新型コロナウイルスの感染第2波に備え訪問看護ステーション間の連携を




連携

感染第2波を見据え
全国に先駆けた取組み始まる

5月23日現在、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言が継続しているのは、東京など首都圏の1都3県と北海道です。
幸い、これらの地域における新規感染者は引き続き減少傾向にあります。

政府は、このまま今の傾向が続き、緊急事態宣言解除の目安とされる
「直近1週間の合計で新規感染者数が10万人あたり0.5人未満」
をクリアできれば、25日にも宣言を解除する方針だと伝えられています。

なんとかこのまま推移すれば全面解除となりそうです。
しかし、これで出口が確実に見えてきたわけではありません。
収束に向けての「通過点」であることは、海外の多くの例でも実証済みです。

気を緩めることなく、新型コロナウイルスの感染第2波、さらは第3波を見据えた対策が医療機関などで鋭意進行中と聞きます。

訪問看護の現場でも、一足先に緊急事態宣言が解除された大阪において、感染第2波に備えた新しい取組みが始まっていると報じられています。
今日はその概要を紹介してみたいと思います。

休業ステーションに代わり
訪問サービス提供の体制を

訪問看護の現場ではこれまでにも、訪問看護師が新型コロナウイルスに感染する、あるいは訪問看護師が濃厚接触者*になるなどして、休業を余儀なくされた訪問看護ステーションが出ており、訪問サービスをいか維持していくかが喫緊の課題となっています。

この先、感染第2波、さらには第3波が発生する可能性も否定できないことを考えれば、訪問看護師の一人ひとりがいかに万全の感染予防策をとったとしても、「スタッフの感染により休業」といった事態をゼロに抑えていくのは容易ではないでしょう。

そこで、万が一「休業やむなし」となってしまった場合を想定し、地域の訪問看護ステーションが相互に連携し合うことにより、1つのステーションが感染により訪問サービスを提供できなくなっても別のステーションが看護師派遣を代行できる体制を構築しておく取組みが、すでに4月から動き始めているのです。

この取組みを呼びかけたのは、大阪市生野区で「訪問看護ステーションかっさい」を運営する平山司樹(しげき)さんです。

ちなみに平山さんについては、2年ほど前(2018年3月)、全国初の男性「在宅看護専門看護師」として、地元誌のみならず全国誌でも紹介されたことがありますから、「ああ、あの方ね」と思い当たる方も少なくないのではないでしょうか。

*濃厚接触者の定義が4月21日改訂されている。
COVID-19の確定患者が発症した2日前から接触した者のうち、以下が該当する。
①その患者と同居、あるいは15分以上の接触(車内、航空機等内を含む)があった者
⓶適切な感染防護なしに患者(確定例)を診察、看護もしくは介護していた者
③患者(確定例)の気道分泌物もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
④手で触れる、または対面で会話することが可能な距離(目安として1m以内)で、必要な感染予防策なしで患者と15分以上の接触があった者

「訪問看護指示書」の発行に
地元医師会の協力も必要

平山さんの呼びかけに応えてこの取組みに参加しているのは、現時点で16の訪問看護ステーションで、これは区内にあるステーションのおよそ3割に当たるそうです。

この取組みでは、休業を余儀なくされた訪問看護ステーションが発生した場合、調整役を担うステーションが当該ステーションの利用者の情報を取りまとめ、ケアニーズが高い利用者を中心に、連携する別のステーションから訪問看護師を派遣してもらうということになります。

医療依存度が高く医療保険で訪問看護を利用している場合は、在宅主治医(かかりつけ医)による「訪問看護指示書」、場合によっては「特別訪問看護指示書」が必要となります。
この点については、地元医師会の協力を得て、該当地域の医師に対応を要請するそうです。

平山さんらの取組みは全国でも珍しく、今後予想される感染第2波、第3波への有効な対策として、全国的な普及が期待されます。

新型コロナ感染蔓延下での
訪問看護の実態をWEB調査

日本訪問看護財団は5月8日、新型コロナウイルス感染症の訪問看護事業への影響(4月1日時点)に関する緊急アンケートWEB調査の結果を発表しています*¹。

この調査は4月16日~24日の期間に、加盟する全国2714の会員(個人・団体)を対象に行い、424のステーションから回答を得ています。

このなかで、「訪問看護ステーションが休業した場合、利用者を引き受ける他の事業所を決めているかどうか」を尋ねています。

これに対する回答を見ると、自分の訪問看護ステーションが休業せざるを得なくなった場合に利用者の引継ぎ先を決めているのはわずか13.4%にとどまっています。

ちなみにその内訳は以下のとおりです。
▪「決めている」 ⇒ 13.4%
▪「決めていない」⇒ 39.4%
▪「検討中」   ⇒ 43.9%
▪「考えていない」⇒ 3.3%

休業時の備えとして利用者移行等の連携体制を

同調査では、新型コロナウイルス感染症の発生状況についても尋ねています。

その結果、回答者が所属する訪問看護ステーションにおいて、新型コロナウイルス感染症(疑い例を含む)が発生したのは、利用者が6.4%、スタッフ2.1%となっています。

その結果、16のステーション(3.8%)において、近隣の訪問看護ステーションと利用者移行等の連携が実際に必要になったと回答していることからしても、感染の第2波、第3波への備えとして、近隣の訪問看護ステーションとの連携体制の構築が必須といえそうです。

新型コロナウイルス感染による
一時的欠員には柔軟な対応を

すでにご承知のことと思いますが、厚生労働省老健局保健課は、新型コロナウイルス感染症に係る訪問看護に特化したQ&AをWEBサイトに掲載しています*²。

そこでは、新型コロナウイルス感染症にスタッフが感染し、あるいは濃厚接触者となったために一時的に人員基準を満たすことができなくなった場合、介護報酬、人員、施設・設備及び運営基準については、「柔軟な取り扱いを可能とする」旨明記されています。

いざというときに慌てないために、是非事前に目を通しておいてください。

なお、新型コロナウイルス感染症の軽症者の療養場所については、4月24日より、従来の自宅療養は原則禁止となり、基本として、都道府県が借り上げたホテルなどの宿泊施設を利用することに変更となっています。
→ COVID-19軽症者らの療養は宿泊施設を基本に

しかし、育児や介護を必要とする家族がいるなどの理由から、自宅療養を選択せざるを得ないケースも少なからずあるようです。

その際の自宅療養中の感染者と家族への対応については、こちらの記事で詳しく書いていますので、参考にしてみてください。
→ 新型コロナウイルス感染症への家庭内での対応 訪問看護に活用を

また、具体的な感染予防の方法については、感染症専門医が市民向けに作成したこちらのハンドブックを活用してみてはいかがでしょうか。
→ 専門家による市民向け新型コロナウイルス感染症「感染予防ハンドブック」を患者指導に活用を

参考資料*¹:第6報 新型コロナウイルス感染症に関する本財団WEB調査の結果(速報)と訪問看護関連情報
参考資料*²:「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて」〈訪問看護に係る事項まとめ〉