新型コロナ感染予防のマスク着用と熱中症予防




水

マスク着用により
熱中症リスクが高まる!?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の緊急事態宣言は、7週間ぶりに全面解除となったものの、感染が完全に収束したわけではありません。

気を緩めることなく、人との距離をとったり、これまで以上に手指衛生に気を使ったりと、政府の専門家会議が提言した「新しい生活様式」を実直に継続していくことが、「コロナ時代の新たな日常を取り戻していく」一番の近道だと言われています。

この「新しい生活様式」では、当然「マスクの着用」が求められます。
ただ、すでに熱中症のシーズンに入っています。

しかも、気象庁が5月25日に発表した3か月予報によれば、今年の夏は全国的に、平年以上に「暑い夏」になりそうとのこと。

マスクの着用により、熱中症のリスクはさらに高まるのではないだろうか――。

そんな心配する声が上がるなか、厚生労働省と環境省が今年度の熱中症予防行動として、
「新しい生活様式」における熱中症予防の注意点を指針としてまとめ、公表しています*¹。

ソーシャルディスタンスを
確保できていればマスクを外す

ソーシャルディスタンス(身体的距離)の確保、手指衛生の励行、3密(密集、密接、密閉)の回避、そしてマスクの着用などの実践が求められる「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイントとして挙げられているのは、次の5点です。
1.暑さを避けましょう
2.適宜マスクをはずしましょう
3.日頃から健康管理をしましょう
4.こまめに水分を補給しましょう
5.暑さに備えた体づくりをしましょう

このうち感染予防策としての「新しい生活様式」を考えたときに、まず戸惑うのは、
「2.適宜マスクを外しましょう」の「適宜」ではないでしょうか。

マスク着用は、着用していない場合と比べ、心拍数や呼吸数、血中二酸化炭素濃度、体感温度が上昇するなど、身体に負担がかかることがあり、特に高温多湿の環境下でのマスクの着用は熱中症のリスクを高める可能性があるとされています。

このことから、「適宜」の目安として、指針には、次のような注意点が列記してあります。
① 気温・湿度の高い中でのマスク着用は要注意
② 屋外で人と十分な距離(2m以上)を確保できる場合はマスクを外す
③ マスクを着用しているときは、負担のかかる作業や運動を避け、周囲の人との距離を十分とったうえで、適宜マスクを外して休憩する

一時的にマスクを外すときは、マスクの外側に付着しているウイルスを含むかもしれない他人の飛沫がマスクの内側に付着して、かけ直したときにその飛沫と一緒にウイルスを吸い込むことがないように、抗菌マスクケース のような専用のケースに一時的に保管することをおすすめします。それと、素手でマスクの外側に極力触れない注意も忘れずに!!

熱中症リスクの指標
「暑さ指数」をチェックする

自分が身を置いている今の環境が、マスクを着用していると熱中症リスクを高める「気温・湿度の高い中」、つまり高温多湿の状況にあるのかどうかを、皮膚感覚ではなく、より客観的に判断する指標としては、環境省が公表している「暑さ指数(湿球黒球温度:Wet Bulb Glove Temperature ; WBGT)」*²が参考になります。

「暑さ指数」とは、地域ごとの気温や湿度、さらには日射熱、輻射熱といった周辺の熱環境をもとに、次の5段階で熱中症の危険度を指数化したものです。
( )内は温度基準を示す。

  • ほぼ安全(21℃未満)
  • 注 意 (21℃以上~25℃未満)
  • 警 戒   (25℃以上~28℃未満)
  • 厳重警戒(28℃以上~31℃未満)
  • 危 険 (31℃以上)

環境省は「熱中症予防情報サイト」で、全国840地点における「当日」「翌日」「翌々日」の3時間ごとの予報値、および現在の暑さ指数予測値(1日1回)を色分けして紹介するとともに、メール配信でも情報を無料で提供しています。

この「暑さ指数」をチェックするとともに、室内には温度計を常設して、室温が暑さ指数で「厳重警戒」に相当する28℃を超えないように、エアコンや扇風機を上手に活用することも、熱中症予防と同時にマスクを安全に着用するうえで大切になってきます。

