看護師のうつ病予防は食生活の見直しから




食の力でうつを防ぐ

看護師に多いうつ病予防に
「食事の力」を取り入れる

国立精神・神経医療研究センター 神経研究所の、功刀くぬぎ浩医師をご存知でしょうか。統合失調症やうつ病などの精神疾患を栄養学という新しい側面から研究を続け、これまで「薬と休養」が主体であったうつなどの精神疾患対策に「食事」を加え、生活習慣病同様にうつ病についても、日々の食生活が大切であることを広く一般にもアピールし、注目を集めている精神科領域の専門医です。

数年前にはNHKの朝の番組に出演して、うつを改善する食事の力を精神栄養学の観点から紹介しておられました。
また、NHKスペシャルなどの番組でも、脳科学からみたストレス対策を紹介するなど、メディアで取り上げられることが多くなっていますので、「ああ、あの先生!」と思い出される方も少なくないと思います。

今回は、この功刀医師らの研究グループがすすめている、「メンタルヘルスとしての食生活」、つまりこころの健康に「食事の力」を生かすという話を紹介したいと思います。

看護師さんに多いといわれているうつ病の予防、あるいは憂うつな気分の解消、あるいは軽減にも、役立てていただけるはずです。

慢性的ストレスから陥りがちな
うつの予防に食生活の見直しを!

うつ病はストレス性疾患であるといわれています。
看護職を対象にした比較的大規模な調査によれば、約7割の方が仕事にストレスを感じていることが明らかになっています。

そのストレスにより、「なんとなくイライラする」「ゆううつな気分がする」など、多くの看護職が何がしかの精神症状を自覚していることも調査結果が示しています。

看護という仕事はストレスの多い仕事です。ただ、7割の方が「不満・ストレス・悩み」を抱え、睡眠薬など精神神経系の薬を常用している方が少数とは言えいるということは、驚きです。まずは、その日の疲労はその日の睡眠で解決する努力を!!

ストレスな状態が慢性的に続くということは、うつ病の発症につながりやすいものです。
日頃から、こころの健康ということを自ら意識して、セルフケアに積極的に取り組んでいただきたい――とりわけ力を入れていただきたいのが、食生活の改善です。

多忙な中での食事で不足しがちな葉酸とn-3系脂肪酸

うつ病と栄養・食生活との関係に関する功刀医師ら研究グループの成果は、功刀医師の近著『こころに効く精神栄養学』(女子栄養大学出版部)にわかりやすく紹介されています。

エビデンスが豊富で、看護師さん自身のメンタルケアに活用するだけでなく、病名やその重症度に関係なく、自らの発病という事態に直面して気落ちしている患者にかかわるうえでも、必ず役立つ内容になっていますので、是非目を通してみてください。

詳しいことはこの本を読んでいただくとして、ここでは、功刀医師がうつ病との関連で特に注目している「こころに効く」2つの栄養素、「葉酸」と「n-3系多価不飽和脂肪酸」について、紹介しておきたいと思います。

緑黄色野菜と魚類中心の
できれば手作り料理を

葉酸は、水溶性のビタミンB群の一種です。
赤血球の生成に深くかかわるとともに、たんぱく質やDNAなどの核酸を合成するうえで重要な役割を担っています。
妊活・妊娠中の女性に葉酸の摂取が求められる理由は、葉酸のこの働きにあります。

また、脳内における神経伝達物質「セロトニン」の分泌・生成にも深く関与しています。
セロトニンは、脳内に満たされると、気持ちが落ち着いて幸せな気分になってくることから、「幸せホルモン」とも呼ばれているのですが、葉酸はこの幸せホルモンの脳内分泌を促す働きをしているのです。

葉酸の多い緑黄色野菜をこまめに摂る

葉酸はホウレンソウやブロッコリーなどの緑黄色野菜に多く含まれています。
これらの野菜料理、また葉酸とビタミンB1・B6・B12を強化した葉酸米 なども毎日の食事に積極的に活用されるといいでしょう。

ただ、葉酸は水溶性であるために食事として摂取しても、尿中にすぐに排泄され、体内に蓄積されにくいという特徴があります。
そのため、毎日の食事でこまめに摂取していくことが必要です。

血清葉酸値が低いとうつ病のリスクが高まる、という報告もあるそうです。
そのため、外食やコンビニ弁当などが多い方は、野菜ジュースでも結構ですから、緑黄色野菜を必ず一緒に摂ることをおすすめします。

手軽さで言えば、キャベツの原種であるケール(葉)100%の青汁、たとえばファンケル (FANCL) 1日分のケール青汁 なら、たっぷりの葉酸を摂ることができます。

葉酸の体内での消化・吸収に必要なビタミンB12も

なお、葉酸の体内での利用を高めるにはビタミンB12が必要ですから、その補給もお忘れなく。ちなみにビタミンB12は野菜類には少なく、魚介類や海藻類に多く含まれていることはご承知のことと思います。

葉酸が不足していないかどうか心配な方は、自宅でできる郵送検査、GENOTYPIST 葉酸代謝遺伝子分析キット(口腔粘膜用)でチェックし、その結果に応じて食事内容を変えるなり、サプリメントを活用するなりの対策をとるのもいいでしょう。

緑黄色野菜や果物がこころの健康に効くことを英国の研究チームが、最近発表した。が、我が国ではすでに3年余り前に、葉酸が憂うつ気分の改善やうつ病予防に効くことが報告されている。積極的に摂りたいが、葉酸は水や熱や光に弱い。その効率的な摂り方をまとめた。

神経の働きに必須のDHA&EPA

一方のn-3系多価不飽和脂肪酸は、鯖(さば)や秋刀魚(さんま)のような青魚の油分に多く含まれ、神経が正常に機能するためのエネルギー源として欠かせないものです。

DHA(ドコサヘキサエン酸)EPA(エイコサペンタエン酸)がその代表で、うつ病患者では、これらの血中濃度が優位に減っているそうです。

多忙にかまけて毎日の食事をコンビニ弁当などですませたり、インスタント食品やレトルト食品などの調理済み食品を多用する食生活を続けている方は多いと思いますが、その場合はいずれも摂取不足になりがちな栄養素です。

この際、緑黄色野菜と魚を一緒に摂取できる手作り料理に切り替えて、葉酸やDHAEPAをたっぷり摂取することをお勧めします。
料理は気分転換になり、疲れたこころを癒してもくれます。

手軽にDHAやEPAを補給したいときは、最近注目されているさばの缶詰を常備して毎日の料理に活用するのもいいでしょう。

個人的には、缶詰の成分表記にDHA・EPAの含有量がきちんと明記されている缶詰、たとえばマルハニチロ さば水煮月花がおススメです。
獲れたての鯖を直ちに真空加熱調理しているため、生の鯖を料理して食べるよりもDHA・EPAの含有量が多いことが実証されています。
水煮缶ですから塩分過多になる心配もなく、和洋中いずれの料理にも活用できて便利です。

なお、その素材選びやレシピについては、功刀医師が同センターの管理栄養士と著した『うつ病の毎日ごはん―国立精神・神経医療研究センターの医師と管理栄養士が教える 』が参考になりますのでチェックしてみてください。