法律問題に発展しそうな高齢者生活トラブル対応

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みて見ぬふりはできない
高齢者の生活トラブル

高齢者を中心に詐欺の被害が依然として多発しています。

被害にあった方の、なんと9割以上は、「自分だけは大丈夫と思っていた」と語っているようですが……。

大丈夫どころか、昨年(2021年)1年間の被害総額は281億9946万円にのぼることが警視庁のまとめで明らかになっています。

その手口は税金等の還付金詐欺、おれおれ詐欺、預貯金詐欺、キャッシュカード詐欺などですが、新型コロナウイルスの感染拡大に乗じた給付金交付詐欺などもあり、それだけで1憶円以上の被害が報告されているそうです。

この手の詐欺は高齢者が被害者になるほんの一例で、在宅医療・ケアの現場で訪問看護師やケアマネジャーが遭遇する法律問題に発展しそうなトラブルは、実に多彩で、しかも数も多いと聞きます。

このようなトラブルに「みて見ぬふりはできないが、具体的にどうしたらいいのかわからない」という方が多いのではないでしょうか。

そこで、こうした声に弁護士が応える一冊として、『あるある事例を徹底解説!弁護士が教えるケアマネのための高齢者生活トラブル対応・予防のポイント』が、昨年10月に第一法規株式会社から刊行されています。

タイトルには「ケアマネのための」とありますが、訪問看護師さんなど在宅ケアを担っておられるみなさんに共通する課題と考え、本書のポイントを紹介しておきたいと思います。

加害者にもなり得る
高齢者の生活トラブル

在宅医療・ケアの現場で訪問やケアの対象者である高齢者が法的支援を必要とするような被害に遭うケースは少なくありません。

お金にまつわる詐欺被害以外にも、介護虐待の被害者になることも考えられます。

また、被害者だけでなく、たとえば認知症による徘徊で他人の家に侵入してしまったり、認知症でわけもわからず万引きをしてしまったといったかたちで、加害者の立場に立ってしまうことも少なからずあるはずです。

このようなトラブルが発生したときに、当事者である高齢者やその家族を弁護士や警察官など適切な専門家や専門機関にどのようにつなぐかで迷うこともあるでしょう。

また、つなぐ際には、被害に遭った、あるいはトラブルを引き起こしてしまった高齢者のその時点での病状などについても、専門家たちにきちんと伝えて、相応の理解をしてもらうことも必要となってくるでしょう。

地域医療の現場で遭遇しがちな
23の高齢者生活トラブル事例

本書では、このような高齢者の生活トラブルのなかからよくある23のエピソードを事例として取り上げ、個々の事例につき、迅速かつ的確に対応するための留意点と予防のポイントが解説されています。

解説しているのは、介護・福祉関係の各種団体において法律アドバイスや多くの講演活動、研修会を行っている、現役弁護士の真下美由紀(ましもみゆき)氏です。

また、各事例の最後には、「ムロさんの支援ポイント」として、ケアタウン総合研究所代表で、ケアマネジメント研修の第一人者である高室成幸氏の対応術が紹介されています。

  1. テレビジョンショッピングで不用品を買い込んでしまった
  2. クレジットカードで高額の買い物をしてしまった
  3. 屋根の点検業者に高額の工事をされてしまった
  4. 訪問してきた業者に宝飾品を安く売ってしまった
  5. 認知症の夫名義名義で契約している賃貸住宅の更新
  6. 父名義の土地を子どもが売ることはできる?
  7. 運転免許の返納をすすめるには
  8. 利用者の家の庭木が道路にはみ出している
  9. 利用者の家にゴミがたまり始めている
  10. 認知症のある利用者が万引きをしてしまった?
  11. 利用者によるストーカー&セクハラ
  12. 他人にけがをさせてしまった・けがをさせられた
  13. 利用者が友人に貸したお金を返してもらえない
  14. 徘徊して踏切に侵入しそうになった
  15. 利用者の自宅に市役所からの督促状が
  16. 入居予定の施設の事前面談、個人的なことに立ち入りすぎでは……?
  17. デイサービスを提供している事業所のSNSに顔の写真が投稿された
  18. 効力の有る遺言書のつくり方
  19. 家族が利用者をどなりつけたり無視したりする
  20. 利用者の家族から介護サービスの解約・変更の申し出があった
  21. ものを盗まれたと思い込んでしまう
  22. 同居人がケアプランに口出ししてくる
  23. 多額の現金を自宅で管理している

(引用元:『高齢者生活トラブル対応・予防のポイント』目次より)


高齢者のトラブル対応で
知っておきたい成年後見制度

わが国では民法上の制度として、「成年後見制度」が2000年4月から導入されています。

高齢者の生活上のトラブルに対処していく際には、この制度のことを頭に入れておく必要があります。

「成年後見制度」とは、認知症や精神上の障害などにより判断能力や意思表示能力になんらかの問題が継続的に見られる方の、意思決定を支援するとともに、本人の権利を擁護するための仕組みです。

この制度では、成年被後見人である本人と事前に契約を取り交わした「成年後見人」あるいは「保佐人」「補助人」と呼ばれる人(以下、成年後見人等)が、主に「財産管理」と「身上監護」について、生活を維持、継続していくうえで必要となる法律行為を、本人の診断能力の程度などに応じて、以下の2点を行うことを認めています。

  1. 本人を代理して行う(代理権)
  2. 本人が自分で行うときに同意を与える

ここでいう「財産管理」として成年後見人等に認められているのは、印鑑、預金、各種証券などに関する管理業務です。

一方の「身上監護」としては、本人の生活全般に関する契約の締結、(契約した)相手方の履行の監視、費用の支払い、契約の解除など、事務的な業務が該当します。

具体的には、介護保険に関する要介護認定の手続き、年金に関する手続き、生活保護の申請、介護関連施設や病院への入退所・入退院の手続き、病院の受診手続きなどがあげられます。

成年後見人等には身分証明書の確認を

なお、「後見人」と名乗っている人のなかには、本人の世話をしているという意味で後見人と自称している人もいるようです。

本来の「成年後見人等」には、「後見登記事項証明書」と「身分証明書」を提示して業務を行うことが求められていますから、その確認をお忘れなく。

高齢者の成年後見制度を利用に関して確認したいことなどがあれば、各地にある成年後見センターや権利擁護センターに相談することができます。

この辺の詳しいことは、こちらを読んでみてください。

退院困難患者のなかには身寄りがない人が多い。特に患者の判断力が低下している場合は、成年後見制度の利用を検討することになろう。ただ、この制度では、被後見人である患者の意思が書類に明記されていないと退院支援の意思決定に後見人が関わることできないことを知っておきたい。