一般医療機関向けに新型コロナウイルス感染症「対応ガイド」を公表(日本環境感染学会)

診断

国内の感染者増加に備え
一般医療機関での診療を想定

国内では現在、「感染第7波」による新型コロナウイルスの感染が、かつてない勢いで拡大しています。

これまでは、一般の医療機関に感染患者(感染例)や感染の疑われる人(疑い例)が受診する確率は、「かなり低い」と考えてきました。

しかし、感染拡大は続き、感染患者も感染が疑われる人も、日を追って増加傾向にあります。

このような、「感染例や感染疑い例が感染症指定医療機関以外の一般医療機関を受診する可能性を考慮せざるを得ない段階にある」状況を踏まえ、日本環境感染学会は、一般医療機関にも感染患者が訪れることを想定して作成した、「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド」*¹の第1版をまとめ、2月12日に学会WEBサイトで公開しています。

本ガイドは、国内の感染状況に応じて適宜改訂が行われ、2021年11月22日には第4版*²が公開されています)。

■高齢者介護施設でも活用を
本ガイドでは、対象に一般医療機関に想定してまとめられていますが、感染リスクの高い高齢者が多く集まる介護施設等においても、新型コロナウイルスの特徴を理解したうえで基本的な感染対応策を実施できるように配慮された内容となっています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は日本を含む世界100カ国以上に感染が拡大し、WHOはパンデミック(世界的大流行)を宣言。そんななか国内では、院内感染が多く発生し、国立感染症研究所は4月5日、COVID-19の院内感染の発端者の30%が医療関係者であるとする調査結果を発表。医療関係者の感染予防策を改めて発表している。詳しくはこちらの記事を参照されたい。
→ COVID-19院内感染の原因にならないために

病原性はSARSより低く
無症状で経過する例も

本ガイドはA4版10ページに、新型コロナウイルスについて「ウイルスの特徴」「発生状況」「臨床的特徴(病態、症状)」「診断(臨床的診断・ウイルス学的診断)」「治療・予防(ワクチン)」「感染対策」「国内における患者の診療体制」「法律上の規定」「相談窓口、問い合わせ先」「参考文献、情報」の項目別に、平易な解説がコンパクトにまとめられています。

このうち新型コロナウイルスの「ウイルスの特徴」としては、
⑴ 主に呼吸器感染を起こすウイルスで、
⑵ 病原性(発症し、重症化させる力)は、2003年に発生したSARS(サーズ)や2012年のMARS(マーズ)より低いレベルと考えられている、
⑶ 飛沫および接触で人から人へと感染が拡大し、その感染力は1人の感染者から2~3人に感染させる程度、
⑷ 空気感染は否定的、と説明しています(7月に入りWHOは空気感染の可能性も除外できないとしている)。

また、「感染者の臨床的特徴」としては、
⑴ 無症状で経過してウイルスが排除される例もあることに言及しつつ、
⑵ 比較的多く見られる症状として発熱、咳、筋肉痛、倦怠感、呼吸困難をあげ、
⑶ 現時点でその治療は、対症療法が基本である、ことを説明しています。

発熱患者対応は常時マスク着用
外来患者間の距離を保つ

続いて「感染対策」では、⑴標準予防策の徹底、⑵感染経路別予防策、⑶外来患者への対応、⑷外来受診時の患者のトリアージ(重症度の評価、感染リスクの評価)、⑸入院患者への対応、⑹環境(高頻度接触部位、医療器具、病室内など)の消毒、⑺換気、⑻職員の健康管理、の8項目にわたり、かなり具体的な対策をあげています。

まず⑴の標準予防策としては、咳エチケットを含む手洗いやアルコール消毒(擦式アルコール手指消毒薬が有効)の徹底を基本に、以下の徹底を求めています。

「基本的に誰もがこのウイルスを保有している可能性があることを考慮して、すべての患者の診察場面において、状況に応じて必要な個人防護具(PPE;Personal Protective Equipment)を選択して適切に着用する」

