新型コロナウイルス対策で注目の「ビタミンD」




鮭

パンデミック下における
免疫力強化とビタミンD

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が続くなか、英国栄養士会(British Dietetic Association;BAD)は3月16日、パンデミック下での食生活について一般市民から寄せられた質問とその回答をまとめた文書を公表しています。

これを受けるかたちで日本栄養士会の中村丁次(ていじ)会長は、わが国における新型コロナウイルスの感染状況や日本人の食生活の現状を踏まえた詳細な解説文書を作成し、一般向けメッセージとして同会のWEBサイトで公開しています*¹。

そこでは、新型コロナウイルスに対する免疫機能を強化するうえで不可欠な「栄養の力」について解説するなかで、とりわけ免疫システムに深く関係する栄養素として、「ビタミンD」を取り上げている点が注目されます。

「ビタミンD」と言えば、骨や筋肉、さらには歯の健康維持に欠かせない栄養素として知られるものの、免疫力を強化するうえで欠かせない栄養素としてはそれほど認知度が高くないように思うのですがいかがでしょうか。

ということで、今回は、新型コロナウイルスに打ち勝つうえで必須とされる栄養素のなかから「ビタミンD」にフォーカスして考えてみたいと思います。

新型コロナウイルス感染は
特定の栄養素だけでは防げない

中村会長による「Q&A」形式でまとめられたメッセージ、
「新型コロナウイルスの状況下、今、栄養指導に必要な一般生活者へのアドバイス」
には、以下8つの「Q」が収載されています。

  1. 食事療法によって免疫システムを強化できますか?
  2. ビタミンDサプリメントは、とるべきですか?
  3. 水分の補給は関係ありますか?
  4. 特別に食品を購入しておく必要がありますか?
  5. 食品衛生と新型コロナウイルス感染について心配する必要がありますか?
  6. 新型コロナウイルスで栄養不良の改善が重要なのはなぜですか?
  7. 栄養不良のリスクがある人へのアドバイスやサポートする際のチェックポイントは?
  8. 病気により、すでに食事療法を実施している人は、どのようにすればいいでしょうか?

「さまざまな食品をバランスよく」が基本

このうち「Q1」では、人間の防御機構である免疫システムは、さまざまな栄養素が複雑に関係し合って成り立っており、特定の栄養素を多く含む食品やサプリメントだけで免疫力を高め、新型コロナウイルスの感染を防ぐことはできないことを強調しています。

一方で、たんぱく質欠乏症や極端なやせ、あるいは肥満、低栄養などにより一時的に免疫力が低下するようなことが仮にあったとしても、栄養バランスのとれた食事を続けることにより、免疫システムの正常な機能を回復することができると説明。
さまざまな食品をバランスよく摂取することを推奨しています。

ビタミンDに期待できる
免疫機能の維持・調整役

そこで気になるのが、やや唐突感のある「Q2」の「ビタミンDサプリメントは、とるべきですか」という問いです。

ご存知のように、ビタミンDは脂溶性ビタミンの1つです。
カルシウムやリンなどとともに、骨の新陳代謝、つまり骨代謝を維持して骨の健康を保つうえで必須の栄養素として知られています。
筋肉や歯の健康維持にも欠かせない栄養素です。

加えて最近では、免疫システムの機能維持や調整にビタミンDが重要な役割を担っていることが注目されるようになっています。

ビタミンDは不足しがちな栄養素だが

日本人の食事摂取基準(2020年版)では、ビタミンDの1日摂取目安量は、18歳以上の男女ともに5.5㎍(マイクログラム)*、1日耐用上限量、すなわち過剰摂取による健康被害を未然に防ぐ量は100㎍と設定されています。
*㎍は100万分の1グラムを表す

2016年国民健康・栄養調査によると、日本人のビタミンDの1日平均摂取量は7.2㎍ですから、データ上は、平均的に摂取の目安を満たしていると言えそうです。

しかし、ビタミンDの合成には日光の紫外線が大きく影響します。
そんな影響もあって、血中濃度で見ると、日本人のおよそ半数、日照時間が極端に短い地域、あるいはシーズンでは、8割以上の人がビタミンD 不足の状態にあると推計されています。

バランスのとれた食事を続けていればサプリメントは必要ない

おそらくこうした背景もあってでしょう。
新型コロナウイルスの感染拡大という深刻な事態を受け、不足しがちなビタミンDをサプリメントにより補充して免疫力を強化すれば新型コロナウイルスの感染を予防できるのではないか、といった類の話がまことしやかにSNS上で飛び交うようになっているのです。

しかし、「予防できる」とする確かな科学的根拠はなく、
「健康的で栄養バランスのとれた食事を維持し、なおかつ十分な日光を浴びることができていれば、あえてビタミンDをサプリメントで補充する必要はない」
と、メッセージは明言しています。

食事も日光浴も不十分なら
サプリメント利用の検討も

とは言え、通常ビタミンDは、そのほとんどが食事からではなく日光により産生されています。
緊急事態宣言発令により外出自粛が続くなか、日光を浴びる時間が著しく減少しているという人では、ビタミンD不足に陥らないように、晴天の日は庭や軒先、ベランダなどで過ごす時間を多くとるようにするといいでしょう。

ただし、日光浴がいいからと、肌の色が赤くなるまで紫外線を浴びるのはむしろ皮膚がんなどのリスクを高めることになり、逆効果です。

日光浴をする際は、皮膚に有害な作用が起きない範囲、1日15~20分で十分とのこと。
その際には、顔と両腕を露出した方がより効果的です。

脂身の多い魚ときのこ類の炒め料理を

悪天候続きで、あるいは仕事などの関係から十分な日光を浴びることができない場合は、ビタミンDが豊富な食品を、意識して多く摂るようにします。

動物性食品なら、サケ、サンマ、サバといった脂身の多い魚、あるいはうなぎもおすすめです。
サケについて言えば、普通サイズの1切れで1日に必要な量を賄うことができます。

一方、ビタミンDを多く含む植物性食品は、キクラゲやマイタケ、干しシイタケ、エリンギなどですが、ビタミンDは脂溶性ですから、炒め物や揚げ物にして油とともに摂取すると吸収率を上げることができます。

牛肉や豚肉といった肉類にはビタミンDはほとんど含まれていません。
しかし、大人のための粉ミルク ダノン ダノンデンシア など一部の乳製品にはビタミンDが添加されていますから、これを活用するのも一法でしょう。

また、体調が思わしくない上に食事も十分に摂れず、日光浴もほとんどできないようなときは、かかりつけ医と相談のうえ、サプリメントを活用するのも有効な方法と考えていいようです。

なお、パンデミックのこの時期、バランスのとれた食事のために活用したい調理済み食品に関しては、こちらの記事を参照してください。

国内初の新型コロナウイルスによる院内感染が報告された。すでに公表されている院内感染対策指針の励行に加え、ウイルスから我が身を守るセルフケアとして、生活習慣、とりわけ食習慣の見直しが必須だ。免疫力アップのために工夫したい食事のポイントをまとめた。

参考資料*¹:日本栄養士会「新型コロナウイルスの状況下、今、栄養指導に必要な一般生活者へのアドバイス」