新型コロナウイルス感染症対策の個人防護具が手に入らない時の対応




N95マスク

新型コロナウイルス感染症の
院内感染が増えている

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)で国内最初の患者が報告されてから、すでに3か月余りが過ぎました。厚生労働省の統計では、4月30日12時時点の国内の患者数は8515人、無症候性感染者は1万0011人に達しています。

感染者数の増加に伴い、COVID-19による院内感染が各地で発生しています。

日本看護協会の調査によれば、4月20日の時点で、国内19都道府県にある54の医療施設において院内感染もしくは院内感染が疑われる事例が発生しており、その感染者数は、東京都内の315人を筆頭に、全国で783人にのぼっています*¹。

無症候性感染者が多く
院内感染を防ぎにくい

COVID-19には、潜伏期間がたった1日のケースもあれば2週間前後のケースもあってあまりに幅広いうえに、症状が現れるケースでも、普通の風邪とあまり変わらない症状が1週間ほど続くため、発見が遅れがちという課題があります。

しかも、無症候性感染者(「無症候性病原体保有者」とも言う)と呼ばれる、PCR検査で陽性反応が出ても症状がほとんどないために、本人の自覚がないまま動き回り、周りの人に感染を広げるケースが多発していることが指摘されています。

実際、慶応大学病院は4月23日、COVID-19以外の患者67人に対し、入院前や手術前にPCR検査を行った結果、COVID-19の症状を自覚している患者はいなかったものの、6%にあたる4人が陽性だったことが確認されたと報告しています。

この6%という数値は、発熱や呼吸器症状以外の訴えで医療機関を訪れる患者の感染状況を反映している可能性があると考えることができます。

COVID-19院内感染対策の基本として、診療科の別なく、また救急外来においても標準予防策の徹底が欠かせないことを、改めて実感させられるデータと言っていいでしょう。

エアロゾルによる感染防護には
N95マスク着用が必須だが

ところが現在は、どの医療現場も院内感染対策に欠かせない個人防護具類が絶対的に不足しており、対策の徹底を難しくさせています。

COVID-19と診断または疑われている患者は、個室隔離が望ましいとされています。

この個室に出入りする看護師ら医療従事者は、顔の粘膜汚染を防ぐために、眼、鼻、口を完全に防護するPPE(サージカルマスクとゴーグルまたはフェイスシールドの組み合わせ、あるいはシールド付きマスク)、長袖ガウン、手袋を着用することが求められます。

さらに、PCR検査用の下気道検体の採取や気管内吸引、気管内挿管など、一時的にエアロゾルが発生する危険性のある手技を行う場合は、サージカルマスクに替えてN95微粒子用マスク(以下、N95マスク)を着用することがすすめられています。
ところが、このN95マスクが手に入りにくくなっているのです。

N95マスク不足時の
再利用等、例外的取扱い方

個人防護具、とりわけN95マスクの不足は、国内のみならず全世界でも深刻化しています。
この事態を受け、米国疾病予防管理センター(CDC)の下部組織である米国労働安全衛生研究所(NIOSH)は、3月5日、「N95マスクの延長使用及び限定的再使用に関する推奨ガイダンス」を発表しています。

厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策推進本部も4月10日、使い捨てとされているN95マスクをやむを得ず再使用する際の留意点を、「N95マスクの例外的取り扱いについて」としてまとめ、全国の関係部署に通達しています*²。

そこでは、N95マスクはエアロゾルが発生するような手技を行うとき専用とし、それ以外の場面では、サージカルマスク等を適切に使用することを推奨。
そのうえで、N95マスクの効率的な使用法として以下の留意点をあげています。

  • 過酸化水素水プラズマ滅菌器の活用や1人に5枚配分し、使用後は通気性のよいバッグに5日間保管して毎日取り換え、5日間のサイクルで使い回しするといった方法により、再利用に努める
    (NIOSHのガイダンスは、「再利用は2回まで」としている)
  • 必要な場合は、有効期限にかかわらず使用する
  • 複数の患者を診察する場合は、その日のN95マスクを1日継続して使用する
    ただし、目に見える汚れがあったり、損傷して形崩れしている場合は破棄する
    食事などでN95マスクを外す必要がある場合は、患者のケアエリアから離れる
  • 使用者がわかるようにN95マスクには氏名を明記し、交換は1日1回とする
  • KN95マスク(米国のN95規格に合わせて中国で開発されたマスク)などの医療用マスクもN95マスクに相当するものとして取り扱い、活用するように努める

N95マスク以外の
防護具の例外的取扱い方

■フェイスシールドの作り方
N95マスク以外の感染防護具のうち「フェイスシールド」については、大阪大学大学院医学系研究科の中島精一特任教授らのグループが、メガネフレームの世界的メーカー「シャルマン」との共同研究により開発した、クリアファイルと3Dプリンターで作成したフレームでフェイスシールドを完成させる方法を公表しています。

作成方法の詳細は、フレーム部分の3D用設計データとともに、こちらの記事で具体的に紹介していますので、参考にしてください。

新型コロナウイルス感染症の感染対策としてのマスク着用につき、WHOは指針を修正し、咳エチケットの効用を認める見解を新たに明記。これを受け、米国CDCもマスクの着用を推奨。欧州各国も同じ動きを見せている。布製マスクにも言及しているこの指針を紹介する。

■サージカルマスクの例外的取扱い
サージカルマスク、長袖ガウン、ゴーグルおよびフェイスシールドについても、厚生労働省は4月14日、全国的に不足している現状に鑑み、やむを得ず例外的取扱いとして再利用などを容認すること、その際の留意点について、全国に通知を発出しています*³。

そのなかで、まずサージカルマスクの不足により例外的に取扱う際の留意点としては、以下をあげています。

  • サージカルマスクの使用機会に優先順位を設ける
  • サージカルマスクが必要不可欠な処置やケアを行う場合、感染リスクのある患者との密接な接触が避けられない場合などを優先する
  • 複数の患者をケアする場合は、同一のサージカルマスクを継続して使用する
  • 継続使用により目に見えて汚れたり損傷した場合は、直ちに破棄する
  • サージカルマスクを外す必要がある場合は、患者のケアエリアから離れる
  • サージカルマスクを外す際は、マスクの外面を内側にして折りたたみ、接触感染を避ける

■長袖ガウンの例外的取扱い
また、長袖ガウンの例外的取扱い上の留意点としては、以下をあげています。

  • ガウンの使用機会に優先順位を設ける
  • 優先すべきは、①血液など体液に触れる可能性のある手技、②エアロゾルが発生する可能性のある手技、③上気道検体の採取、④患者の体位交換や車いすへの移乗、など
  • コホーティング(集団隔離)された複数の患者をケアする場合は、同一のガウンを継続して使用し、コホーティングされた場所を離れる際にはガウンを脱ぐ
  • 不足時は使い捨てレインコート 、いわゆる雨がっぱのような体全体を覆うことができ、使用後は破棄できるもので代用する

参考資料*¹:日本看護協会「全国の院内感染の状況」
参考資料*²:厚生労働省「N95マスクの例外的取り扱いについて」
参考資料*³:厚生労働省「サージカルマスク、長袖ガウン、ゴーグル及びフェイスシールドの例外的取扱いについて」