新型コロナウイルス「ネコからネコへ」感染伝播




ネコ

新型コロナウイルスに
ネコが感染し、ネコへと伝播

ペットブームのなか、ネコを飼っている方には気になる研究結果が発表されています。

新型コロナウイルスはネコに感染し、接触感染によりネコからネコへと伝播、つまり感染が広がる可能性があることが実験で確認されたというのです。

新型コロナウイルスの動物への感染については、米国ニューヨーク州で飼いネコ2匹が新型コロナウイルスのウイルス検査で陽性反応を示したことが、4月22日、米国疾病対策センター(CDC)の発表として、報道されています。

ネコだけではありません。
同州のニューヨーク市にある動物園では、同じネコ科のトラやライオンでも新型コロナウイルスの感染が確認されたことが伝えられています。

東京大学医科学研究所・研究グループが実験

こうした事態に、東京大学医科学研究所の河岡義裕教授ら研究グループは、新型コロナウイルスに対するネコの増殖能と感染伝播能、つまり「ネコはどのくらい新型コロナウイルスに感染しやすいか、またどの程度の感染力をもつのか」を調べる実験を行っています。

その結果を5月14日、
「ネコは新型コロナウイルスに感染しやすく、感染したネコは症状を示さないものの、ネコ間で感染が広がる可能性のあることが示唆された」
と、同研究所のWEBサイトで発表しています*¹。

ウイルスが呼吸器で増殖し
別のネコに接触感染する

研究グループはまず、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者から分離したウイルスを3匹のネコに接種しました。

すると、すべてのネコの鼻腔粘膜からウイルスが検出され、このうち2匹については、接種後6日目までウイルスが確認されたそうです。

次に、感染したネコ1匹がいるケージに、まだ感染していないネコ1匹を入れて同居させたところ、3ペア中3ペアとも、3日目から6日目までの間に後から入れたネコからもウイルスが検出され、感染が広がったことが確認されたというのです。

飼いネコは戸外に出すのを控える

こうした結果から研究グループは、新型コロナウイルスはネコの呼吸器でよく増殖し、接触によってネコ間で容易に感染が広がる可能性があることがわかったとし、
「飼いネコを家の外に出すことを控えるなど、飼い方に注意してほしい」
と呼び掛けています。

なお、ニューヨーク州においてウイルス検査で陽性反応を示した2匹のネコについては、1匹は飼い主が新型コロナウイルスの感染者だったことがわかっています。

もう1匹については感染源がはっきりしていないものの、米国CDCは、ヒトから感染したものと推測しているようです。

なお、この研究は東京大学医科学研究所と米国ウィスコンシン大学、国立国際医療研究センター、国立感染症研究所による共同研究です。
研究の成果は、2020年5月13日米国科学雑誌「New England Journal of Medicine(NEJM)のオンライン速報版にて公開されています。

厚生労働省がWEBサイトで
ペット飼育上の注意を喚起

飼育しているペットの新型コロナウイルス感染に関しては、厚生労働省がWEBサイト上の特設コーナー「新型コロナウイルス感染症について」のなかで、
「動物を飼育する方向けQ&A」*²として情報を提供しています。

そこでも、動物での新型コロナウイルス感染事例は、いくつか報告されているものの、世界的にもわずかな数に限られているとしています。

そのうえで、「これまでのところ、新型コロナウイルスがペットからヒトに感染した事例は報告されておりません」と伝えています。

ペットが動物由来感染症にかからないために

新型コロナウイルス感染症については、現時点ではペットからヒトへの感染は起きていないものの、注意は必要でしょう。

厚生労働省はこのコーナーで、動物由来感染症*にかからないために、ペットを飼育している人は以下の点に注意するよう促しています。
⑴ 動物との過度な接触は控える
⑵ 普段から動物に接触した後は、手洗いや手指用アルコールでの消毒を行う
⑶ ペットの体調が悪い場合は、できる限り不必要な接触を避ける

*動物由来感染症とは、文字どおり、動物から人間にうつる感染症のことで、「人畜共通感染症」とも呼ばれている。動物による噛み傷(狂犬病)やひっかき傷(ネコひっかき病)、口の周りや傷口を舐められてうつる(オウム病)ものなど、感染経路は多々ある。
また、間接伝播といって、家畜や魚介類が病原体をもっている場合に熱を加えずに食べたりすることで感染を受けるものもある(E型肝炎、サルモネラ症、ノロウイルス感染症、アニサキス症など)。

ペット類の感染防御に向け
日本獣医師会がメッセージ

日本獣医師会も5月1日、WEBサイトにて「愛玩動物と新型コロナウイルス感染症について」と題するメッセージを公表し、ペット類を新型コロナウイルスから守るために感染防御策を徹底するよう呼び掛けています*³。

そこではまず、動物の新型コロナウイルス感染に関する世界各国から報告されている最新の知見として、以下の2点を紹介しています。

  • ニューヨークやインドの動物園でネコ科動物(トラ・ライオン)への感染が、またベルギーやアメリカでネコへの感染が報告されている。
    しかし、愛玩動物(ペット)からヒトへの感染事例の報告はなく、ベルギー当局は「愛玩動物から人に感染する危険性はない」としている
  • 中国やドイツで行われた動物実験では、ブタやニワトリは新型コロナウイルスに非感受性(ウイルスに対して抵抗力があり、感染を阻止する)であり、イヌもほとんど感受性がないことが確認されている。
    しかし、ネコとフェレット(イタチ科の肉食性哺乳小動物で1人暮らしのペットとして人気が高い)は感受性が高く、このうちネコは呼吸器症状はないものの消化器症状を呈し、ネコからネコへの感染が見られることが報告されている

新型コロナウイルス感染拡大下でのペットへの対応

以上の知見を踏まえ日本獣医師会は、新型コロナウイルス感染拡大下でのペットへの対応として以下5点を遵守することを推奨しています。

  1. 新型コロナウイルス感染者と濃厚接触したペットが感染するリスクはゼロではないことから、自分のペットを感染から守るためにも、飼い主が万全の感染防御策を講じる
  2. ヒトからネコ、ネコからネコへの感染リスクが考えられることから、通常の感染防御策に加え、ネコは戸外に放さず室内で飼育することを厳守する
  3. 新型コロナのウイルス検査で陽性となった飼い主と濃厚接触のあったペットに何らかの症状が認められた場合は、事前にかかりつけの獣医師に電話にて相談のうえ、獣医師の指示に従い動物病院で診察を受ける
  4. 診察に当り獣医師は、個人用防護具(マスク、ゴーグル、防護衣等)の使用を徹底し、十分な感染防護策をとったうえで診察する
  5. 診察の結果から検査の必要があると判断したときには、獣医師自ら国立感染症研究所獣医科学部(03-5285-1111)に検査の必要性を問い合わせる

参考資料*¹:東京大学医科学研究所「新型コロナウイルスはネコの間で感染伝播する」
参考資料*²:厚生労働省「動物を飼育する方向けQ&A」
参考資料*³:日本獣医師会「愛玩動物と新型コロナウイルス感染症について」
http://nichiju.lin.gr.jp/covid-19/covid-19_file8.pdf