看護師も知っておきたい オンライン診療対象の「緊急避妊薬」のこと




テーブルと鉢植え

オンライン緊急避妊診療と
使用される緊急避妊薬

アフターピルとも呼ばれる「緊急避妊薬」が存在することや、その詳しい効能、正しい使い方をご存知の方は、看護職と言えどもそれほど多くはないのではないでしょうか。

「そのような薬があることは知っている」という方でも、この緊急避妊薬が、情報通信機器による遠隔診療における「オンライン診療」*の対象薬品となっていることまでは、おそらくご存知ないだろうと思うのですがいかがでしょう。

オンライン診療については、厚生労働省(以下、厚労省)の検討会が2018年3月にまとめた『オンライン診療の適切な実施に関する指針』の見直し作業が、2019年1月から進められ、同年7月にはその改訂版が公表されています。

この指針の改訂部分を読んで目に留まったのが、オンライン診療の例外的対応として「緊急避妊に係る診療」について書かれた部分です。

緊急避妊が必要になるような状態に陥っている患者の心理面を考えると、患者の傍らに看護職の女性が付き添っているケースが多いと思われます。

そこで今回は、そんな場面のケアに役立てていただけるよう、オンライン診療における緊急避妊薬の取り扱いについて、ポイントをまとめてみたいと思います。

*「遠隔診療」と「オンライン診療」
『オンライン診療の適切な実施に関する指針』では、遠隔診療を「情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為」と定義。この遠隔診療のうち「医師‐患者間において、情報通信機器を用いて、患者の診察および診断を行い、診断結果の伝達や処方等の行為を、リアルタイムにより行う行為」をオンライン診療と定義している。
詳しくは、こちらの記事を読んでみてください。
→ 遠隔医療とオンライン診療はどう違うのか

性的被害による
望まない妊娠を防止する

緊急避妊薬とは、望まない妊娠を避けるために、性交渉から72時間以内(3日以内)に服用することにより妊娠を防ぐことができる薬です。

黄体ホルモンが働いて排卵を抑えたり、遅らせたりして受精を防ぐ、あるいは受精卵の着床を防ぐメカニズムになっているようです。

まれに軽い吐き気や腹痛程度の副作用を一時的に自覚することもあるようです。
しかし、規定の時間内に服用すれば、100%の効果は望めないものの、80%以上という高い確率で妊娠を防ぐことができるとされています。

「望まない妊娠」や「予期せぬ妊娠」にはいろいろなパターンがあります。
たとえば、「コンドームが破れた」といったような単に避妊に失敗したというケースもあるでしょう。あるいは「酔ったいきおいで」とか「軽い気持ちで」無防備な性交渉をしてしまったというケースも少なからずあるだろうと思います。

しかし、現実的な問題として緊急避妊薬が必要となるのは、少女や女性が性犯罪や性暴力の被害者になってしまった場合です。

最近は「デートレイプドラッグ」とか「レイプドラッグ」という言葉があるように、デートのつもりで一緒に食事に出かけた相手から、トイレで席を立ったスキに飲み物に睡眠薬を入れられてもうろうとなり、性的被害に遭ってしまうといった事件も起きています。
このようなケースも緊急避妊薬使用の対象となります。

なお、性的暴行被害による妊娠に対する人工妊娠中絶や母体保護法、および母体保護法指定医師については、こちらの記事を参照してください。
→ 知っておきたい「性的暴行被害者の妊娠中絶」

オンライン診療の例外として
初診での緊急避妊薬の処方を容認

精神的にも肉体的にも大きなダメージを受けている性的犯罪の被害に遭った少女や女性が、望まない妊娠を防ぎたいと自ら婦人科を受診し、医師の診察を受けて緊急避妊薬の処方を受けるのは、あまりにハードルが高すぎます。
そこで、オンライン診療という方法はどうか、という話になります。

ところがオンライン診療を行う医師には、
「初診は、直接の対面による診察を行うこと」が最重要の遵守事項とされています。

そのためオンライン診療と言えども、性的被害に遭って一刻も早く緊急避妊薬を服用したいという女性にとっては、依然として高い壁であることに変わりありません。

今回の指針改定に向けた見直し作業ではこの点が議論され、
「現状のままでは予期せぬ妊娠を防ぎたい女性が躊躇なく緊急避妊薬を使用することができない」
との判断から、例外的対応として、緊急避妊薬の処方については初診からオンライン診療で行うことができるようになったというわけです。

■産婦人科医または厚労省の研修を受講した医師に限定
具体的には、
「女性の健康に関する相談窓口等*に所属する医師またはこうした相談窓口等と連携している医師が、女性の心理的な状態にかんがみて対面診療が困難であると判断した場合においては、産婦人科医または厚労省が指定する研修を受講した医師が、初診からオンライン診療を行うことは許容され得る」としています。
*女性健康支援センター、婦人相談所、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターを含む

■処方は1錠のみ、薬剤師の前で服用
この場合の緊急避妊薬の処方に関しては、次に示す細部にわたるルールを定めています。
⑴ 1錠のみの院外処方とすること
⑵ 処方を受けた女性は、薬局において、研修を受けた薬剤師による調剤を受け、薬剤師の面前で内服すること
⑶ 処方や投薬に関わる医師と薬剤師は、より確実な避妊法について適切に説明を行うこと
⑷ 内服した女性が避妊の成否を確認できるよう、産婦人科による直接の対面診療を約3週間後に受けることを確実に担保すること

なお、厚労省は2019年11月21日、各都道府県向けに発信した通知「緊急避妊に係る診療の提供体制整備に関する取り組みについて」のなかで、緊急避妊に係る診療については、指針において例外的対応を容認したものの、対面診療の方がより迅速な内服が可能であることなどから、適切に対面診療を受けやすい体制整備のため、以下を実施する予定である旨明言しています。
⑴ オンライン診療を行う医師を対象とした緊急避妊に係る診療の研修
⑵ 緊急避妊に係る対面診療が可能な産婦人科医療機関等の一覧の作成*¹
⑶ 緊急避妊薬を調剤する薬剤師に対する研修
⑷ 対応可能な薬剤師・薬局の一覧の作成

文中の、一部改訂された『オンライン診療の適切な実施に関する指針』は厚労省のホームページからダウンロードすることができます。
https://www.mhlw.go.jp/content/000534254.pdf

*¹厚生労働省はホームページにて、2020年2月3日時点の緊急避妊に係る対面診療が可能な医療機関のリストを公表しています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000186912_00002.html