対応ガイド第4版では、「①エアロゾル(微小飛沫)による感染への対応」「②新型コロナウイルスワクチン接種後の対応」「③積極的な検査の導入を含めた対応」について改定されている。

顔の粘膜(目、鼻、口)をウイルスから守る

その具体的方法については、「感染経路別予防策」および「外来患者への対応」のなかで、
⑴ 外来で発熱患者に対応する際には常時サージカルマスクを着用すること、
⑵ 気道吸引や気管挿管・抜管、NPPV装着、気管切開術、心肺蘇生、気管支鏡検査、ネブライザー療法、PCR検査のための誘発採痰などエアロゾルが発生する(しぶきが飛び散る)ような処置をする場合は、顔の粘膜を守ることをポイントに、ゴーグルや、ガウン、手袋に加えて、ウイルスを通しにくい「N95マスク」を着用すること、をすすめています。

また、N95マスクの使用に際しては、どのサイズが自分の顔にフィットして空気漏れがないかを調べる「フィットテスト」を事前に行っておくこと、また着用するたびに「ユーザーシールチェック」行うことを強く奨励しています。

なお、このN95マスク着用による鼻根部や頬部への褥瘡を疑わせる圧迫痕等への対応についてはこちらをご覧ください。

収束傾向にあった新型コロナウイルスが感染再拡大へと一転し、医療従事者には気の抜けない日々が続く。特にCOVID-19の患者対応に当たるスタッフには、N95マスクの長時間装着による圧迫創傷という肌トラブルも悩みだ。日本褥瘡学会によるその予防法を紹介する。

N95マスク等個人防護具については、規格外製品が相当数出回っていることを受け、日本環境感染学会が注意喚起のメッセージを出しています。

外来に多くの発熱患者が訪れることもあるでしょう。その場合は、
「インフルエンザ流行期の対応に準じて、外来で適切な場所を確保して他の患者との距離を保つように工夫する」ことを求めています。

なお、「対応ガイド」には医療従事者の新型コロナウイルス曝露リスクの評価と対応について詳しく解説されていますが、その詳細はこちらの記事を。

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。このまま感染者が増え続けると、一般の医療機関でも感染者対応が求められることに。その想定の元、日本環境感染学会は対応ガイドの第2版で、医療従事者のウイルス曝露リスク評価と対応を提示している。そのポイントをまとめた。

必ずしも陰圧病室は必要ないが
外来や検査室の換気は適切に行う

ウイルス検査により陽性反応が出た感染確定患者は、感染症指定医療機関に入院となります。

一方「疑い例」は、ウイルス検査の結果が判明するまで「陰圧室」の病室で管理することが望ましいとしています。

しかし陰圧室は必須ではなく、陰圧室での対応が難しい場合は、
①室内の換気を適切に行うこと、
⓶病室外への移動は医学的に必要な場合のみに限定すること、
③患者にはサージカルマスクを着用してもらうこと、
④エアロゾルが発生する処置を行う場合は、医療スタッフはN95マスクを装着すること、
が推奨されるとしています。

この場合の、外来、CT検査室、入院病棟などの部屋の換気については、たとえば1時間に6回空気を入れ替えるなどの換気条件が決められていることを念頭に、それぞれの部屋の再使用に備え、決められた条件を満たす「適切な換気」を行う必要があるとしています。

なお、患者の呼吸不全の改善を目的に行われることの多い非侵襲的陽圧換気(NIPPV)、つまり気管切開や気管挿管を行わずにマスクを介して人工的に換気を行う治療法については、
「有用性はあるものの、周囲へのウイルス拡散を助長させることから、厳重な感染対策に留意する必要がある」として慎重な対応を求めています。

参考資料*¹:日本環境感染学会「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド」
第2版改訂版(ver.2.1/2020年3月10日)

参考資料*²:上記対応ガイド第4版(2021年11月22日)