが国はWHOから「排除状態」との認定を受けたばかり。にもかかわらず輸入ウイルスによる感染が拡大し、診療にあった医療スタッフが発症するケースもあり、感染対策の強化が望まれる。その見直し策をまとめてみた。

参考資料*¹:国立感染症研究所ウエブサイト「手足口病とは」