この場合の温度計として、最近ではタニタ 黒球式熱中症指数計 熱中アラーム のように、屋内はもちろんのこと、炎天下の屋外でも、そのときその場の暑さ指数を計測し、リスクが高いときはてアラーム音と数値で知らせてくれる熱中症指数計が各種市販されています。
活用してみてはいかがでしょうか。

環境省と気象庁は2020年7月1日より、暑さ指数が33℃を超えた場合に「熱中症警戒アラート」を発令する試みを、1都8県においてスタートします。詳しくは、こちらの記事を参照してください。

熱中症予防でマスクを外しても
咳エチケットは忘れずに

熱中症を防ぐためとはいえ、新型コロナウイルスの感染が収束したわけではありませんから、「マスクを外しても本当に大丈夫かしら」と、心配する声もあります。

感染予防策としてのマスク着用の本来の目的は、咳やくしゃみをした際に飛び散る飛沫(ウイルスを含むリスクのあるしぶき)が周りの人にかかるのを防ぐことにあります。
つまり、「咳エチケット」です。

新型コロナウイルスについては、空気感染することを示す科学的根拠は現時点では得られていません。したがって、ソーシャルディスタンス(2m)の範囲内に人がいないところでは、
「マスクをしていないからウイルスに感染するのではないか」といった心配は無用です。

ただし、新型コロナウイルスに感染したからといって、すぐに症状が出るわけではありません。感染している自覚がないまま濃厚接触者にうつしてしまうことも十分あり得ますから、熱中症予防でマスクを外しているときに、咳やくしゃみをする際は、ティッシュやハンカチで鼻と口を覆うことはエチケットとして身につけておきたいものです。

新型コロナウイルスの感染予防としてのマスクの効用については、こちらの記事で内外の研究結果やWHOの見解を紹介していますので、読んでみてください。
→ 新型コロナウイルスの感染予防とマスクの着用

エアコンで室内を冷房中も
1時間に2回の換気を忘れずに

もう1点、指針の「1.暑さを避けましょう」に関しても、多くの疑問の声が上がっています。
指針では、「暑さを避ける」具体的な方法として、以下の5点をあげています。
① エアコンを利用するなどして、部屋の温度を調整する
② 換気扇や窓開放により換気を確保しつつ、エアコンの温度設定をこまめに調整する
③ 暑い日や時間帯は無理をしない
④ 涼しい服装にする
⑤ 急に暑くなった日などは特に注意する

新型コロナウイルス感染症を予防するためには、屋内では、エアコンにより冷房している時でも、毎時2回を目安に換気扇を回したり窓を開放して換気を確保する必要があります。

換気をすれば高温高湿の外気が入り込み、当然屋内の温度は高くなりますから、熱中症予防のためにエアコンの温度設定をこまめに調整することが必要になってくるというわけです。

「エアコンが換気してくれる」は誤解です

ところでこのエアコンの使用については、「エアコンが換気をしてくれるので窓を開けたりする必要はないだろう」との声があるようですが、これは完全な誤解です。

各種あるエアコンの中には換気機能付きのものもあるにはあるようです。しかし、大半のエアコンには、換気機能がついていません。室内の空気を循環させているだけですから、「せっかく部屋が冷えたのに」などと考えずに、感染対策としての換気を励行することをお忘れなく。

6月1日に日本救急医学会など関連4学術団体が「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」を発表しています。
そこでは、N95マスクの着用と熱中症の関係にも言及していますので、読んでみてください。
→ マスク着用と熱中症予防に学術団体が緊急提言

なお、熱中症対策に欠かせない「こまめな水分補給」としてのスポーツドリンクについては、カロリーオーバーや虫歯のリスクがあるという話をこちらの記事で詳しく書いています。
→ 熱中症対策はミネラル入りなたまめ茶で

また、熱中症対策として「水分や塩分をこまめに摂りましょう」とアピールされて困っている減塩治療中の高血圧患者の「塩分の摂り方」に関する日本高血圧学会の見解はこちらで。
→ 高血圧患者の熱中症予防に減塩指導は?

参考資料*¹:「新しい生活様式」における熱中症予防の注意点
参考資料*²:暑さ指数