新型コロナ感染再拡大 感染対策の基本徹底を




コロナ

WHOテドロス事務局長
「若者の気の緩み」に警告

スペインやフランス、そして日本においても新型コロナウイルスの感染者が再び増え始め、さらなる感染拡大に警戒感が高まっています。

この事態に、WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長は7月30日(日本時間31日未明)、スイスのジュネーブにあるWHO本部で記者会見し、「若者たちが危機意識を緩めたことが、感染者急増の一因」と指摘しています。

そのうえで、「若者は無敵ではない。感染もするし、発症して重症化し、死亡することもある。別の人に感染させて、その人の命を奪うリスクもある」と警告。

マスクの着用や人混みを避けてフィジカルディスタンス(身体的距離)を確保することなど、感染対策の基本に今一度立ち戻り、警戒を怠らないよう呼びかけています。

会見に同席した新型コロナウイルス担当技術責任者のバンケルコフ氏も、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復した患者のなかには、重度の倦怠感や息切れなどの後遺症に悩まされ、社会復帰に支障をきたしている人が少なくないことに言及。
今一度基本的な感染対策を徹底するよう注意喚起をしています。

国内新規感染者1500人超え
感染再拡大が鮮明に

国内では31日、新型コロナウイルスの新規感染者が各地で過去最多を更新して初めて1500人を超え、感染の再拡大が鮮明になっています。

ただ、メディアが連日伝える新規感染者数に一喜一憂すべきではないはずです。

急増の背景には、東京都や大阪府等の都市部において「夜の街」関連のクラスター(感染者集団)発生を機に無症状者も含め濃厚接触者の検査を徹底したことにより、PCRなどの検査数が大幅に増えているといった現実があるからです。

実際、東京都では、7月の検査数が感染第1波が起きた4月のほぼ10倍に増えています。
1日当たりのPCR検査数に占める1日当たりの陽性者の割合を示す「検査陽性率」は、4月は30%を超えていましたが、7月下旬では6%台を維持しています。

医療体制の逼迫度(ひっぱくど)として重視される重症者*数は、4月下旬には105人を抱えていました。7月も下旬には、家庭内や職場での感染による若者から中高年層への感染拡大に伴い増加傾向にあるものの、31日時点で31人にとどまっています。

*厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVOD-19)診療の手引き・第2版」では「重症」を、「ICUに入室」または「人工呼吸器が必要」な状態で、肺水腫により人工呼吸器管理に抵抗があるときはECMO(体外式膜型人工肺)の導入を検討する、と説明している。
→ 新型コロナ診療の手引き改定「重症度分類」提示

政府の対策分科会
感染状況を4段階で評価

こうした状況に政府は、31日に開催した新型コロナウイルス感染症対策分科会(会長:尾身茂・地域医療機能推進機構理事長)で、各都道府県で今後想定される感染状況を4段階で評価することとし、その評価指標を作成することを決定しています。

各都道府県が、その日の新規感染者数だけに振り回されることなく、感染状況を的確に把握し、より迅速かつ冷静に対策を講じるのが狙いです。

新たに作成する指標の数値は来週にも検討し、先に政府の新型コロナウイルス感染症対策本部が決定している「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」に盛り込む見通しです。

分科会が会合後に公表した文書によれば、感染状況の4段階は以下の通りです。

  1. 感染ゼロ散発段階
    感染者が散発的に発生するも医療提供体制に特段の支障なし
  2. 感染漸増(ぜんぞう;徐々に増加してくる)段階
    感染者の漸増により医療提供体制への負担が蓄積しつつある
  3. 感染急増段階
    感染者の急増により医療提供体制に支障発生
  4. 感染爆発段階
    爆発的な感染拡大が起き医療提供体制が機能不全に

感染状況の評価指標を作成へ

評価指標は、各都道府県が次の段階が起きる予兆を的確かつ迅速に検知するため、段階の判断にあたって考慮すべき要素として、以下をあげています。

⑴ 医療提供体制への負荷 → 重症者病床数、60歳以上の新規感染者数
⑵ 検査体制への負荷 → PCR検査の陽性率など
⑶ 公衆衛生への負荷 → 新規感染者報告数に占める感染経路不明者の割合

東京都や大阪府等は「感染漸増段階」

会合後に開いた記者会見で尾身会長は、東京都や大阪府などは、上記4つの感染状況のうち医療提供体制への負荷が蓄積しつつある「感染漸増段階」にあるとの認識を示しています。

そのうえで、医療提供体制に支障をきたすような「感染急増段階」への移行を防ぐ対策として、以下を例示しています。

⑴ 事業者にはガイドラインを遵守していない酒類を提供する飲食店への休業要請
⑵ 個人には夜間や酒類を提供する飲食店への外出自粛要請
⑶ 観光地にある施設の入場制限
⑷ 高齢者や若者などターゲットごとのメッセージの発信
⑸ 国や地方公共団体は病床、宿泊療養施設の追加確保

さらに、「感染急増段階」から医療提供体制が機能不全に陥ってしまうような「感染爆発段階」へ移行する予兆が見られた際には、
「緊急事態宣言など、強制力のある対応を検討せざるを得ない」としています。

何が何でもPCR検査ではなく
基本的な感染対策の徹底を

新型コロナウイルス感染症に関しては、もう1つ注目すべき報道がありました。

東京都医師会の尾崎治夫会長が、30日に開いた記者会見で、PCR検査を受けられる医療機関を都内で1400か所まで増やす方向で検討していることを明らかにしたのです。

同時に、介護施設などで集団で感染者が発生したときには、現地で集中的にPCR検査を行うために、医師会が所有するPCR専用車を派遣するとも。

「今が感染防止の最後のチャンスだと考えている」「国がきちんと対策をとらないといけない」等々――。かなり激しい口調での会見だったのですが……。

聞いていて、「何を今ごろになって……、この4か月間何をしていたの!!」との感を抱いた方も少なくなかったのではないでしょうか。

このところのメディアの伝え方がよくないのですが、新規感染者数の増加や検査陽性率が高まってきていることなどの報道を受け、「もっとPCR検査をすべきだ」との論調が目立ちます。

でも、「どのような人を対象にPCR検査が行われているのか」抜きに伝えられる、新規感染者数や検査陽性率に一喜一憂していても、感染拡大の抑制にはつながりません。

新型コロナウイルスは発症前の数日が最も感染性が高いことがわかっています。
ですから、濃厚接触者を対象に検査をして、陽性反応が出た人は早期に隔離し、療養や治療の対象にすべきだろうとは思います。

しかし、PCR検査をすればいいというものではないはずです。
最も大事なことは、WHOのテドロス事務局長が指摘する基本的な感染対策の徹底です。

これにより感染者を、そして重症者を1人でも減らすことが、最前線でコロナと戦っている医療従事者にかかる負担を少なくすることにつながるはずです。