看護専門外来で女性がん患者の悩みをサポート




鉢植えとホントコーヒーと

新規がん患者年99.5万人…
「全国がん登録」初公開

厚生労働省は1月17日、2016(平成28)年の1年間に、新たにがん(悪性新生物)と診断された患者が99万5132人だったことを速報値として発表しています。

性別にみると、男性56万6575人、女性42万8499人、性別不明者58人。
部位別では、大腸がんがトップで15万8127人(全体の15.9%)、次いで胃がん13万4650人(13.5%)、肺がん12万5454人(12.6%)の順となっています。

このデータは、2013年に成立した「がん登録の推進に関する法律」、通称「がん登録推進法」の施行に伴い、全国すべての病院と一部の診療所にがん患者データの届け出を義務づけた「全国がん登録」と呼ばれる新制度に基づく初めての集計によるものです(詳細は、厚生労働省ホームページ)。

これまで毎年公表されてきたがん患者に関する統計値は、国立がん研究センターの研究チームによる調査結果に基づくものです。
ベースになっていたがん患者の登録は義務ではなく任意のため、登録漏れによる情報の精度に地域差のあることが指摘されていました。

その点今回公表されたデータは、追跡が義務化された「全国がん登録」に基づくものです。
その意味で、これまでの推計より実態により近く、がんの種類別、地域別、また性別にみられる傾向を今後のがん対策に今まで以上に活用しやすくなると期待されています。

女性のがん患者が
「AYA世代」で増加している

性別ということで言えば、繰り返しになりますが、今回公表されたがん患者に関する統計値は、「全国がん登録」に基づく初のデータです。そのため、従来の推計値と正確に比較することはできませんが、最近の傾向として関係者が注視しているのは、女性がん患者の増加です。

なかでも「AYA(あや)世代」と呼ばれる、主に15歳から30歳前後の思春期・若年成人期において女性がん患者の割合が増えていることは、先にコチラの記事で紹介した通りです。
AYA世代がん患者のサバイバーシップ支援

この世代の女性のがんには、「希少(きしょう)がん」と呼ばれる発生頻度の低いがんが多いことが特徴としてあげられます。
がんが少ない分患者数も少ないだけに、医療者サイドとしては経験に乏しく、治療においてもケアにおいても何かと課題が多いのが実情です。

こうした難しさに加え、AYA世代にある女性は、恋愛や結婚、妊娠、出産といったその後の人生を大きく左右するような重要なライフイベントを抱えています。
そのため医療者サイドには、女性ならではのもろもろのイベントにできる限り支障が及ばないように配慮した治療法の選択や生活面での支援が求められることになります。
詳しくは⇒『医療従事者が知っておきたい AYA世代がんサポートガイド』(金原出版)

がん治療の進歩により若年世代がん患者の長期生存が期待できるようになったが、治療に伴う妊孕性に障害が及ぶリスクは避けられない。「がん治療も将来子どもも」との彼らの切なる願いをかなえようと、妊孕性温存の治療費を助成する制度が全国で始まっている話を。

女性がん患者特有の悩みに
「レディースセンター」が対応

AYA世代を過ぎた30代、40代の女性がん患者も、がん治療に伴う女性特有のさまざまな悩みや不安を抱えています。
とりわけ抗がん剤治療による脱毛や肌荒れ、また手術による乳房切除などは、外見を大きく損なうリスクが高いだけに、女性にとっては深刻な悩みです。
看護に期待される「がん患者の外見ケア」に指針

結婚していれば、がん治療と妊娠、出産の両立に悩むこともあるでしょう。
無事に出産して母親となった後も、治療の副作用のわが子への影響を心配したり、育児とがん治療の両立に苦心惨憺することにもなりがちです。

また、今回公表された「全国がん登録」に基づく調査でも、女性において乳がんの新規患者数が9万4848人と最多でした。この乳がんと卵巣がんについては、遺伝性が懸念されるケースもあることから、患者には心配のもとともなっています。
誕生した遺伝看護専門看護師への期待

女性がん患者のこれらの悩みや不安に専門的に対応して解決を図り、患者が安心して治療を受けられるようにサポートしていこうと、国立がん研究センター東病院は2018(平成30)年9月、国内のがん専門病院では初めての「レディースセンター」を開設しています。

「女性看護外来」
専従看護師が相談窓口に

当レディースセンターは、「女性がん患者はもちろんのこと、その患者に寄り添うすべての人々の”ライフ”をサポートする」ことを開設目標に、将来的には「女性がん患者の”その人らしさを支える”最適な医療とサービスを提供する卓越したレディースセンターになる」ことを目指し、その実現に向けて活動をスタートしています。

センターの総合窓口を担っているのは「女性看護外来」。各診療科を受診した患者が治療以外の悩みや心配事を訴えると、その診療科から女性看護外来に相談が持ち込まれます。

ここでまず患者の相談に乗るのは、女性看護外来専従のがん看護専門看護師、千葉育子さんです(2019年1月現在)。
千葉さんは、問診や簡単なアンケート調査を行って患者の相談内容を把握して支援策を探り、適切な診療科、あるいは遺伝カウンセラーや薬剤師、医療ソーシャルワーカー、理学療法士などの専門職につないで解決を図る役割を担っています。

併せて、定期的に(2週間に1回)関係者による「多職種カンファレンス」を開き、よりよい連携方法や支援方法を協議し、院内のあらゆる場面でのサポート強化に努めています(詳細は、国立がん研究センター東病院ホームページ)。

女性看護外来での活動を開始して3カ月、千葉育子さんはメディアの取材に、「がんであってもその人らしい毎日が送れるよう、女性のライフステージに合わせた支援をしていきたい」と話しています。(産経ニュース2019.1.16より)