ドレーン管理と抗がん剤による職業性曝露防止策




ドレーン管理と抗がん剤

抗がん剤による化学療法中のがん患者の看護にあたる看護師さんに抗がん剤の職業性曝露の危険があることは、すでに十分認識されていることでしょう。最近では、曝露防止の対策も全国的に徹底が図られつつあると聞いています。
ただ、その防護策が抗がん剤入りの点滴管理の場合だけに集中していることが、私としてはとても気になっています。

そこで今回は、抗がん剤を使用中の患者から出される排泄物に触れるリスクの高いケアのなかから、ドレーン管理にまつわる抗がん剤曝露対策についてまとめてみたいと思います。

抗がん剤曝露防止策は
最短で治療終了後48時間

臨床の看護師さんによく読まれている月刊誌を見ていると、いずれの雑誌でも、その特集記事としてコンスタントに取りあげられているテーマがいくつかあることがわかります。その一つが「ドレーン管理」です。
需要があるから特集を組まれる頻度も高いということなのでしょうが、それだけにドレーン管理に関する記事で気になっていることがあります。

ドレナージを受けている患者の安全・安心を守ろうという視点、またそのドレナージ効果を最大限高めようとする視点からまとめられている記事は数多くあります。ところが、「このことにも是非触れてほしい」と思うことが抜けている特集記事が多いのです。

抗がん剤曝露を見過ごしがちなドレーン管理時

ここで「抜けている」と私が考えるのは、ドレーン管理を行っている看護師さん自身の安全・安心確保に視点を置いた記事です。

とりわけ化学療法中にあるがん患者のドレーン管理においては、抗がん剤による職業性曝露を防止するという、看護師さんのセルフヘルスケア上大きな課題があるはずです。
つまり、抗がん剤による治療終了後のおよそ48時間、抗がん剤の種類によってはさらに長い時間は「曝露防止策を実行すべき」だとされていることです。

抗がん剤曝露防止には
二重の手袋とマスク、ヘアキャップも

国民の2人に1人が生涯に1度はがんを経験するといわれるなかにあって、抗がん剤はその治療効果をあげるうえで最も期待される薬剤となっています。
使用頻度の高さからも、がん患者にかかわる機会の多い看護師さんは、抗がん剤曝露が避けられない状況にあるといっていいでしょう。

リスクは確かにあるのですが、決められた保護具をきちんと着用し、取り扱いさえ間違っていなければ、看護師さんの職業性曝露は十分避けられることを、先に記事にまとめています。読んでいただけましたでしょうか。

がん患者にかかわる看護師には、抗がん剤の職業的曝露というリスクがある。調剤業務の担当者ほどではないにしても、抗がん剤治療を続けている患者の処置やケアにおいては、ガイドラインなどを参考に、曝露防止策の徹底が欠かせない。そのポイントをまとめた。

抗がん剤入り点滴管理のリスクだけではない

看護師さんにとって曝露リスクが最も高いのは、抗がん剤入りの点滴を接続・交換するとき、その点滴を終えて針を抜去するとき、その後始末、さらには点滴中の側管から薬剤を注入するといった場面です。
このようなときの防護策については、すでに徹底されていることと思います。詳しくは、日本がん看護学会監修によるこちらの本が参考になります。
⇒『見てわかるがん薬物療法における曝露対策 (がん看護実践ガイド)』(医学書院)

ところが、体内に取り込まれた抗がん剤が代謝された後に尿中や糞便中に、あるいは汗の中にも排泄されることまでは、あまり注意が及んでいないように思いますがいかがでしょう。

リネン・寝衣交換、清拭、排泄介助といった患者からの排泄物による抗がん剤曝露が予測されるケアを行うときは、二重にした手袋、マスク、ヘアキャップ、場合によってはゴーグルも着用して防護することが求められているのですが、励行しておられるでしょうか。
加えて、ドレナージの管理、特にドレーンからの排液を処理する際にはより慎重な防護策の実施が必要になってきます。

体内への貯留により
抗がん剤の排泄に時間を要している

ここであえてドレーンからの排液処理に限定して曝露対策を取りあげたのには、それなりの理由があります。
というのは、そもそもドレナージは、胸腔内や腹腔内などに貯留した消化液や血液、浸出液、膿などを体外に排出させることを目的としているものだからです。

体内に貯留していたぶんだけ、体内に送り込まれた抗がん剤の残留分や代謝産物の排泄には時間がかかることになり、自ずと防護策を実行すべき時間も長くなっているわけです。
ところがその排泄に要した時間を考慮することなく、「治療後すでに48時間以上経っているから」と防護策をしないまま排液を取り扱うようなことをしていないでしょうか。

これに、あなたの答えが「そういえば、48時間経ったからと安心している」だとしたら、抗がん剤に汚染されている可能性は高くなります。

ドレーン挿入部の皮膚トラブル対処時も防護策を

また、ドレーン管理でよく問題になるのは、ドレーン挿入部の皮膚トラブルです。
発赤やびらん、排膿、出血といったトラブルに対応しようというときは、患者が抗がん剤による治療中、あるいは治療を終えてから間もない時期ではないかどうかの確認を忘れずにしたいものです。

そのうえで、少なくとも治療終了後48時間以内であれば、抗がん剤曝露ということを念頭に防護策を実施していただきたいと思います。
詳しくは、国立病院機構(NHO)ネットワーク共同研究斑が現場目線でまとめた『抗がん薬曝露対策ファイル―NHOネットワーク共同研究参加32施設からの提言―』(じほう)も参考になります。

抗がん剤曝露防止策として
常に免疫力のレベルアップを

仮に看護師さんが抗がん剤の職業性曝露を受けたとしても、すぐにその影響が出る心配はありません。しかし、ごく微量ずつではあっても抗がん剤の曝露が長期間にわたって続くと、やはり健康への影響が心配になってきます。

実際、化学療法中の患者をケアしている看護師さんの尿中から、世界中で最もよく使われている抗がん剤の一つであるシンクロホスファミド(商品名はエンドキサン)が検出されたという研究報告もあります。それだけに、防護策はぜひ徹底していただきたいものです。

同時に看護師のあなたには、外敵から身を守ってくれる免疫力を、常にパワーアップしておくことをお願いしたい。
「夜勤などにより生活リズムが乱れがち」「イライラすることが多く、ストレスを感じることが多い」「口内炎ができやすい」「常に身体がだるく、疲れやすい」などの自覚症状は、免疫力低下のサインです。

腸内環境を整えて免疫力をパワーアップ

免疫力をパワーアップする最も効果的な方法は、からだの免疫細胞の約70%が集まっている腸内の環境を整えることです。
たとえば便秘は、腸内で悪玉菌だけが増えているサインと考えられます。腸内が悪玉菌に占拠されていては、免疫細胞の活性化は低下し、免疫力が著しく低下してしまいます。

そこで、たとえば乳酸菌がたっぷり入ったヨーグルトや乳酸菌飲料、あるいは青汁などで善玉菌を増やし、腸内環境のバランスを改善してあげると、便秘の改善、それによる免疫力アップにつながります。また、母乳、とりわけ初乳のチカラに注目して開発された免疫ミルクも、免疫力を高める効果が期待できるとされています。

とはいえやはり基本は、欠食や減食を避けて、栄養バランスのよい食事を1日3食きちんと摂り続けることです。その食事において、あるいは間食として、ビタミンやミネラル類を意識して多めに摂ることをおすすめします。

なお、抗がん剤治療を受ける患者・家族の抗がん剤による暴露防止策についてはこちらの記事を参考にしてみてください。

かつては入院患者に限られていた抗がん剤治療が、最近は外来や内服により在宅でも行われている。自ずと抗がん剤曝露対策は院内だけでなく家庭においても欠かせない。特に、治療後48時間以内の患者の尿の取り扱いには注意が欠かせないという話を書いてみた。